第29話 後輩も放っておいてくれない

 週明け。

 月曜日、いつも通り柚葉との登校・・・にプラス1。

 言わずと知れた翔子である。

 翔子は、以前の家に戻ってきている為、俺達の家から近いのだ。


「総司先輩。それでですね・・・」

「むぅ!翔子ちゃんばっかりお話しして!私もそーちゃんとお話したいのにぃ!!」

「まぁまぁ。柚ちゃん、そうカリカリしないで。可愛い顔が台無しだよ?」

「誰のせいなのよ〜!」


 ・・・既に凄まじいほど視線を集めている。

 目立ってるなぁ・・・


 周囲の声が聞こえて来る。


「あ、あれってあのクールビューティって言われてる一年の東儀だろ!?常に無表情じゃなかったのか!?めちゃくちゃ笑顔なんだが・・・それに・・・あんなにあいつにくっついて・・・!!」

「南谷さんとも親しげだよな!?あの三人の関係ってなんなんだ!?」

「くっそ〜!なんであの陰キャばっかり!!」

「本当にそれな!」


 ・・・思う所は多々あるが・・・それでも、まだ陰キャと呼ばれている事にホッとする。

 くくく・・・瑞希よ!

 やはりまだ諦めなくても大丈夫そうだぞ?

 このままならなんとか・・・


「総司〜!おはよ〜!・・・えいっ!!」

「うおっ!?シ、シオン!?」


 いきなりシオンが走って来て、飛びついて来やがった!

 そして、そのまま正面から腕を回して抱きしめただと!?

 勿論、2人が黙っているわけがない。


「あ〜!!詩音ちゃんズルい!ズルいよ!!だったら私だってくっつくもん!!とりゃ!!」

「やりますね詩音さん・・・私も負けていられません!てい!!」


 な!?

 柚葉と翔子まで腕を抱え込んで来やがっただと!?

 ほとんど抱きついているのと変わらねーじゃねーか!!


「あっ!?こら!!なんであんた達まで総司に抱きつくのよ!!いいじゃない私は別登校だったんだから!!少しは遠慮しなさいよ!!」

「ふ〜んだ!関係ありませ〜ん!!そーちゃんは詩音ちゃんのものでもありませーん!!」

「そうですよ。別に詩音さんの専売特許じゃありませんから。むしろ、私のです。」

「こ、この2人は〜!!総司!私をお姫様抱っこしなさい!お姫様抱っこ通学よ!!さあ、今!すぐに!!お礼にキスしてあげるから!!濃厚なのをね!!」

「出来るかぁ!!三人とも離れろ!!おい!!」


 なんて真似しやがる!!

 これじゃ・・・


「西條さんまで増えた!?どうなってんだ!!」

「おい!あいつのどこが陰キャなんだ!!リア充中のリア充じゃねーか!!」

「一体なんなんだあいつ!!」

「納得いかねぇ!!なんであいつばっかりこんなにモテやがるんだ!!クソリア充め!!爆発しちまえ!!」


 ああああああ・・・

 ヤバいヤバいヤバい!!

 俺のイメージが・・・一年かけて作って来た陰キャイメージが!?


「は〜な〜れ〜ろ〜!!!」

「「「やだ!!」」」


 ううう・・・クラスメイト、幼馴染と来て、後輩までもが・・・放っておいてくれない・・・

 これ、どうするんだ・・・?


「離れろー!!」

「「「やー!!」」」


 勘弁してくれ・・・


 結局、そのまま張り付いたまま離れず、凄まじい程の嫉妬の視線に曝されたまま、学校までの道のりを歩むのだった。


 いや、本当にどうしよう・・・






「・・・やれやれ。なんて様だ。これがあの『クレナイ』とはね・・・これはちょっと思い知らせてやらないと、ね。」


 そんな風に俺を見ている者がいる事に、俺はまだ気がついていない。

 後から、それを思い知ることになる。

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