第21話 東儀翔子(2)

「・・・やっぱりこの学校に通ってたんだね。入学してすぐに探したけど・・・感じが大分変わってたから、すぐには分からなかったよ。・・・それに柚ちゃんも一緒にいなかっから・・・でも、今日一緒に登校したのを見かけたから、もしかしてって。」


 翔子がそんな風に切り出した。


「ああ、柚葉とはちょっと色々あって疎遠になってたんだ。週末にわだかまりも無くなってな。それで今朝は一緒に登校したって訳だ。」

「そう、なんだね・・・」


 そこで言葉が詰まる。

 なんとなく居心地が悪くなり俺は深く考えず定番の言葉を発した。


「お前は元気でやってたか?」

「・・・うん。転校してすぐは寂しくて仕方がなかったけど、なんとか上手くやってたよ。」

「そうか・・・今はどうなんだ?入学したてだろ?何か困った事は無いか?」

「・・・うん。大丈・・・夫。」


 ・・・とてもそうは見えないが。

 やはり、光彦が言った通り、何かあるのかもしれないな。

 ちょっと探りを入れただけでコレだ。

 何かを抱えているのかもしれん。

 一応気にかけておくか。


「何か困った事があったら言えよ?昔のよしみだ。助けになれるかもしれない。」


 俺がそう言うと、翔子はふわりと笑った。


「・・・総司くんはやっぱり優しいね。そういう所を私は・・・」


 翔子がそこまで口にした時だった。


「総司!帰ろう!!って・・・誰その娘?」

「そーちゃん!今戻ったよ!!って・・・もしかして翔子ちゃん?」

「っ!!」


 シオンと柚葉が帰って来た。

 顔が強張る翔子。


「・・・柚ちゃん久しぶり。」

「翔子ちゃん!久しぶりだね!やっぱりこの学校にいたんだ!全然気が付かなかった。」

「この娘が・・・綺麗な子ね・・・」


 翔子がぎこちない笑みで柚葉を見る。

 柚葉は笑顔で、シオンは厳しい顔で翔子を見る。


「翔子ちゃん元気にしてた?もっと早く会えば・・・」


 しかし、翔子が口を開いた時だった。


「談笑中すまない。ちょっといいだろうか?」


 男子生徒が話しかけてきた。

 一緒に居たのは男子生徒三人と女子生徒が一人。

 

 先輩だろうか・・・

 ・・・見たことが無い奴らだ。

 女生徒を除いては。

 なぜならそれは・・・


「あれ?なんで生徒会長さんがここに?」


 柚葉が驚きの声をあげる。

 そう、その女生徒はこの学校の生徒会長であった。

 だから、おそらくこのメンツは生徒会の人間だ。


「生徒会の者だ。東儀さん、探していたよ。先日言った通り、ちょっと聞きたい事があるから、生徒会室まで来てくれないか?」


 男子生徒の一人が翔子にそんな事を言った。

 翔子の顔は既に無表情になっている。

 そして・・・


「わかりました。行きます。」

「ありがとう。それじゃ君たち失礼したね。」

「お、おい翔子・・・お前・・・」


 思わず翔子にそう言うと、翔子は俺を見て、少しだけ微笑み、


「・・・総司くん。大丈夫だから・・・じゃあね。」


 と言って教室を出て行く。

 明らかに何かあるようだ。

 

 そんな風に思っていると、生徒会長がちらりと俺を見た。

 視線が合う。


「ふっ・・・」


 そして、少し口角を上げ、教室を出ていった。


 残された俺達。


「・・・相変わらず、すっごい美人さんだね!生徒会長さんは。」

「・・・そうね。文武両道、モデルみたいなプロポーション、綺麗な顔立ち、こんなに間近で見たのは初めてだけど・・・凄いわね。関心しちゃうわ。人気も凄いし。」


 柚葉とシオンがそんな事を言った。

 ・・・まぁ、そうかもしれないな。

 あれだけの見た目だ。

 人気も出るだろう。


「総司もああいうのが好きなんじゃないの?」

「え?そうなのそーちゃん?」

「さて、どうだろうな。」

「「むー!!」」


 適当に相手をすると、わかり易くむくれる。

 

「帰るとしようか。それにしても・・・翔子は相変わらずだったな。」

「うん・・・でも、なんか寂しそうに見えたけど・・・」

「・・・そうね。それは幼馴染みじゃなくてもわかったわ。」


 だろうな。

 ・・・ちょっと注意して見てた方が良いかも知れない。

 俺はそんな風に思った。

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