112.お姉ちゃん巫女になる
「普通にボーダーレスになっただけでは君達に敵わないようだ。ぜひともに調べてみたい! さあワシに中を見させてくれ!!」
ニヤケた口元と、新しいオモチャを見つけたような目でローザに近づくリック。
ローザはもちろんブルースとシルバーも警戒するのだが、三人よりも警戒していたモノからの介入があった。
空からリックの頭を目がけて黄色い光の線が一本照射されたのだ。
それを残像が残るように後方にかわすリックだが、流石に驚いたのか冷や汗をかいている。
「こんな所でオートが働くとは……一体何があったのだ?」
リックは空を見上げるが、すでに光の線は消えているので正体はわからない。
光の線を見ていたシルバーは通信でブルースと連絡を取る。
『マスター、今のは宇宙にある
『そうみたい。あんな上からでも正確に攻撃できるんだね』
『それよりも私は、
『船があの男の行動を理解してたって事?』
『恐らくは』
リックがどういった理由でローザに近づこうとしたのか、それは言葉から判断するに解剖したかったからだろう。
しかしローザの力は大型のワニを倒した事で証明されており、不用意に近づいても解剖など出来る訳がない。
ならリックには、それを無視して解剖できる手段があったという事なのだろうか。
「どうやら今日は無理のようだ。また会う事があるだろうから、その時まで楽しみは取っておくとしよう」
リックは地面に落ちるように姿を消した。
落ちた場所を確認するが、もちろん穴が開いている訳ではない。
「マスター」
「うん分かってる」
「逃げられちゃったね」
「い、いなくなってホッとしたんだよ、ダヨ」
「いや、そうじゃないんだ」
ブルースが否定すると、なんと二十メートル前後のワニ八匹に囲まれたいたのだ。
「く、来るなー! ナーー!!」
そう言ってシアンは肩掛けバッグから数本の瓶を取り出し、ワニに向かって投げつける。
もちろんそんな瓶をワニが避けるはずもなく、瓶は食われたり頭にかかったりするだけだった。
「あれ? あの瓶ってもしかして」
「バンデージマンの体を溶かした瓶よね? ワニに効果あるの?」
そんな事はもちろん……効果は絶大だった。
瓶を食ったワニ、硬い皮以外にかかったワニは内側から溶け始め、見る見る体がしぼんでいく。
八体いた内の五体の体が溶けて、外皮と骨だけを残して口や肛門から赤いゲル状の何かが流れ出て来た。
ゲルを洗い流せば綺麗な標本になりそうだ。
「ある意味シアンが一番怖いわね!」
「ぼ、僕はシアンの事が大好きだからね?」
「え? 私もブルースの事は大好きなんだよ、ダヨ!」
「ちょ、ちょっと⁉ 私だってブルー君の事がだだ、だ、だ、大好きなんだから!」
一体何の話をしているのか知らないが、そんな三人を放置して残りのワニ三体は、シルバーが無言で始末していた。
ところ変わって王都。
オレンジーナは今日のお勤めが終わり、教会の自室でため息をついていた。
「何なのよ……本当に」
白いデザインの凝ったイスに座り、同じくデザインの凝ったテーブルに肘を乗せて頭を押さえていた。
「失礼します
見習い修道女を部屋にいれ、テーブルにお茶とお菓子を並べていく。
そんな修道女を見て、オレンジーナは目を細める。
名前:ミリア
年齢:15
スキル:家事LV 19
経験値:16332 NEXT19321
こんな表示がミリアの顔の横に現れた。
そして自分を意識すると、頭の中に同じような表示が浮かんでくる。
名前:オレンジーナ・フォン・ワイズマン
年齢:21
スキル:
経験値:115988 NEXT132549
恐らくはオレンジーナの事であろう内容が表示された。
感覚的にだが、ローザやエメラルダに話を聞いても同じ感覚の後、とても力が溢れる自覚があったようだ。
オレンジーナにもその感覚があったが、スキル名まではわからなかったのだ。
だが依代の巫女になってから、意識をしたら相手の事が分かるようになり、LVや経験値といった人間界には知られていない情報までもが見えている。
「オレンジーナ様、どうかされましたか? 顔色が優れませんが……」
「いえ、何でもないわ。ありがとう、後は自分でやります」
何とか気持ちを落ち着かせて、紅茶を飲んでクッキーを口に運ぶ。
今のところはスキルが二つ以上表示されている人物はオレンジーナ本人だけだが、ブルース、ローザ、シアン、エメラルダの四人は確実に二つ以上書かれているだろう。
どんなスキルなのか知りたいと思う反面、危険なスキルだったら困るという気持ちがぶつかり合っていた。
なので意図的に表示させないようにしている。
「経験値って何よ……LVって何よ! もう! 依代の巫女って何なのよー!」
今のところ他人のステータスや、少し勘がよくなったかな? という程度に収まっており、依代の巫女の具体的な力はわかっていない。
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