94.現地調査員、人にあらず
☆★大気圏★☆
「うっひょ~! 第三宇宙速度(秒速16.7km)を超えたぜ!」
「バカか? 突入速度を競っても意味ないだろ」
「うっせーわ! こんな遊びでもしなきゃ、やってらんねーだろうが!」
艦載機での大気圏突入中、十二機の小型機のうち、三機が突出していた。
その三機は降下速度をジェットコースター気分で楽しんでいる。
長さは約二十五メートル、幅約六メートルの楕円形、後部には大型エンジン、平らな底面と前面には小型のスラスターがあり、コックピットは上部前面にある。
カラーリングは個人の勝手らしく、真っ赤なものや真っ黒な物など様々だ。
「現地調査員はどこだ?」
「この星には五体の調査員が居るはずだけど……あ、反応があった」
一人のパイロットが星の地図を見ると、調査員の現在位置が表示される。
その内の一つだけ違う色を発していた。
「この色違いが連絡者か?」
「その様だ。四機は連絡者に向かって、他は残りの調査員と接触しよう」
「あいあい、んじゃ~俺は一番遠くにいる奴に行くよ」
「好きにしろ。俺達は自動振り分けに従って向かうとしよう」
十二機がそれぞれの目標に向かって飛んでいく。
地上では流れ星が観測された様だが、あまりに気にする者は居なかった。
「ヤニクのやつ、ちゃんと透過機能使うだろうな」
「大丈夫じゃないか? お調子者でもそこまでバカじゃないし」
「いやいや、バカだからお調子者なんだろ」
「あれでもスコアは上位なんだから、少しはいたわろう?」
連絡者へ向かう四人は、他へ向かったお調子者が気がかりのようだ。
この四人は上空を飛んでいるのだが、その姿を目視することは出来ない。
「見えてきた。あの山の付近に居るはずだが……どこだ?」
「あそこ、山頂のくぼみに座ってる奴じゃないか?」
木が一本もないハゲ山の火口に、赤く光る物が見えた。
遠くからしか見えないが、その姿は人間とは程遠く、どちらかというと爬虫類……いや、ドラゴンだった。
「ここの調査員は赤いね?」
「体温が高いな、約千度? まるでマグマみたいだな」
「おいおい、あんなのを調査員にした奴はバカなのか?」
見えない四機が山頂に着地すると、真っ赤なドラゴンは長い首をそちらに向ける。
ドラゴン、とは言うが、全身が真っ赤で液体のように流れており、マグマが四本足のドラゴンの形をしているみたいだ。
艦載機のキャノピーが開くと、中から濃い緑色の強化樹脂鎧を着た兵士が降りてきた。
ヘルメットもかぶっているので表情はわからない。
「お前がこの星の調査員か?」
「ソウダ。反応ガ有ッタタメ、連絡ヲシタ」
「どうせ見間違いか何かだろう?」
「カモ知レヌ。確認ヲ頼ム」
マグマ型ドラゴンの顔の前に小さな丸い光が現れると、光は兵士達の方へと飛んでいく。
それを一人の兵士が受け取ると、その情報が四人のヘルメット内に表示された。
「……マジだった」
「この反応は随分と僕達と近いんじゃない?」
「おいおい、こんな原人の星で、なんでこんな反応が出るんだよ」
「特異点でも発生したか?」
四人は戸惑っているが、マグマ型ドラゴンはなぜか安堵したように見えた。
情報が正確だったからだろうか。
「これは隊長に報告しないとな。俺達も準備をしよう」
「おい、この反応は随分と近くで観測された物もあるが、どうやったんだ?」
「ツイサッキ、コノ山ニ来タノダ」
「なんだって!? まさか姿を見られたのか!!」
「見ラレテハ、オラヌハズダ。気配ヲ感ジテ、移動シタカラナ」
「ならいいが」
「ソレヨリモ、イイノダロウ?」
「ん? ああそうだな、隊長にも連絡を入れたから、その内解放されるはずだ。ご苦労さん、珍しく役に立ったな」
マグマ型ドラゴンは寝転ぶと、丸まって眠りだす。
四人は艦載機に乗り込み、どこかへと飛んでいってしまった。
王都では、任務を終えたブルース達がデモンスレイヤー本部で報告を行っていた。
「では何もいなかったんですね?」
「ええ、マグマ
シルバーも頷くと、ジョディは一息ついたように安心する。
「良かった。正直皆さんでもこの依頼は無理だと思っていましたけど、やっぱりお願いして正解でした」
「噂では色々と聞いているけど、本当に見た人はいるのかしら」
「すみません
「それもそうですわね。言伝えというのは何かの
「ええ、なので確認はするようにしているんです。とはいえこれで安心出来ましたので、報酬をお渡ししますね」
受付嬢から報酬を受け取り、六人は家へと帰るようだ。
「あーんもう、早くお風呂に入りたい!」
「同じく、なんだな、ダナ」
「じゃあみんなで一緒に入りましょうか」
「そうですわね、ブルーお兄様の家はお風呂が大きいですものね」
「じゃあ僕はその間に食事の用意をしておくよ」
「あらお兄様? お兄様も一緒に入りませんの?」
「え? いやいや、僕は後で入るよ」
「ブルー? 昔みたいに一緒に入りましょう?」
「ブルースも一緒に入るんだな、ダナ!」
「はわわわ、ぶぶぶ、ブルー君と一緒にお風呂……あわわわわ」
「マスター」
「なにシルバー、まさかシルバーも一緒に入れっていうの!?」
「マスター、上空に未確認の航空機の反応あります。数は四」
「え?」
全員が空を見上げるが何も見えない。
いや、ブルースはヘルメットだけを装備すると、目に見えない四つの航空機が確認できた。
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