78.オレンジーナの悩み事
「ブルー!」
「ブルーお兄様!」
自宅に帰ってきたブルース達を待っていたのは、
「イエロー兄さん……」
イエロウビーはワイズマン家の第三子で次男、
イエロウビー、カウボーイの様なテンガローハットは黒地で赤い帯が付いており、深くかぶっているため目は見えない。
鼻はスッと高く口元からは感情は読めない。
背は高く黒いベストに白い長袖シャツ、
イエロウビーは腕を組んでいるが、口を開くことなく片手を上げて挨拶をする。
「ブルースのお兄さんなのかな、カナ?」
ブルースの陰に隠れていたシアンがヒョッコリと顔を出す。
するとどうだろう、今まで反応の薄かったイエロウビーの体が震えだす。
それを見てオレンジーナはニヤケ顔になる。
「相変わらずシアンは可愛いわね、キスしちゃいたいわ!」
そう言って抱きかかえると頬ずりを始めた。
イエロウビーは腕を解いて組んでを繰り返し、かなり挙動不審だ。
「イエロー兄さん? シアンを撫でたいのならそう
エメラルダを見ると一度咳払いをして、震える声でしゃべりだす。
「な、なでなで、したい」
オレンジーナはクスクス笑いながらシアンの顔を見ると、シアンは不思議そうな顔でイエロウビーを見る。
「なでなで、してくれるのかな、カナ?」
そう言って頭を向けると、それだけでイエロウビーは衝撃を受けたのか、胸を押さえてハァハァ言いながら手を伸ばす。
そして腫れ物を触るように優しく頭を撫でると、シアンは気持ちよさそうに目を閉じる。
「はうわぁぁ!!」
ガクリと膝を付き真っ白になってしまった。
「久しぶりに見ましたわね、イエロー兄さんの萌え死」
「そんなイエローも可愛いけどね」
イエロウビー、可愛らしいものが大好きな寡黙な
「あれ? メインヒロインって私だよね!? シアンがメインで私はサブだったの!?」
最近の扱いを見て、自分の立ち位置が不安になったローザ。
ブルース達はそんなローザを見て、そっと視線を逸らすのだった。
「失礼した。俺は
意識を取り戻したイエロウビー。
シアンを見るとまた萌え死してしまうので、出来るだけ見ないようにしている。
リビングのテーブルを囲んでいるが「ヒロインの仕事!」といってローザがお茶の準備をしている。
……ヒロインの仕事?
「今回の事っていうと、バンデージマンの事?」
コクリを首を縦に振る。
そして布の切れ端をテーブルに置くと、ブルース達の方へと移動させる。
「これは……バンデージマンの包帯?」
「そうだ。バンデージマンがまた現れるというのなら、この包帯の対処法が必要だ」
この包帯は刃物が通用せず、衛兵たちは傷一つ与える事が出来なかった。
しかしブルース達はどうにかして包帯を無くしたと聞き、こうして現れたのだ。
「ああ、それならシアンが知ってるよ」
言われて思わずシアンを見るイエロウビー。
そして再び挙動不審になる。
「あーはいはい、ストップよイエロー。あなたはシアンを抱っこしたくてたまらないようだけど、今は真面目な話しの最中よ? せめて終わるまで我慢なさい」
姉に言われて何とか平常心を取り戻すイエロウビー。
咳払いをして呼吸を整えた。
「し、シアン、あの包帯を無くす方法を知っているのなら、教えて欲しい」
「うん、いいんだよ。はい、これ、コレ」
なんの
「これは?」
「包帯を溶かす薬品なんだな、ダナ」
イスを降りてブルースの膝によじ登り、テーブルに置かれた包帯に雫を垂らす。
すると包帯は煙を上げながら溶けていき、後には液体が残っていた。
「ば、バカな! この包帯には何をしても溶かすことなど出来なかった! 魔法も効果が無かったんだぞ!」
「あーそれはダメなんだな。魔法耐性の
「イン、とは魔法ではないのか?」
「魔法とは少し違うの。こうやって手で印を結んで、呪文と併用して効果を出すんだな、ダナ」
そういって両手を使い、まるで影絵でもしている風な印を結ぶ。
「ちなみにコレは
呆然と聞いているイエロウビー、と、オレンジーナとエメラルダ。
そういえばシアンのスキルの事は知らないのだった。
「あのシアンちゃん? それは一体なんなんですの?」
「ん? 九字は呪いを払ったり身を守ったり――」
「「「そうではなく!」」」
「あ~僕から説明するよ」
「ちょっと!? それじゃ私の
「結界は張れないんだな、ダナ」
「それに少しながら魔法が使えるというのなら、
「魔法は苦手なんだよ、ダヨ」
「そのポーション、街の騒動の時にいた
「女神様? なんなんだなそれ、ソレ?」
女神様は衛兵総隊長が言い出した事だが、衛兵の中ではすでに知らない者はいない程に有名だ。
「それよりも!
オレンジーナの声も空しく、ブルースもローザも目を反らす。
「ごめん姉さん……もう何人も知ってる……」
「どーしてアナタ達はこーなのよー!」
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