71.ファランクス:レーザー兵器搭載航空機型ドローン
パリン!
何かが弾けた。
ブルースの頭の中で大量の歯車が回りだし、巨大な鉄の門が開かれていく。
重厚な門が開くと中から何かが姿を現した。
三角形の様なそれは底辺の形は潰れた台形の
真っ黒で艶のないソレの中腹と底辺には可動式のプロペラが付いていた。
「また……頭に沢山の情報が……行け、
ブルースの命令により
ブルースの頭の高さと同じ位置にホバリングしていたが、風切り音と共に高度を上げて民家よりも随分と高くまで行く。
そしてその場で九十度ほど回転してあっという間に姿が見えなくなる。
ローザは何かが空を飛ぶのを呆然と眺め、そっとブルースに耳打ちした。
「ブルー君、あれってひょっとして?」
「うん、新しいファランクス、レーザー
「うんって、さっぱり意味が分からないけどね!」
ドローンはあっという間にソレを捕捉していた。
屋根の上を短距離走の様な速度で走り抜け、どこかへと向かっているようだ。
しかしこのまま放置したら、避難した市民に襲い掛かるかもしれない。
かといって市街地なので下手に攻撃も出来ない。
ソレの遥か上空から監視しているが、すでに市民が残っている場所に来てしまい、その様子はパワードスーツのヘルメットのレンズに投影されていた。
「人がいない所で足止めする事は可能?」
投影された場所に字幕の様に文字が表示された。
『可能』
「周囲への被害は出る?」
『地面が焦げる程度』
「なら足止めして」
『了解。実行に移す』
命令を受けてドローンは人気がいない場所に行くまで様子を見る。
しかし進行方向にはまだ沢山の人がいるため、人のいない場所での足止めはこのままでは実行に移せない。
だがドローンは攻撃を開始した。
本体の左側の一辺から一筋の青い光が一瞬だけ地面に向けて放たれる。
光はソレの右足に命中し、屋根の上に転がる様に着地すると、屋根に転がる右足を見て悲鳴を上げる。
ちなみに放った光は人々の隙間を縫うように通り、地面を焦がした。
通行人は全く気が付く気配がない。
ソレはちぎれた足を
「まだ動けるの!?」
『提案。姿を見せても良いのなら、とどめを刺す事が可能』
「姿は見せちゃダメ。もう一度だけ足止めは出来そう?」
少しの間を置いて返事が来る。
『成功確率17%』
「じゃあやってみて。あ、人への被害は無しだからね?」
『了解』
ドローンはそのまま追跡をし、ある一か所で三つの短い光を同時に放つ。
光はソレの胴体を貫通したのだが、あまりに細い攻撃だったためか血は流れるも動きを止めるには至らなかった。
ソレは動きを止める事なく走り続け、民家の二階の窓を割って侵入する。
そのまま動きが無くなるのだが、赤外線センサーには反応があるためまだ民家にいる……のだが、不意に反応が消える。
『目標、ロスト』
「ええっ!? 民家で消えた!」
周囲もスキャンするも、ソレの反応はどこにもなかった。
民家の位置だけ記録させ、ドローンはしばらく上空で待機させる。
「逃げられちゃった?」
「うん、残念だけど」
「仕方がないよ! あんな状況なんだから!」
シアンが二人の怪我を確認するが、これといった傷は無いようだ。
しかし念のためにと
「君達、ちょっといいかね?」
すっかり忘れていたが、近くには兵士が沢山いたのだった。
総隊長が三人に声をかけると、色々と話を聞いてきた。
「私は衛兵総隊長だが、君たちはアレを知っているのか?」
「知っているというか、以前一度、戦った事があります」
「アレは一体何なんだ?」
「そんな事知らないよ! 私達だって突然襲われたんだから!」
「そ、そうか、すまない」
なにぶん詳しい事は何も分かっていないので、デモンスレイヤーに出した情報を確認してくれ、と伝えてソレが残していった左腕を見る。
「これを調べたら、少しはわかるのかな」
「それは私の方で預かろう。詳しく調べる必要があるし、君達にも話を聞きたいのだが……?」
まぁそうなるだろう。
と、そこでもう一人、いや、
「ブルース! ローザ! シアン! 無事か!!」
アンソニー王子達だ。
王子は近くにいたのだが、部下に押さえられて近くに行く事が出来なかったのだ。
「アンソニー王子、はい、特に怪我はありません」
王子はローザとシアンに挨拶をすると、ブルースの前に立つ。
「それが例のアレか?」
パワードスーツの事だろう。
王子は初めて見るので興味津々だ。
「よしブルース! 俺と再戦だ! それと戦わせろ!!」
先ほど訓練場で戦った王子の部下が、今にも剣を抜きそうな勢いで向かってくる。
「やめろ。お茶会はもう終わっているぞ」
「失礼ながら王子、これはお茶会ではありません、純粋な闘争本能です!」
「お前は本当に……まあいい、おい再戦がいいわけではない、改めて機会を設けよう」
地上では正体不明な何かとの戦いが終わり、一時の安息を迎えているが、この暗く石で作られた狭い通路には安息などない。
水滴がしたたり落ち、ロウソクも最低限しかないため先がよく見えない。
ソレが壁に手を付きながらゆっくり進むと、少し開けた明るい場所に出る。
「随分とやられたな。やはりアレはただのボーダーレスではないという事か」
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