35.穴だらけでも倒れない相手

「大丈夫!? 生きてる!? 死んでないわよね!! やっぱり死者蘇生の術も使って――」


「大丈夫だよジーナ姉さん、僕もローザさんも生きてるから」


「でも万が一にでも死んでたらどうするの!!」


「オレンジーナさん、死んでたら会話なんて出来ませんよ~?」


 そう言われてハッとしたのか、ようやく落ち着きを取り戻すオレンジーナ。

 ちなみにこうしている間にも、ローザがモンスターを倒している。


「姉さん首都の魔法防護壁はいいの?」


「小型がいないんじゃ意味ないもの。それにあのバカ司令官、私だけ国に返そうとしたのよ! 信じられないわ!! 祝福のかね


 周囲の者達に祝福を与え、身体能力を強化する。


「でも姉さんは聖女セイントだからね、失う訳にはいかないよ。おっと」


 双頭の巨人エティンの棍棒攻撃を盾で受け止める。


「あれ? じゃあなんでオレンジーナさんはここに来たの? ストレートスラッシュ!」


 直線上にいるモンスターを剣から放たれた衝撃波で切り刻む。


「それにしてもきりがないわね、コレ」


 オレンジーナが炎の壁の向こうに目をやると、まだまだモンスターは途切れることなく現れる。

 人差し指を口に当てて考え事をし、何かひらめいたのか目が大きく開いた。


「ブルー、ローザさん、向こう側に行きましょうか」


 そう言って炎の壁の向こう側を指さす。

 驚く二人。それもそのはず、向こう側は炎のせいで移動を阻害されたモンスターで溢れているのだから。


「え……え??」


「オレンジーナさんってば大胆! 一気に勝負をつけるつもりですね!」


「ええ、行けるわね? 二人とも」


「え、ええ!?」


「もっちろん!」


「じゃあ行くわよ! GO!」


 二人は強引にブルースの腕を引っ張り炎の壁の中に消えた。

 それと同時に「扇状のファンシェープスピア!」とローザが叫ぶと、無数の槍が扇状に広がり遠くまで伸び、モンスターを串刺しにする。


ひらけたよ! ブルー君!」


魔動力機関装甲輸送車ファランクス! on 近接防衛火器システムファランクス!」


 魔動力機関装甲輸送車ファランクス牽引けんいんトレーラーに近接防衛火器システムファランクスが乗り、移動しながら射撃を開始する。


 近接防衛火器システムファランクスは止まる事なく弾丸を発射し、せわしなく銃身を左右に動かしモンスターを撃ち抜いて行く。

 ほとんどのモンスターは五~六発体を撃ち抜かれて絶命するが、生命力の強いモンスター、トロールなどはそれでも自然回復が間に合ってしまう。


「私に任せて! 不治のインキュアブル怪我ウーンズ!」


 回復力の強いモンスターの体に黒い渦が吸い込まれていく。

 するとどうだろう、弾丸を受けた傷が治らなくなってしまった。

 何が起きたのか理解する事なく、トロールは倒れていく。


「いっけー! どんどん行っちゃえブルー君!」


 魔動力機関装甲輸送車ファランクスの屋根に乗り、拳を突き上げてノリノリのローザ。

 オレンジーナは近接防衛火器システムファランクスの側に立ち、状況を確認している。


 数百匹以上のモンスターをあっという間に倒したが、更に体の大きい身長二十メートルはある巨人が現れた。

 弾丸を受けて傷は負うものの、致命傷にはならない。


「ブルー! あの大きな奴には効いていないわ!」


「わかった! 弾を変えるよ!」


 近接防衛火器システムファランクスの射撃が停まり、なになら内部からカタカタと音がする。

 そして射撃を再開すると、二十メートルの巨人に弾丸が命中し、小さな爆発を起こし始めた。

 流石に体の内部で爆発が起こるとどうしようもないらしく、爆発した場所を押さえながら前のめりに倒れていく。


 ★☆天界☆★

「なにあれ? なんか爆発してるんだけど?」


「あれは榴弾りゅうだんだね」


「榴弾って、筒に弾を落としてスポーンて撃ちだすアレ?」


「……それは迫撃砲はくげきほうかな」


「何か違うの?」


「同じ榴弾砲の一種だね。簡単に言うと弾頭に火薬を詰めて、命中と同時に爆発させるんだ」


「へ~、そんなのがあるんだ。鉄砲でもできるの?」


「弾頭にある程度の大きさが必要だから、拳銃では無理だね。対物ライフルなら撃てるけど……あれ? 私は何かを忘れている様な気が……なんだろう」


「なによ、気になる言い方して」


「いや、何かが引っ掛かるんだ。なんだろう、爆発……弾頭……う~ん、思い出せない」


 ☆★地上★☆

「ヤッフ~ヤッフ~! い・け・い・け・ブ・ルぅ・スぅ!」


「い・け・い・け・ブ・ル・ゥ!」


 遂にローザに感化されてオレンジーナまでノリノリになってしまった。

 やる事が無いので応援するしか無いのだが。

 しかもブルース達の半径一キロ圏内にはモンスターが入ってこれず、辺りは死屍累々もいい所だ。


 さらには移動をしているため、その範囲はもっと広がっていく。

 榴弾と徹甲弾を使い分け、次々とモンスターを倒していくブルース。

 物理攻撃の効かない相手はオレンジーナが、銃身が向いていない方から来るモンスターにはローザが相手をしている。


 順調に敵を倒していたが、突然ブルースは魔動力機関装甲輸送車ファランクスを方向転換させた。


「ブルー? どうしたの?」


「姉さん、アレ知ってる? 攻撃が効かないんだ」


 運転席のブルースが指さした先には、頭の真ん中から角を生やし、胴体からは背骨を境に左右ついとなるトゲを複数生やしたトカゲがいた。

 トカゲに近接防衛火器システムファランクスで攻撃をするが、徹甲弾ははじかれ、榴弾の爆発は効果が無い。


「あれはホーンレプタルだわ! 強固な鱗を持つトカゲよ!」

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