28.次の目的地

「ブルーとローザさんはオーラが変わっていますし、エメもオーラが大きくなっているわ。一体何があったのか話てくれるわね?」


 宿の部屋の中で、オレンジーナが質問する。

 質問されても心当たりがあるのはブルースだけで、女性二人はなんか強くなった? と感じているだけだ。


「ジーナ姉さん、僕は……新しいファランクスが使えるようになったよ」


「新しい……ファランクス?」


「うん。重装歩兵じゅうそうほへい魔動力機関まどうりょくきかん装甲輸送車そうこうゆそうしゃと来て、近接防衛火器きんせつぼうえいかきシステムが使えるようになった」


 オレンジーナの頭にハテナが乱立する。

 今までは知っている言葉だったが、今回はサッパリ意味が分からないのだ。


「お兄様のアレはすさまじかったわね」


「ブルー君はどんどん凄くなっていくね! 流石私の彼氏!」


 彼氏、と言われてブルースはギョっとし、姉妹は睨みつけた。

 ローザは照れているが。


「コホン。ブルーは更に次の段階に進んだ、という事なの?」


「多分。ボーダーレスってどこまであるの?」


「第二段階までしか予言されていなかったわね。そもそも第二段階まで行った人がいないのだし、第三段階なんて予言のしようがないもの」

 

「ああそっか」


「それで、ローザさんとエメに心当たりは? 勇者を倒して能力が上がったとか」


「あら? ジーナ姉様は私達が勇者を倒した事をご存じなの?」


「城の中では話題になっているわよ? 密偵が興奮してるのを初めて見たわ」


 敵方てきかたには身内を監視・連絡する役はいるが、もちろん味方にもいた。

 なので勇者を倒した時点で城に連絡が入っていたのだ。

 レジナルド第二王子がジャレイ第三王子から勇者を倒したと聞き、すぐさま攻めに入ったのはジャレイの移動が速すぎたため、敵には勇者が倒された情報が届いていなかったからだ。


 その情報が届いたのは翌日で、敵は森から出る事なく完全に防衛戦をするつもりだった。

 

 話がそれたが、ローザもエメラルダも勇者を倒してから、その能力の向上に気が付いている。

 しかしローザはボーダーレスになったなどと思いもせず、エメラルダも強くはなったがどれほどなのか理解していない。


「えっとね、私は知らない技をいっぱい使えるようになったよ。剣士ソードマンってこんな技があったんだ~って」


「私は……速度が上がったのと、目がよくなりましたわ」


「ローザさんは剣士ソードマンよね? そんなに沢山の技って剣士ソードマンにあったかしら」


「私も初めて知ったよ! レイジングスイングって凄い便利だった!」


 順番に確認作業が始まるが、やはりローザの技の数々は剣士ソードマンというには無理があり、やはりボーダーレスになったのではないか、と結論が出た。

 だがそれを確認するにはスキル判定を受けるしかないが、そんな事をしてボーダーレスだとバレたら大変な事になる。


「この事はブルーと同じく秘密にしましょう。混乱が生じてしまって大変な事になるわ」


「そうだね、大人になってからスキル判定を受けようって人が多くなる」


「それどころか無理やりボーダーレスになろう、させようって人が現れてしまいますわ」


「気にしなくてもいいのに。便利だな~って思うだけだし!」


 ローザは気楽だが、それを気にするのが人間というモノだろう。

 その日はそのまま部屋に戻り休み、翌日からは新しい依頼を受ける事となった。

 朝食を四人でブルースの部屋で取り、今後の予定を話し合う。


「それでねブルー、今回の事の成果が確定するとしばらく身動きが取れないから、さっさと出かけてしまいましょう」


「確定するまで待ってから行動しないと、みんなに迷惑がかかるんじゃ……?」


「構いません。私とブルーの邪魔をするものなど、捨て置けばいいのよ」


 ブルーの事となると少しおかしくなる……いやかなりおかしくなる姉妹。

 しかしエメラルダは今回はお休みなので、あまり口出しはしてこない。


「それでそれで、どこに行くの?」


「トランポール国の逆へ行きたいわね。今だったら植物園にキレイな花がある時期だから、メリメッサがいいわ」


「姉さん? 依頼を受けるんじゃないの?」


「……メリメッサに良い依頼があるのよ」


「嘘ですわね」


「嘘だよね!」


 エメラルダとローザがすかさず突っ込んだが、ローザは「ブルー君とキレイな花を見れるならいいかも?」と心変わりしたようだ。

 依頼はどうした、と突っ込みたくなる。


 宿を出るとエメラルダと別れ、ブルース、オレンジーナ、ローザの三人は魔動力機関装甲輸送車ファランクスに乗り込んだ。

 メリメッサとは争い事がないため、あまり気負わずに向かう事が出来る。


 しかし魔動力機関装甲輸送車ファランクスの後をつける姿があった。

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