第582話 救世主への道38(記憶)

なんだかトランス状態に陥り、考えてもいないことを喋っていた。


自分で言っていて、初めて時間の守護者って聞いた。


自分でも初耳だ。


でも、俺は、過去に言ってレジーナ王国とエイダン帝国のことを変えたことが原因だと薄々気がついている。


鑑定魔法で俺のステイタスを見てみると、勇者の称号と救世主の称号は相変わらずあるが、時間の守護者っていうのが入っている。


そして、相変わらずあるのが神。


時間の守護者っていうのが、人の領域でもない気がする。


たぶん、勇者だけが、人の領域であり、救世主も違うと思える。


人の力で世界が救えるか? と考えると救えないと思う。


人であり、人ならざる者が、世界を救える‥‥‥


でも、分散してもいいくらいなのに、俺に集まるのは、納得がいかないが、それが神クリスティアナがいう運命の子なのだろう。


時間の守護者って読んで字のごとく、時間を守る者だよね、でも、俺が狂わしたものを調整をしているのは神レイチェルと生命の神クリスティアナだと思う。


俺は現場で動いているけど。


神の手足になるような感じだけど、俺は自分で考えた行動を取るだけ。


それが平和な世の中になるように。


しかしアリシアの死んだ両親を生き返らせて、時間の変遷が行われ、アリシアが消えたことは、わかっていたが、俺はショックだった。


考えるのと、現実に起きてしまうことは大きく隔たりがある。


翌朝、アリシアの部屋で目覚めた俺は、驚いた。


それを調整してくれたのが神クリスティアナだ。


アリシアを、いつも通り俺の横に置いてくれた神には感謝しかない。


たぶん、神クリスティアナが変えなかったら、アリシアは故郷の村にいたんだろう。


冒険者になることもなく、村で一生を終えたのかもしれない。


アリシアの両親が死んで村で俺の家に住むようになったこともなかったことになる。


俺には記憶もあるし、少しは何を離したか、覚えているけど、俺は、アリシアの両親を生き返らせるために時間を変えてしまった。


たぶん、そちらの方が時間の守護者って気がする。


アリシアの両親は生きている。相変わらずのお隣で俺の親と仲良くやっていると手紙に書いてあった。


お前たちも早く結婚しろと手紙にも急かすように書いてあったが、俺は最近は全然、村に帰っていない。


すぐに帰れるから、帰ろうという気も起きない。


帰ったら、帰ったで凄く嬉しいし暖かい気分にもなれると思うが、今はそういう状態じゃない。


一瞬でも気を抜いてしまうと世界が崩壊する可能性もあるから俺は最近は気を張り詰めたままでいる。


両親には俺が貴族になっていると言う事は話しているけど勇者だと言う話はしていない。


貴族になったと言うことも話さないようにしていた。


その理由はアルベルトの記憶が深く関与している。


子供の時に両親の目の前で魔法を使ったばかりに崩壊してしまった。


しかしアルベルトと両親の3人で村の塀の外に出て丘まで歩いて食事をしようとなったときに魔物が現れた。


アルベルトは必至で両親を助けるために魔法を行使した。


そこから歯車が狂いだした。


確かに今、思えばアルベルトの両親は心を病んでいた。


一夜にして小さいアルベルトを置いてでて行き、あとでわかったことだがウルフに殺された。


アルベルトは両親が、どこかで生きていると思っていたが、そうではなかった。


両親は家を出た後、すぐに殺されている。


現生の俺はアルベルトではないけど、記憶は受け継がれている。


幼いアルベルトの記憶は悲しすぎる…


そのあとも軍に売られて下働きの時代も、つらい、悲しい少年期を過ごすことになる。


しかし変わったのは正式に軍人になってからだ。


軍隊に入ると普通では平民は入れない指揮官クラスのコースに入ることができ、アルベルトは貪るように本を読み漁った。


その時に出会ったのがライラだ。


始めはライラが王族だってことも考えもせずに図書室で話をしたりしていた。


そんなライラと話をするようになってから、大きくアルベルトの時間が動き始める。


しかし動き始めた時間は長くは続かなかった。


ライラと結婚する話になって、すぐに帝国が攻めてきて、アルベルトは出兵を余儀なくされる。


軍を率いて戦場にでて活躍するが、味方に裏切られて最後は知り合いにも刀を向けられ、よっとの思いでライラのところに転移して戻ってライラの前で一命を落とす。


それが俺がアルベルトから受け継いだ能力と記憶になる。


まさに現生のクリスとしての俺に、どうしてアルベルトは背負わせたのか? その意味がやっと分かってきたような気がする。


アルベルトの一生を通して巨大な魔法を持っていたとしても、味方にも裏切られることもあると、いう戒めだと思うし、ひけらかすことをすれば、それを恨むもの、妬む

者が必ずでてくる。


その人にとって無いものと言うのは、欲しいものになってしまう、それでも手に入れることができなければ、中傷、やっかみ、いじめ、恨み、蔑みなどになってしまうのが人間なんだ。


俺はパーティーメンバーに裏切りの人は出て欲しくない。


それが一番、悲しいことだって言うことは嫌と言うほどわかっている。


だから今まではできるだけ隠してきたつもりだ。


でも、勇者物語のあまりにも大きな反響で、そう言うわけにはいかなくなった。


誰もが俺を見ると、勇者だと言う。


特別な目で見られるのは、別にいいが、メンバーを悪意をもってみられるのは困る。


特別な目、憧れを抱く目、羨望の目、欲望が入り混じった目、色々な目があるけど、誰だって油断は生じてしまう。


今の俺はアルベルトとライラの時代を変えることもできるが、そっとしておきたいと言う気持ちが大きい……



ジョシュア将軍と先ほど話をしたが、ぜひ力を貸してほしいと言われたが断った。


自分の国のことは、自分達で解決するのが、一番、妥当なことだと思う、それに他人が関与してしまうと碌なことはない。


例えば他人が力を貸す理由によるが、乗っ取りが多いと思われる。


または資源をもらうとか、何か目的があって協力する場合が多い。


達成する前は、危ぶまれることもあるため、手を出すが、いざ、ことをなしてしまうと、いらなかったということもある。


でも俺たちは別に領地もいらないし、お金もあるから本当はいらないけど、孤児たちに使ってもらうことをしてほしいと思う、


孤児たちにも自分の国の人が援助していかないと、ゆくゆくは国を背負ってたつ子供もいるかもしれないんだ。


だから希望の星は、貴族ばかりにいるわけではない。


いつまでもバカにばかりしていると、馬鹿にしている奴に、国を追われることも起きる。


この国をよくするのは、住んでいる人が中心になってやらないと良い国はできない。


亀は、魔石を取らないと消滅しないので、位置を確認して魔石を取り出すと、真っ黒で汚れた魔石が出てきた。


触るとやばいので、俺は地面に転移させたが、本当にドス黒い魔力がこもっている。


魔石を取り出した瞬間に、カメの形は変化して霧散していく。


霧となって消えていくカメの残骸を見ながら、立っていると、スッと横にジョシュア将軍が来て頭を下げて、去っていった。


将軍のあとに、兵士、騎士、冒険者などが次ぐ次に俺の元に来て、頭を下げていく。


もちろん、アリシアたちにも‥‥‥


俺は、これでいいと思う、どれくらい将軍が軍を掌握しているか、知らないが、勇者のやることではない。


俺たちはカメが消滅する前に帰ってきた。


もちろん帰るのはオーリス王国の屋敷だ。


今度こそセバスチャンに挨拶しなければ‥‥‥







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