第580話 救世主への道36(再び亀の出現)

周りでごちゃごちゃ話をしているが、今は亀に集中して見ている。


あれから何回も神獣たちが兵士や騎士たちを助けている。


今は死んだ人がいない。


聖属性魔法を使える神獣たちが、ケガを治してくれているからだ。


しかしケガ人は減ることは無く、増えていくばかりだ。


よほど先ほど話した現場指揮官が無能みたいだ。


もう現場指揮官を無視してカメを倒そうかと何度、思ったことか。


しかし、それでは国としての統制ができなくなる。


俺たちはあくまでも依頼と言う形にしたい。


そう以前、訪れた時に孤児たちが多かったからだ。


街を歩いていると、あちらこちらに孤児がいたり、座っていた。


完全に孤児たちがいなくなるということは国がしっかりしていても必ず起きている。しかし、この国の孤児の多さは無茶苦茶に多かった。


こんな国は王も国を統治しているんだぞ、どうしてよくならないんだ、と思っている馬鹿が多い。


王族がろくに統治できていないのに、自分たちは裕福な生活をしたりぜいたく品を買いあさっているし、街にお忍びでも出ることは無い。


街を多くのお供をつれて視察にでる貴族や王族じゃ、ハッキリ言って、なにもわからない。


一番は、やはりお忍びで、城から脱走してでも街を自分の目を通してみること。

買い物をしたり、買い食いをしたりしないと、わからないだろうな。


城ばかりにいて城から出るときは馬車の中だけで移動しているような王様は無能だ。


たぶん、この国の王族は、そんな感じだろう。


その王族から指示がでているから、あんな奴が王都に近づきつつある化け物のカメの討伐を任されている。


たぶん、王都から、カメが遠くに見えると思うんだけど、一大事なのに、一度、城が壊されればいいと思えるくらいだ。


たぶん、あの力を使えば、カメを圧することはできると思う。


しかしカメが、どれほど強力で強いかということも知っておく必要はあるから、俺は手を出そうとしないで見ている。


なによりも経験が無ければ人は間違ってしまう。


強い敵に叩きのめされた初めて気づく奴もいれば、叩きのめされても実力を見極めることもできない人もいる。


しかし助け出したりケガ人の手当てでメンバーが大変なことになっているのは事実だ。


勇者物語の本で、俺の所在の国がわかってしまっている。いくら遠い国と言っても国に被害が及ぶこともある。


俺を盟主としてくれている国にも被害が出ることが起きるとまずい。


だから盟主とか貴族って嫌なんだ。


フリーだったら、そんなことを考えなくていい。しかし俺の出身の村は特定されていないと思う。


だから指揮官を殴ってでも前に出ることはできない…


時代が違えば、あんな指揮官なんて殴ってでも、蹴り倒しても前へ出るけど。


指揮官「おまえら、いけ~」としか言わない指揮官


作戦なんてあったもんじゃない。


「貴様たち、動きが遅いぞ、どうして俺の指揮した通りに動かない?」


言われた兵士は、なにか言いたそうにしていたけど、黙った。


ここで指揮官にたてつくと、大変なことになるのはわかっているから。


逃げることも敵前逃亡になってしまい、家族とも死刑になることもある。


上官にたてつくと反逆罪。


逃げられるのは冒険者だけ。冒険者は逃げてもか金で雇われているからもらえないだけ、またギルドランクが落ちてしまうことはある。


「おまえら、しっかり俺の命令を聞け」と怒鳴り散らしている。


周りの兵士も動こうとしない。


「おまえら、俺の命令に従わんか」


「……」


「なんだ、その眼は…」


「ほら死んででも国を守れ、俺を守れ、それが貴様らの使命だろうが」


俺は冒険者の一人のところに行き「ちょっと聞きたいけど、、あれ誰?」


「あの人は、王の弟で将軍で、この国の最高司令官です」


「あっ、そうなんだ、ありがとう」と言って戻った。


「きゃ~、クリス様と話をしてしまった~」と両手を抑えてすごく喜んでいる。


王の弟だから俺を守れって言うんだ。


王の弟で最高司令官か?


厄介だな、成り上がりの典型じゃないか。


前のエイダン帝国のクロード伯爵の弟のゼノとはえらい違いだな。


おれから、エイダン帝国はどうなっただろうか?


俺は、こんなところで時間を使いたくない。


しかし王の弟と言うのが厄介だ。


一介の現場指揮官だったら、下の兵士から、捉えてもらうことができるけど、王の弟になると違う。


どうしようか?


俺たちは作戦会議をするため、兵士や騎士のみんなには悪いけど、現場を少し離れ後方に下がった。


円陣を組んで「みんな、どうしようか?」


「う~ん、難しいよね、さっきクリスが女の子の冒険者に聞いていたでしょう、あのバカ、王の弟だって」


「うん、そうなんだよね、だから厄介なんだよ」


「兵士や騎士の人には悪いけど、一度、この現場を離れようと思うんだけど」


「それも一つの案だね」


「でも関係ない人に死人がでるかも知れないよ」とソフィア


「そこなんだよね、恨みを買うわけにもいかないし」


「いっそ、カメの足で踏んずけてもらいますか?」とアレクが怖いことを言う。


良い考えが浮かばない。


そこで、俺はチラッと先ほど上官をにらみつけた兵士を見た。


そいつは指揮官の後ろで剣に手をかけている。


「おまえら、なぜ、そこで突っ込まないんだ?」と指揮官


俺は手を出すことはしなかった。


「きさま、国のためだぞ、突っ込んで……」最後までいうことなく、指揮官の首が人権に転がった。


指揮官を切った人が「指揮官はカメによってつぶされて死んだ、いいな、みなの者」と大声でみんなに言うために叫んだ。


全員が何も言わなかった。「……」


「これより指揮権は私に移ることになった」と指揮官を殺した騎士が全員に言った。


「全員、この現場から後方に撤退する。急げ」と言うなり走り始める。


新しい指揮官は、俺の方をチラッと見て頭を下げた。


孤児は救うことはできないけど、孤児院に寄付でもして帰ろうかな。


兵士と騎士と冒険者が後方に下がったことを確認して「みんな、カメを倒すよ」と俺が言うと「了解」と言う全員が揃って答えてくれた。


みんなは最大火力の魔法を放っている。


効果は無いみたいだけど、練習にもなるし、しばらく様子を見る。


しかし、このカメ、以前のカメよりでかい。


しかし、全員の火力が以前より上がっていたせいだと思えるけど、カメが首を中にひっこめた。


全員は攻撃をやめて、様子を見ている。


動く気配がないので攻撃を再開したが、カメの甲羅は固くて攻撃が通らないので、首を引っ込めた部分に攻撃を集中している。


しかしカメは甲羅も固いけど、顔の皮膚? も固い。


アリシアとシャーロットがアイススピアで攻撃しているけど刺さることはない。


セラフィーナととソフィアとイザベラがウィンドカッターで亀の顔を傷つけようとしているけど難しいみたいだ。


ジャネットとパトリシアとロゼッタの3人がビーム光線を発射しているだけ、少し焼けた跡がついた。


アレクとアデルとエイミーとアイリスの4人でファイヤーボールを作って、できるだけ熱く高熱にしている魔法を亀に向けて攻撃しているが、焦げた跡もつかない。


後方に下がった人たちから歓声が上がっているけど亀の打撃的には、あまり良くない。


どうするか? このまま攻撃を続けていても‥‥‥


前にやった重圧で潰すことをした方がいいのか?


俺の目の前には、ジャネットとパトリシアとロゼッタの3人が指の先からビームを打ち出している。


俺は、なんとなく、それを見ていた。


! 以前にやったことがあるが、今はどうだろう?


3人のレーザーの攻撃を比べると、ジャネットの方が一番、威力が強い。


ジャネット、ロゼッタ、パトリシアの順になっているみたいだ。


俺のレーザーはどうだろう?


俺は意識を指先に集中させ亀の方向に向ける。


指先が明るく灯る。それだけに留まらず、もっと指先が光輝き出す。


前にいる3人も、後ろが光だしたので、攻撃をやめて、こちらを見ている。


うわっ、これって、どうなるんだろ? 打とうとしている俺も不安になるくらい指先が光りだしている。


でも指先は熱くもないけど。


でも、落ち着け、落ち着けと言いながら指先は亀に向ける。


そこに一点だけがより強く光を帯びてビームが発射された。


俺の腕はビームが発射された衝撃で少しだけ押し戻された。


ビームは神に向かっていき、亀の頭部に当たった。大きな音がして煙が大量に出て見えなくなった。


俺は煙で見えないから、次のビームを発射する用意をする。


次も効果があるように頭を狙って攻撃体制に入る。


煙が消えないうちに、もう1発、ビームを発射した。


2発のビームを発射したが煙で見えないので、煙が消えるのを待つ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る