第576話 救世主への道33(レジーナ王国編)

城を制圧した報告は王族を捉えたあと、すぐに連絡が入った。


さぁ、今からの方が大変だ。


まずは、井戸を確認する。 


それはジャネットとロゼッタとパトリシアに任せた。


今回は井戸は、3人の聖属性魔法で成分を減らすことができたみたい。


アリシアとソフィアは皇女殿下の護衛をしてもらう。


俺は、わざと結界魔法を使って守ることはしなかった。


もう、狙う奴がいないと思う。


ほとんどの城で働いていた人は、一応、ロープに繋がれて尋問される。


それを連れてきたクロード伯爵の兵士が担当する。早く正常に戻すために。


今、城の中は、凄い騒ぎになっている、いきなり1000人の兵士がどこからともなく現れたわけだから、当然だけど。


一種のクーデターになってしまったが、今はしょうがない。


今は、王族の3人が地下牢に入れられて、兵士たちが、そこを警備しているけど、そこにも多くの城で働く人が入れられている。


最後に抵抗したのは、クロード伯爵が赴いたルーカス王子の一派だけ、あとはうまくやったみたいだ。


あっけない幕切で、制圧できた。


でも、これからが大変だ。



俺たちは、王女殿下から、城の中に部屋を借りた。


その部屋に待機しているけど、今は何もすることもない。


警護対象の王女は、自分の部屋でアリシアとソフィアの警備をつけているので、大丈夫だろう。


今はクロード伯爵の方も1000人の精鋭部隊を連れてきているが、警備まで手が回らない。


今は、時間があるので、一度、レジーナ王国に戻ることを考えた。


報告もあるし、昨日、今日で、環境がかなり変化したしね。


「レジーナ王国に、報告に行くけど、行く人?」


というと全員が手を挙げなかった。


「えっ、誰もいかないの?」


全員が見ているけど、行く人はいない。


「じゃ、しょうがないから、俺、1人でいってくるよ」


と言うと全員で、いってらっしゃい、と言われた。


俺といかない理由は、今は皇女殿下が、フルーツを出してくれて食べているから。


フルーツは、城では栽培していないので、安全だ。


よっぽどお腹が減っているのかフルーツを全員がむしゃむしゃ食べている。


俺はフルーツがなくなったお皿にお饅頭を置いたら、すぐに手が伸びてお饅頭を二つとっていった。


俺は、テーブルに置いてあるリンゴをとって、みんなが食べているのを見ながら寂しく1人でリンゴを齧りながら転移した。


転移した先は、貸し出してもらっている城の部屋だ。


そこから緊急事態なので、至急、女王を呼んでほしいと歩いている人に伝えた。


5分くらい待って女王と王女の2人がやってきた。


「クリス公爵、戻っていたんですね」


「たった今、5分前に、戻ってきて、人を捕まえて、呼んでもらったところです」


「それで、今回は緊急事態言ってなんですか?」


「立ち話もなんですから座りましょうか?」


「あっ、はい」と言って3人で椅子に座って、テーブルに手を置いた。


「いいですか、帝国で変化が起きました」


「えっ、帝国で?」


「はい、帝国で、クーデターが起きて、ある人物が、国を掌握しつつあります」


「それで王は、どうなったのでしょう?」と女王


「王は捕らえれて牢屋にいます」


「えっ、あの王を捉えられるなんて、その方、よくできましたね」


「そう思います」


「それで、その方の名前は?」


「帝国の王都から離れて、こちらに近い辺境伯のクロード伯爵です」


「えっ、あのクロード伯爵様ですか?」


「どの伯爵のことなのか、わかりませんが、私が知っているのは川の向こうに領地を持っている辺境伯のクロード伯爵です」


「やっぱり」と女王


「えっ」


「あの方は誠実、そのもので実直ですから、以前、お会いした時も誠実に対処してくれましから」


「そうですか」


「ではクロード伯爵が、今度の王になると?」


「いいえ、多分違うと思います。今度の方は王族の方を選ぶと思います」


「王族?」


「はい、王族のアレキサンドリア王女です」


「あまりお名前を聞いたことがありませんが‥‥」


「そうですね、あまり社交的ではない方ですから」


「でも、まあ、これで、この国は救われるのですね」


「そうなります」


そこで事件が起きた。


ここではなく帝国で。


「では、ちょっと俺は野暮用で行きます」と言って返事も聞かずに転移した。


残った2人は「本当にお忙しい方」と言っていた。


女王が「でも、多分、帝国の変化を起こしたのはクロード伯爵ではなく、クリス様だと思うわよ」


「えっ、どうして?」


「だってクロード伯爵は、真面目な方ですけど、王に従っているからですから」


「お母様、さっきは、言いませんでしたよね」


「ええ、あのクリス様は、そう言うことを言うと、はぐらかすから」


「あっ、そうですね、私も、そう思います」


「でもね、クリス様がここにいらっしゃらなかったら、この国は滅んでいました」


「はい、私もそう思います」


「本当に、あの方には感謝しなければいけませんね」


「あっ、そうだわ、お母様、クリス公爵に勲章とか、領地とかあげない?」


「私も考えたわ、あんな魔法使いの方を我が国にと思ったことが何度、あったか。でもね、あの方は自由にしているから、その力を発揮することができると思うのよ」


「あっ、そうですね、私も、そう思います」


「1つの国に制限されて黙っている方ではないわ」


「あの方は大空を飛び回ってこそ、あの強力な魔法を行使できると思うのよ、多分、彼が、本気になれば、この国は滅んでしまうわ。

それも1ヶ月や、そこらでもなく、たった一瞬でしょうね」


「お母様は、クリス様のことを、怖いですか?」


「いいえ、あの方を信用しています、でもね、あの方よりも怖いのは、あなたとそっくりな顔をした人がいたでしょ」


「あっ、はい、アリシアさんです。あまりにも私に似ているので鏡じゃないかと思ったくらいです」


「あのアリシアさんを失ったときの彼が怖い‥‥‥

多分、彼は、彼女を失うと大魔王になると思うわよ」


「‥‥‥」


「制御が効かない、誰も止めることができない、この星の者が力を合わせても敵わない、その力を、あのお方は持っている」


「そうかもしれません」


「あのお方の能力は計り知れない、神にも匹敵するかもしれない。

たぶん、クリス様も気が付いておられると思うけど、だから今は能力を制限している‥‥‥私は、そんな気がする」


女王が一種のトランス状態に入っている。


「あれでも制限していると思うのですか?」


「あまりに強い力は、使えば使うほど不安定になるかもしれない、クリス様にあうたびに、その思いは強くなるわ。

そうならないために、彼は能力を出さずに戦っている。

自分のことがよくわかっているのね、クリス様は‥‥‥

クリス様の力を解放することが、どれほど危険なことなのか。」


「お母様、それって」


「ええ、おかしな話だけど、私にはなんとなくわかるのよ。

彼には使命がある、その使命を全うすることが、彼の最終目的。

その前に、力に擦り回されるようじゃいけない。

それを制限することで押さえつけているわ。

あんな巨大すぎる亀を彼は一瞬で消し去ったわ。

それが、証拠‥‥‥

でもね、彼がいることで、助かる人も大勢いることは確か。

彼に辛い思いばかりさせるのではなく、みんなで協力できたら、どんなに素晴らしい未来が広がるのか。

でも、彼は宿命付けられている‥‥‥その運命には逆らえない」


「お母様、それはあまりにも悲しすぎます」


「そうね、でも、彼はそれに立ち向かうわ」


女王は、まるで予言しているみたいに話している。



















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