第536話 再びイーノック王国2

俺たちはイーノック王国で功績から貴族位をもらうことになり、管理領地も、しばらくは国が管理するということで、了承した。


いざとなったら、誰かに譲ることもできるかも、例えば子供ができたら、子供に譲ることも可能だろう。


その場合は、国王に許可を求めないといけないと思うけど。


誰の子供かはわからないけど‥‥‥、その子たちの未来にも国が存続してくれればいいが。


いや、国というか、この星自体が存続していればいいが‥‥‥。


俺が冒険者になるために、村を出る前から感じている焦燥感‥‥‥、村を出てから、それが消えることがなく、迫ってきていることを感じる。


未来予知でも、わからないことだからイレギュラーだと思う。


それが、いつ起こるのか、ということまでわからないし、誰が起こすのかも、わからない。


しかし俺には思い当たることがないことはない、それはメンバーに何かがあった時だ。


ウルフや神ナサニエルじゃなくても、俺自身も破壊的な行動になることもあるからだ。


勇者が、実は破壊者だということもあり得るということだ。だから、俺が一番、そうなり得ることがあるアリシアを鍛えることもしてきた。


いくらペンダントや指輪で守っているからといって完璧なことはあり得ない。


ウルフに起きたことは、誰でも起こり得ることだから。


ウルフが家庭を持って子供まで生まれて、それを誰かが破壊した。そのことが、全ての元凶になっている。


たぶん、奥さんと子供を殺したのは創造神ナサニエルだと思う。ウルフのやつも薄々気がついていることなのに、どうして従っているのか? あのドス黒い魔力が関係しているのか?



イーノック王国の港町について上空に滞空しながら周りを見渡す。


「キャサリン、どこから、どこまで領地になるの?」


「え〜とですね、見える範囲、全てですね」


「えっ、結構、大きいいね」


「はい、そうですね、どの貴族も、欲しい、欲しいって言っていたのに、今まで、誰もあげなくて、王族が管理していたものですから。

ここの港町は、イーノック王国の中でもすごく税金が集まるくらい繁栄しているんですよ」


「そんなドル箱をくれなくても‥‥‥」


「いいえ、クリス様は、私たちの命の恩人ですから、当然ですよ」


「そ、そうなんだ」


「はい、だから遠慮しないでください」


「うん、わかった」


わかったと言ったけど、いいのかな、領地経営も知らないし。



上空から降りられそうな路地を探す。


誰もいない路地を見つけて、降りていく。


まずは港町を見て歩くことになった。


港町だから魚の流通が多いみたいで船が多い。もう漁から帰ってきていたみたいで、みんな網の手入れをしている。


「ご主人さま、お腹すいた〜」とアレク


「あっ、私も」とアデル


「うん、何か食べようか?」


「わ〜い、やった」とアレク


多くの店が立ち並び、俺たちは露店の串を買うことにした。


「あれでも、食べようか?」と言うと、「なんだか、美味しそうですね」とキャサリン


味がわからないので、まずは1本だけ買ってアレクに味見してもらう。


一口食べた、アレクが親指を立てる。


「あの、すいません、この貨幣、使えますか?」と聞いて


「ああ、使えるよ、買ってくれるのかい」と店主


「ええ、えっと30本もらえますか?」


「そんなにかい? じゃ、焼くからちょっと待ってくれるかい」


「ええ、大丈夫です」と言って座れるところを探すと、3人掛けの椅子と近くになる石に座った。


焼くのを待つ間、情報を集中することにした。


「あの、ここは、どんなところですか、俺たち外国から来たんで」


「そうさね、いいところだよ。ただ、船乗りが多いから、酔っ払いが多いかな?」


「酔っ払い?」


「ああ、そうさ、船乗りが沖に上がったら、網を修理したら、あとは暇だろ、その時に酒を飲むのさ。まぁ飲んで早く寝て、また次の日の朝に天気がよけりゃ出港するからね」


「そうですか」


対して情報は聞けないみたい。


ジャネットが来て「ここは犯罪とかないですか?」


「ああ、それはね、最近は物騒だから、夜は家にいるんだよ」


「物騒?」


「ああ、最近は少なくなってきたんだけど、以前は誘拐が多くてね」


こんな地方にも誘拐事件があっていたのか?


念話でジャネットに『今は、どうか聞いてくれる?』


俺が聞くよりもジャネットの方がうまいみたいだから交代した。


ジャネットが「おかみさん、最近は、誘拐はどうなんですか?」


「ああ、今は滅多にないみたいだよ、なんでも他の国で勇者って名乗る人が誘拐犯を大量に捕まえたって聞いたね。

そんな勇者なんて人、本当にいるのかね」


「そうですね、本の中だけですよ」と俺が言うと横からキャサリンが「この人が、勇者なんですよ」と言って来た。


言わなくてもいいことを‥‥‥


女将さんは、それを聞いて「あ〜ははっ、おかしいことを言う嬢ちゃんだね。久しぶりに笑えたよ。

ほら焼けたよ」と言って袋に入れてくれた。


熱々の焼き串を持って、メンバーのところに行き、食べる。


あっ、魚だけど、結構、美味しい。


魚の串とイカの串の2種類だ。


「ありがとうございます、クリス様、‥‥‥‥‥‥美味しいですね」とキャサリン


「お城では、こんなの食べないでしょう」


「ええ、お城の食事には、ない味ですね」


「そういえばキャサリン、ここが俺の領地になるっていうことだけど、屋敷なんかあるの?」


「あっ、はい、私たちが時々、ここで泊まっている屋敷がありますから、そこがクリス様の屋敷になります」


「そう」


王族が時々でも泊まる屋敷っていうのが気になるね。


「えっと、ここからも見えるかと‥‥‥」と言って背伸びしている。


キャサリンが見えなかったみたいで、少し下がって大きな建物がない位置に移動した。


「あっ、見えましたよ」と言って指を刺している。


みんなは、キャサリンの近くに移動して屋敷を見る。


そこにはお城のような屋敷が立っていた。


これって、本当に屋敷って呼んでいいもの?


小さな城だな。


さすがは王族が泊まることだけはある。


「じゃ、歩いていくのも遠いから、転移して行こうか?」


「そうですね、じゃ路地に行きましょう」とキャサリン


俺たちは路地を見つけて透明になり、飛び上がった。


上空だと、すぐに屋敷についてしまうが、やはり小さな城だ。


敷地も広くとってあり、高台に位置する城だな。


キャサリンが「この屋敷の名称は、アレグサンダー・ルークっていうんですよ、人類の擁護者とか、人類の守護者っていうのがアレグサンダーですね、そしてルークは光を運ぶものっていう意味があります。


「つまり光を運ぶ人類の守護者?」となんとなく口にしてしまった。


キャサリン「そうです、よく分かりましたね」


「うん、なんとなく‥‥‥」ここも俺と関係があるのか?


よっぽどイーノック王国は俺に何かを伝えたいらしい。


これは、もう今日から泊まるしかないな。


食料は俺の異空間にあるから大丈夫だし、みんなの着替えも俺の異空間に入っている。


あとはキャサリンが、どうするかだな。


勝手に決めたが「キャサリン、今日は俺たち、ここに泊まらせてもらうよ、キャサリンはどうする?」


「えっ、よかったら、みなさんと泊まりますよ、私も」


帰すことも考えたが、キャサリンに何か聞き出せるかもしれない。


今日は、アレグサンダー・ルークに泊まることにした。


城を探索しなければ‥‥‥なんだかワクワクしてきた。


でも、古そうじゃないから、何も出ないかも‥‥‥


いつ建立されたのか、わからないけど、全体的に見て、新しい。


俺は屋敷に入る前に検索魔法を行使してみた。


隠し部屋らしきものはないみたい。


でも、俺だったら、どうするだろう? 


単純に検索魔法で見つかるような方法で隠したりしない。


そこで俺は思いついたことがある。


検索魔法にいつもよりも多く俺の魔力を込めてみる。


そうすると1箇所だけじゃなく3箇所反応が出てきた。


つまり、俺の魔力が鍵になっているということだ。


つまり、俺が関与していると言える。


それが、どこなのか?


やはり、屋敷とは離されている。


つまり屋敷からは行くことができない部屋があるということだ。


あとで3箇所の部屋に行くことにして、まずは屋敷(城?)の中を見てみよう。


キャサリンが屋敷の鍵を開けて扉を押して開いていく。


管理がしっかりとされているみたいでカビ臭さもない。


簡単に見たところ、埃もないみたいだ。


これなら快適に過ごせそうだ。


でも、扉を開けて中に入ってきたけど、なんだろ、この広さ。


今までのもらった屋敷の中で一番、広いんだけど、さすが王族が滞在する屋敷だけのことはある。


玄関というか、扉を開けて見える空間だけで生活ができるくらい広い。


ここでパーティーでもできそうなほど広い空間だ。


そして2階に上がっていく階段が見えるが、この階段だけでも、今までの2倍以上も広さがある。


どれだけ幅の太い人が通るんだよ‥‥‥


階段の横幅が、俺たちが横に並んでも6人以上が通れる。


メンバーの方も見てみると、今までお城は何回も行ったことがあるけど、全て借り物で一時的な滞在場所でしかないから、見た目が違いすぎる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る