第535話 再びイーノック王国

俺たちは、過酷な戦いを終えてイーノック王国に立ち寄っている。


全員で戦いに参戦できて怪我もなく帰ってくることができた。


それが何よりだと思うから、今日はお祝いするためにイーノック王国に戻ってきたけど、まだ店は営業してない。


空いた時間をイーノック王国の城にいくことにした。


俺たちに貸し出されている部屋に転移して、呼んだらきてくれたのがキャサリンだった。


キャサリンが扉を自分で開けて中に入ってくるなり「もう、遅いですよ」と言われた。


別に来るとは言ったけど、いつ訪れるかは言っていない。


今は、皇太子のイアンが即位の準備に忙しいときだと思う。


「えっ、早く来るって約束したっけ?」


「いえ、その‥‥‥なんでもいいんです」と言われた。


なんだか口ごもるキャサリン。


「えっと、今は国政は、どう?」


「はい、なんとか落ち着いておりますけど、お兄様がパニックになって‥‥‥」


「それは当然だよ、急に国王になることが決まったんだから」


「いえ、それもあるんですが」


「他にもあると‥‥‥」


「はい、お兄様にあっていただきたいんです」


「それじゃ、今から会えるなら、あいに行こうか?」


「はい、ぜひ、お願いします」


俺たちは全員で部屋から出て、イアンのいる場所まで、廊下を歩いている。


兵士が見守る大きな扉の前に立って、警備する兵士が中のイアンにお伺いを立てようとしたけど、強引にキャサリンが扉を開けた。


「お兄様、クリス様たちをお連れしました」


執務室の椅子に座っていたイアンが立ち上がり「おおっ、よくきてくださいました、マイロード」


えっ、聞き間違いじゃなくマイロードって言った?


「あー、そのマイロードは、これから国王になるあなたが言うべきじゃないよ」


「いえ、あなたには、私のマイロードとなる素質があります。あなたがいなければ、わたしたちは、今頃は、殺されていたでしょう。

ここにいるキャサリンの姿を今でもみることもできるのは、あなたのおかげに他なりません。マイロードよ」と言って俺の前にひざまずく。


そうするとキャサリンまでが俺の前に跪いた。


「あなた様が、この国に対してなされたことは、本来なら国をあげて祝賀行事でもパレードでもしなければならないこと‥‥‥。

国を助けてくれた大恩人に対して、今は、何もできないのが実情です。

そのことを国中の貴族を集めて会議を開き、ことの成り行きを説明させていただきました。

そして私からの提案として、クリス様を貴族として迎えることに反対もありましたが、国を守る貴族も守ることができなかったと言うことで、全員一致で、クリス様を公爵として、そしてメンバーの皆様を伯爵として叙爵するコチになりました。

そしてクリス様には、港町の広大な領地をもらっていただきます」


「ちょっと待って、俺は管理なんてできないよ」


「はい、それは私の愛読書の勇者物語でわかっております」


「では、どうして?」


「クリス様のなしたことは、大きすぎるのです。ですから私ども不甲斐ない王族よりも、クリス様を王につけろという貴族の意見もありました。

しかしクリス様は、そんなことには興味はないということは理解しておりましたので、なんとか貴族を説得していくためには、必要最低限の措置なのです。

どうか、どうか、お願いいたします。

領地の管理は国の専門部署が管理いたしますので、クリス様は、時々、そのにある屋敷に、ご滞在していただければ‥‥‥。どうか、お願いします」


あ〜、貴族もめんどしい、つまり、自分達が王族として国を管理するための、措置ということか、だから俺を奉ってマイロードっていうのか。


よくよくは王になろうとしているイアンが、俺のことをマイロードっていうのが、わかった気がするけど、ようは俺のためっていうよりも、自分達のためじゃなん。


俺は、その措置というか、それに乗ることにした。


「じゃ、その方法に乗ってあげるよ」


「あ、ありがとうございます、マイロード」


キャサリンが「良かった〜」


キャサリンが俺を待っていたのは、これなのか?


「クリス様、あと、あと、お兄様の結婚の申し出が増えていて大変なんです」


え〜、王族だから昔から決められていた許嫁とかいないのかよ。


「うん、まぁ、それはイアンが選ぶしかないよね」


キャサリンはお兄さんっ子なんだね。だから心配なんだ。


「じゃ、イーノック王国の貴族になって領地もあることだし、通信装置をあげるよ」と言って異空間からリンゴの陶器の通信装置を取り出した。


「これをあげるから、俺との通信に使って、これの前に立って、俺と話したいと思えば、使えるから」


とイアンに差し出す。


横でニコニコしながら、キャサリンも手を出している。


「‥‥‥」


ハァ〜、キャサリンも欲しいということか。


本当なら一か国に必要だけど。


キャサリンのニコニコ顔を見ると、やらないわけにはいかないみたい。


「キャサリン、特別だよ」と言って、もう一つ、取り出してキャサリンに渡す。


「あ、ありがとうございます、クリス様」


キャサリンが俺との通信装置を、すごい笑顔で受け取っている。


もちろんメンバー全員から睨まれることになったが。


「この装置、かわいいですね、クリス様が選んだんですか?」


「いや、俺じゃないよ」


「へ〜、そうですか、てっきりクリス様だと思ったんですが」


キャサリンが鼻歌まじりに楽しそうにリンゴの通信装置を見ている。


なんだ、もっと大変なことが起きているかと思ってきてみれば、大したことないじゃん。


でも領地持ちの貴族なんて、嫌だな。


「では、あとはキャサリンが案内していきますので、」


「クリス様、いきましょう」と言って俺の手を引っ張っていく。


それに不満顔のメンバーが、ゾロゾロついてくる。


俺たちは、もう一度、、貸し出されている部屋に戻ってきたがキャサリンは、地図を持ってくると言って、今はいない。


しばらく、くつろいでいると扉を叩くこともなく、一気に扉が開いて、嬉しそうなキャサリンが地図を持って入ってきた。


部屋の中に入ってきたキャサリンは、テーブルの上にあったものを退けて、地図を広げる。


「えっと、ここがお城ですから、う〜ん、港は?」


キャサリンが説明してくれるのに、地図の見方が、わからないみたい。


「キャサリン、港町はここだけど‥‥‥」と言って示す。


「あっ、そこです。ここを他の貴族から、早く分配してくれって言われていて‥‥‥」


「でも、自分の領地の近くだったら、可能かもしれませんが、ここは、他とは離れていて、国が直轄で運営していたんです。

それをクリス様にもらっていただこうと」


「じゃ、行ってみようか?」


「あっ、そうですね、私もついていきます。でもちょっと待ってくださいね、鍵ももらってこなくちゃ」そう言ってキャサリンは、また出ていった。


しかし、すぐにキャサリンが戻ってきて、「では、いきましょうか?」


俺たちは歩いていくのも、馬車で行くよりも、地図を確認して透明になることで見えなくなり港町に転移してきた。


キャサリンには透明になっていることは言ってない。


「本当に転移って、すごくて早いですね」とキャサリン


「うん、でも、足腰が弱るよ」


「あっ、それは困りますね」


「うん、だから鍛えることも考えないと」


「クリス様は、何か、運動とかしているんですか?」


「えっ、運動はしていないな、走っていることもあるけど、最近は忙しくて、それもできていないな」


「今度、一緒に走りませんか?」


「えっ、うん、チャンスがあったらね」


「あっ、その言い方、走る気がないですね」


「いや、それよりもやるべきことが多くてね」


「大変ですね、勇者ともなると‥‥‥」


「うん、イーノック王国の城の地下の解明も住んでいないからね」


「あっ、そうでしたね、あの時は、忙しくて、それどころじゃありませんでしたね」


「うん、そうなんだ、どうして俺の声が聞こえたのか、また、本が、あそこになったのか? そして次元超越剣セイビアーが、あそこにあったのか? わからないことだらけだよ」


なぜ、イーノック王国なのか?


オーリス王国じゃダメだったんだろうか?


それとも数千年の間に土地が変わったのか?


それとも、あそこに行って、いつ受け取るのか運命だったのか?

何が、どうなっているのか、わからない。


今から何が起きるのか、何が待ち受けているのか?


この星に未来はあるのか?


俺は、嫌な予感しかしない‥‥‥それが当たらないことを祈っている。

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