第517話 1000年前の世界35

現世でウルフは創造神ナサニエルに殺されてしまった。仲間をあんなに簡単に殺してしまうなんて。


生き返らせるつもりがあるから簡単に殺したのか、いちど死んでしまうと変化してしまう可能性があるから強くなったり、何かに変化させようとしているのか。


ウルフの奴をウルフから変異させようとしているのか?


でも、あまりにも生命を軽んじている。そんな奴に神を名乗る資格はない。


神は人の願いを叶えることはない、神は人が変な方向に行かないように見守るだけだ。


そして神は人の拠り所であるべきだ。


神自体が悪いことをしだしているということが、神の行為を超えている。


つまり現世でも、1000年前の世界でも魔族が戦いを仕掛けてきていることが神が示したことなのか?


前世のアルベルトの時代にも、ガルシア帝国が攻め入ってきたが、これも神が絡んでいるような感じがしている。


今まで起きた事件が、全て創造神ナサニエルの起こしたことなのかもしれない。


俺たちが初めて経験したオーリス王国の王の暗殺事件や王子毒殺事件もシャーロットが狙われた事件も子供が誘拐された事件も、麻薬事件も全て、関係があるのか?


証拠はないんだけど創造神ナサニエルに関係している可能性が浮上してきた。


しかし俺の目の前まで出てきて悪事を働いた事は間違いない。



俺が1000年後に戻ってから、食事休憩をしている時だった。


急に眠気が強くなり椅子に座ったまま寝てしまったみたいだ。


眠りに堕ちながら見たことは見たことがある景色だった。


なんだか懐かしいような心が和むような雰囲気を覚える。


ここは‥‥‥?


景色がどんどん、わかっていく。その一番面で変わるのが止まった。


見た途端、俺の胸はズキっと痛みを覚えた。


そう、この光景は俺の過去、つまりアルベルトの時代だ。


それも一番、思い出したくないこと。


俺が、まだ小さく村に住んでいた頃。


俺の村がクローズアップされる。


そして、さらに俺の懐かしい家が見えてくる。


懐かしいけど、一番、嫌な記憶の家だ。


子供の頃に魔物に襲われて、魔法を使って魔物をやっつけたら両親は俺のことを気味悪がって、家から俺を置いて出て行ってしまった。


どうしてこういう光景を思い出さなければいけないのか?


俺は緊張で顔からも体からも、汗が滴り落ちる。


目の前の光景は、あの時代のままだった。


俺の体が震えていくる。俺の家に誰が住んでいるのか、いつの時代なのか、わからないのに、俺の記憶にある家を見ると萎縮してしまう。


どうして前世の嫌な記憶を思い出さなければいけないのか?


なぜ? 俺に嫌な記憶を見せる必要があるのか?


誰が、嫌な記憶を俺に見せているのか?


俺の家の扉が開いた。


嫌な記憶を見せられているのに目が離せない‥‥‥


部屋の中に入っていくと、両親がテーブルの上に伏せている。


このシーンは、俺が魔物を殺してからのことなのか?


嫌な記憶なのに引き込まれていく‥‥‥


ドアは閉まっていたが、ドアを開けて俺が帰ってきた。


家に俺が入っても2人は顔を上げることもなくテーブルに伏せている。


母親に近づいた俺は手を握る落としたいけど手を振り払われてしまう。


母親に手を振りは払われたので、父親に近づこうとしたけど手が出ない。


父親は「お前は一体何なんだ‥‥‥」


その時に母親が「私は‥‥‥化け物を生んでしまった‥‥」と以前、あった光景、そのままに再現される。


そして俺は泣きながら自分の部屋へいき泣き疲れて寝てしまう。


そこからは早送りになった。


夜が明けて朝になって俺が目を覚ますと、テーブルが置いてある部屋には誰もいない。


これは見た光景だ。どうして見せる必要がある? と考えていたらシーンが巻き戻された。


俺が部屋に入ってドアを閉めたシーンからだった。


両親の2人はしばらくはテーブルに顔を伏せていたが、空いていたドアから何者かが入ってきた。


両親は足音で顔を上げて「あの‥‥‥」と言おうとした途端、入ってきた男は、すごい力で2人の腹部を殴り、倒れた2人を抱え上げた。


俺は「えっ‥‥‥」としか言えなかった。


そして瞬間転移で2人を連れ去っていった。


さらにシーンは続いて山に転移してきた男は、肩から2人を下ろし、気絶しているのに、ファイヤーボールで生きながらにして燃やした。


これが真実なのか? これを見せるために‥‥‥?


考える暇もなく、またもやシーンは早送りされた。


戦いの最中のシーンになった。


俺が馬に乗っている。索敵魔法を使いながら馬を走らせている。


周辺には敵はいないことを確認して油断していた。


俺の後ろから毒矢が飛んできたのは、この瞬間だ。


毒矢を打ったのは、味方だった。俺のことを羨ましく思って俺のことを金で取引した奴だ。


俺が馬から落ちて最後は知り合いに殺されたけど、、そいつも男たちに脅されてやったことだ。


またシーンが変わる。先ほどの男たちに話をしている奴がいる。金を渡して、俺を殺せたら、もっと金をやると言っている。


指示している奴はフードをかぶっているから、はっきりとは顔を見ることができない。


俺を味方が狙ったのは、全て、このフードを被っている男だったのか。


一瞬だが、フードをかぶっている男の顔が見えた。


「‥‥‥」


俺は愕然とした。


俺の両親を連れ去り殺したのも、毒矢で背後から撃たれたのも、全ては1人の男だった。


その男は、ウルフだ。


どうして俺の人生に、ここまでして絡んでくるのか?


わからない‥‥‥



俺は、アリシアが心配そうにしている前で目を覚ました。


しかしアリシアは、俺には近づいていない。


俺の前には結界魔法が張られている、俺は自分の魔力で張った結界魔法じゃなかったけど、結界魔法を解除した。


どうしてか、わからないけど他人がはった結界魔法を自分の力で解除できた。


結界魔法が無くなった途端、アリシアが俺にできついてくる」


アリシアが泣きながら「もう、クリス、心配したよ」


「あっ、ごめん」


ジャネットが「ご主人さま、大丈夫ですか? 洋服がビシャビシャになるくらい濡れていますが」


「うん、大丈夫だよ」


「本当に? 顔が青いよ」とコリン。


「うん、問題ない」


「そうですか」とジャネット


アリシアが、まだ抱きついたまま。


しばらく待つことにした。その間に考えをまとめる。


あまりにも多くのことが起きすぎた。


頭が混乱してしまっている。


しかし、なんの意味があるんだ? ウルフの奴が俺を狙っているんだったら覚醒する前に殺せばいい。


何が目的なのかわからない。


ウルフの奴が動く時は、創造神ナサニエルの命令があるのか?



アリシアがやっと落ち着いてくれた。


今は王族も部屋から退出してもらっているからメンバーだけだ。


アリシアの目が腫れて赤いので魔法で治療した。


俺の頭は、まだ混乱している。


どう話していいのかわからない。


今まであったことを整理してみると両親がいつの間にかいなくなったんじゃなくて連れ去られていて殺されていたと言う事。


そしてガルシア帝国がルーファス王国に攻め込んできた時にもウルフが関係していた可能性がうかがえる。


俺が1番、ショックを受けているのは、俺を置いて出て行ったと思っていた両親が、夜中にウルフによって拉致されていて殺されていたと言う事。


あの時は突然いなくなって恨んだこともあったけど、心のどこかで生きてくれていればなと思っていたが、真実は残酷だ。

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