第515話 1000年前の世界33

俺はウルフが放ったブラックボールに脅威を覚える。ウルフ自身よりも厄介なものは、奴の体内にあるドス黒い魔力の方だ。


まさにウルフの奴の体内には時限爆弾が詰まっているみたいな気がする。


破壊もできない、破壊してしまうとドス黒い魔力が飛び散ってしまう。


ウルフの奴が死んでしまってもドス黒い魔力が、放出されてしまうかもわからない。


ドス黒い魔力が解き放たれるのが1番まずい。


メンバーたちは魔族の数を50体以上から半数に減らしている。


俺もウルフを、どうにかする必要があるが、奴を結界魔法で覆ってしまうしかない。


結界魔法でウルフと覆って聖属性魔法で奴ごと消し去る方法が一番だと思われる。


そう考えた俺はウルフを目の前にして奴を結界魔法で覆った。


閉じ込められたウルフは、突然、自分の目に現れた結界に驚いている。


「何をする気だ」


「お前を消滅させる」


「なんだと?」


「お前を消滅させると言ったんだ」


「‥‥‥」ウルフの返答はこない。


予想だけどウルフの体をどこでも傷つけようのものなら、血の代わりにドス黒い魔力が出てくると思う。


そんなのが大量に湧いて出てきたら大変なことになる。


だから臭い物には蓋をすると言う原理でウルフの体を結界魔法で覆っている。


そして俺は重ねがけで聖属性魔法を展開することにした。


徐々に結界の中が聖属性魔法の光で満たされてきて、ウルフの姿が隠れていく。


ウルフは結界の中でもがいているが、俺の結界は簡単には破れない。


ウルフが結界の中でもがいているが、手の先が霧散していく。


しかし、それ以上は光がより強くなり見えなくなった。


その間にウルフは結界の中にいるので、俺は魔族に対することにしたが、ウルフの様子から目を離すことはない。


魔族の奴を聖剣を取り出して切り付けていく。


俺が加勢にきたことでメンバーも活気づいた。


その時だった。


俺の結界を破る奴が現れた。


俺の結界が簡単に破られるはずはないのに、それを破った奴がいる。


それは‥‥‥



結界を破った奴は、俺が待っていた人物だ。


ウルフを守るために、現れた奴は、今回は変装もなしで、現世に舞い降りていた。


奴の衣装は白、足元まである白い服を頭から被るように着ている。


奴の顔を見ると白いヒゲを生やしていて背が低い男だ。


年齢は人で見れば60歳くらいだろうか。


その男のことを俺は見たことはないけど、話から聞いていた。


そう奴は、創造神ナサニエルだ。


以前、神レイチェルに聞いた特徴と同じだ。


もし、他の奴が偽っていることもあるが、多分、そうではないと思う。


現れた奴の威圧が、ものすごいから本人だと思われる。


俺は以前から創造神ナサニエルを疑っていた。


創造神ナサニエルは、結界を破り中からウルフを抱え上げた。


ウルフを簡単に肩に担いで俺の方を見ている。


「よくも、俺のしのべを‥‥‥、このクリスティアナの眷属の者め」


クリスティアナの眷属? 初めて聞いた言葉だ。


俺が生命の神クリスティアナと会ったのは、一度だけ。


それもウルフと俺が戦っている時だけだ。


「クリスティアナの眷属?」と、つい聞いてしまった。


「お前はクリスティアナの眷属だろう?」


「‥‥‥‥‥‥」わからないから答えなかった。


「ここまで刃向かうとは、お前、わしにやられたいのか? 可愛いウルフをこんなにしやがって」


「ウルフが可愛い?」と、つい言ってしまった。


「そうだ」


「ここでウルフを連れて行ってもらっては困る」


俺はウルフを取り戻すことにした、しかも気傷でなければならない。


しかし創造神ナサニエルは、肩に抱え上げたウルフを空中に放った。


俺は何がしたいのか、わからなくて動きが一瞬遅れてしまった。


空中に投げ出されたウルフの体は、創造神ナサニエルが手刀で一刀両断にしてしまった。


俺は唖然としてしまった。


なんだ、この行動力は?


予想もしない動きに俺は動くことができなかった。


千切れたウルフの体からはドス黒い魔力が、血のように次々と出てくる。


これが目的か?


「少し、やりすぎたな、お前」


俺が唖然として動けないのをいいことに創造神ナサニエルは、俺に手刀で切り掛かってきた。


俺は以前、ナサニエルに手刀でやられている。


俺は、ナサニエルが動き出すと同時に気を取り戻して基礎魔法を強固にする。


神にどれだけの力があるかわからないが、基礎魔法がどこまで対処できるのかわからないけど展開してみた。


強固になった基礎魔法は、聖属性の光を帯びている。意識しなくてもできている。


俺が近づくとウルフから漏れ出たドス黒い魔力は、基礎魔法を浴びて霧散していき、もう完全にウルフは何も残っていない。


「うわっ、なんだ、その光は、先ほどとは違う光だ」と突進が止まった。


神ナサニエルでも、聖属性魔法は嫌いみたいだ。


俺は基礎魔法と聖属性魔法をより強くして歩き出す。


ゆっくりとナサニエルに近づいていく。


神ナサニエルは、後ずさりしていく。


手で顔を覆って後ずさる神に対して、俺は歩みを止めない。


聖属性魔法が嫌いだということは、創造神ナサニエルにもドス黒い魔力が流れいるのか?


どうして神が、そんなものに侵されているのか?


この世界には創造神ナサニエルと宇宙神アラスターと生命の神クリスティアナの3人しかいない。


その3人の中でも宇宙神アラスターは、宇宙を維持している、そして星などを作るのが創造神ナサニエルの役目だ、生命の神クリスティアナは作られたものに生命を与えることで、すべて成り立っている。


その一角が崩れると大変なことになるんじゃないのか?


本当なら俺の聖属性魔法なんて、苦手意識もないと思うし後ずさりするようなこともないと思われるが悪に染まってしまったナサニエルには、どう感じているのか?


俺が近づけば近づくほどナサニエルは後ずさりして下がっていく。


片手では目の部分を覆っているが、左手は、俺の方に突き出している。


「寄るな‥‥来るな」とナサニエル


俺はナサニエルが言ってることには従わないで近づいていく、もう目と鼻の先まで近づいてナサニエルの手が光にあたり煙が出る。


「うわっ」と言いながら突き出した手を手元に戻す。


手を庇いながら、ナサニエルは後ろに下がる。


しかし下がりながら煙が出た指先をみたら治ってきている。


ナサニエルは後ろに下がりなりながら何か伺っているのか?


油断はできない。


と思った瞬間、ナサニエルが消えた。


ナサニエルがいた場所は、今は何もない。


「‥‥‥」


あ〜、よかった、神殺しになるところだった。


俺は全方位に気を配りながらメンバーの元に戻ったが、もう魔族は残っていなかった。


なので全員が俺を見ていた。


「えっ、どうしたの?」と俺


ソフィアが「今、神がいる‥‥‥」と放心状態。


「うん、そうだね、神がいたけど、消えたね」と俺


ソフィアが「ううん、違う、今もいる」と俺の方を見ている。


「えっ、俺のこと?」


「うん」とソフィア、


他のメンバーを見渡すと、全員がうん、うんとうなずいている。


他から俺のことをみたら、そう見えたのかな?



ソフィア視点


クリスが、1000年前から急に戻ってきて、私たちの闘いに参加してくれた。


魔族が100体以上とウルフがいるから助かった。


クリスが来た時には半数の魔族を倒したけど、あと半数の方が厄介だった、いくら周りから魔力を集めていても動けば消耗するから。


徐々にみんなに疲労が見えた頃にクリスが戻ってきて魔力を回復してくれた。


助かった。


クリスは宿敵のウルフに対することにして、他の魔族は私たちが担当することになった。


回復してくれたクリスには感謝することしかできないけど、後の戦いは簡単だった。


でもクリスがゴルフを結界魔法で覆ったことは驚いた。


結界魔法を貼ると言う事は、中にいる人を守るためだ。


一瞬でも、えっ?と思ってしまった。


しかし、もう1人の男が現れウルフを真っ二つにきてしまった。


そのウルフの体からドス黒いものが出てきた。


それを出さないためにクリスは、結界魔法で覆ったのか!


やっとわかった。


でも、クリスは、ウルフの体内にもドス黒い魔力があるということを、どこで知ったのかな?


戦いの最中だったのに。


それからクリスが、すごかった。


みんなも目を大きく見張るほど驚いてしまった。


口も開いたままだったことに気がついた。


最後に現れた男が消えたあと、クリスの体から光と圧力みたいなものを感じた。


これは魔法じゃない、クリス自身のものだ。


まるでクリスが神になったみたいな感じがした。


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