第337話 魂

俺はウルフを見つけはしたが、今、考えている。


俺としては、できるだけ、ウルフを殺したくはない。


仮に、数年後か、数十年後か、わからないが復活できるとしてもだ。


殺したくないのは、神獣の仲間でもあるからだ。


でも、奴は、潜入していた国で、人を数十人、殺してる。


ウルフが、元に戻ってくれるなら、許すことはできないけど、戦うことはしたくない、しかし、奴が、誰かに騙されたわけでもなく、自分意思で人を殺めているなら話は別だ。


俺を殺した奴に逆らえなくて、やっているなら、また、違った意味がある。


しかし、俺が死ぬ間際に見た感じでは、そうではないと思う。


たぶん、俺を殺した奴の方が上と思うけど、奴も怯えているような感じがなかったから。


ということは、奴を殺しても、いつかは、また、復活してしまう。


その時には俺もいないかも知れない。


俺がいなくなった後に、奴が殺戮をすることも考えられる。


神レイチェルが以前、俺に言っていたことがある。


神獣たちは作られた魂だと。


作られた魂はいいけど、その魂がある限りは、復活すると。


じゃ、魂を消滅させることができないだろうか?


「魂の消滅か」


たぶん勇者クラスでは難しいことだろう、というか、不可能だと思う。


しかし、俺の称号は3つある。今は勇者の称号はないけど、レイチェルは、俺は勇者でもあると。


でも、どうして勇者の称号が消えたんだろう。


勇者の次の段階が神なのかな?


今は俺は、オーリス王国の借りている部屋でテーブルに座って考えている。


俺がテーブルに肘をついて、ほとんど、動かないから、俺に話しかける人はいない。


たまたま、俺の目の前に、音も立てずにコーヒーカップが差し出されたから気がついた。


「あっ、ありがとう」俺は差し出してくれた人の顔を見ずにお礼を言った。


「なんだか、深刻に考えているのね」


「あっ、アリシアかぁ」


「クリス、すごく深刻そうにしているよ」


「うん。ちょっとね」


「何よ、私にも話せないことなの?」


「そうだね、ウルフのことを考えていたんだよ」


「そ、そうなんだ」


「ウルフの魂を滅却できないかと思って」


「えっ、そんなことができるの?」


「だから考え中だって」


「あっ、そうか、ごめんね」


「いや、いいんだよ、俺もウルフのことには、同情している節もあるから、奴だけが人を殺す役目をしているわけだろう。そんな仕事ばかりしていると精神がおかしくなるよ」


「うん、そうだね、可愛そうだけど、もう正常じゃないんだよね」


「うん、神獣は、神レイチェルに造られているから、半分は神なのにね」


「あれ、神レイチェルは神獣を作れるのか?、命を与えるのは、別の神がすると、レイチェルが言っていたような」


えーと、確か、生命の神クリスティアナだったかな。


宇宙を維持するのは宇宙神アラスターで、星を作るのが創造神ナサニエル、そして生命を与えるのが生命の神クリスティアナと言っていた。


生命の神クリスティアナだけが、女性で、あとは男性二人。


しかし、神獣は、生命の神クリスティアナから神の僕として従えるから、作って命を与えることが許されているのかな?


じゃ、ウルフを滅却することは、レイチェルの依頼だけでいいんだろうか?


でも、それに滅却のような魔法を使うことができるのか?


レイチェルができたことなんだから、俺にも神獣を作ることができるのか?


これ以上、仲間を増やすことは控えたいので造らないけど。


神レイチェルが作った、魂の滅却かぁ





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