第327話 大公国の戴冠式準備7

差し出してくれたのはアリシアだった。


「あれ、いつの間に上がってきたの」


「もう、クリスったら、あれから2時間も経っているんだよ」


「えっ、そうなの?」


「もう、今日は早く寝なきゃだめよ」


「うん、わかったよ」


そう言ってアリシアは部屋から出て行った。


俺はアリシアが入れてくれた紅茶を飲みながら、さらに考えている。


どんなに頑固に結界魔法を張っていようと、結界のある空間はサーチでも通りにくいと思うので、サーチが通りにくいところを探せば、そこには結界魔法が張られていると言うことだ。


しかし空間の中にいると言うことを考えれば、空間は、どこに存在するんだ。


かなり前に研究した時には、空間は異次元に存在すると結論づけたはずだ。


というのは、どんなに大きく空間を作っても、現生では存在しない。


現世で存在しないもの。


それを、どうやって見つける?


第一に異次元なんて、存在するのか?


いや、現生にないということであれば、違う世界にしかありえない。


違う世界?


しかも人が干渉できない世界。


以前、俺がもらった屋敷の一つで、庭にあった小さな小屋に空間の魔法陣があった。


俺は、それに魔法力を注いで反応させて、空間に中に転移した‥‥‥


俺は次元のどこかに飛ばされてしまったので、魔方陣があった部屋には、俺を、どんなに探しても見つかることができなかった。


本当に次元が違うと言うところがあるのか?


次元とはなんだ?


以前、読んだ小説に、この世界は、一つじゃないって書いてあったな。


俺は、空間を作り出して、中に入ってみた、俺が殺されてから、初めて作る空間の部屋だ。


いま、 作ったばかりだから、何もない長方形の空間をイメージして作った。


そういえば今、思いついたけど、俺は俺のいる世界だけに繋げようとしていた。


入り口を開けて作るときに、開ける場所をイメージしていた。


例えば、今いる空間から、アリシアのベッドの横に入り口を開けてしまえば、アリシアの横に出ることも可能だ。


なるほど、自分の意思次第ということか?


では、どうイメージする?


何をイメージする?


空か? 宇宙か?


いや、違う、俺が、イメージしなければならないのは別次元だ


そんなものじゃない。


現生ではないところ。


「う〜ん、難しいな」


俺にはアルベルトとしての前世の記憶があるけど、時間的に言っても、たぶん、300年は経っているはずだ。


その300年間の間、俺の記憶は、どこにあったんだ?


もしアルベルトの記憶がなかったら、俺は覚醒していない。


300年の間に、どこかに因子があったから、今のクリスの体の中にいたわけだし。


300年間のあいだアルベルトの記憶があったところが異次元か?


異次元とは、異なる次元と書く。


異なるということは、もう一つあると言うことになる。もしかしたら、一つじゃない可能性もあるけど。


それをイメージしてやってみるか!


もしかしたら戻れなくなる可能性もある。


どうしようか?


「う〜ん」


俺はステータスを確認してみると、勇者としての称号はなくなっているけど、神の称号と救世主の称号は残っている。


神だったら、やれるんじゃない?


そう思ってみたけど、そこには空気があるのか?


もしかしたら空気がない世界?‥‥かもしれないぞ。


じゃ、俺の結界魔法で空気が漏れないように覆ってしまって、その中に空気を入れておけば、少しの間だったら、大丈夫じゃないかな?

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