第312話 勇者じゃなくなった(前半)

俺は、ベットの上で目が覚めた。


おれっ、俺、確かしんだんじゃ??


ここは天国? それとも地獄、または、その中間なのか??


昔、村の年寄りにきいたけど、死んだら、地獄か、天国にいくのを選別されるところがあるって聞いたのを、覚えている。




手を動かそうとしたけど、手が重たくて動かない。


指も動かす事が出来たけど、動きにくい。


頭も上げて起きようとしたけど、動かない‥‥‥


少しずつ、指を動かしてみると、指が動かせるようになって、強張りが取れてきたみたいだけど、俺の指を触っている温かいものを感じる。


足を動かそうとして、腹が痛むかと思ったけど、痛みはなかった。


やっとゆっくりと顔を動かすことができるようになって、横をむくとアデルがいた。


アデルは、見た目で見て10歳くらいだから、小さい体をベットに上半身を伏せて寝ていた。


俺の指を握って寝ているようだ。


俺はアデルを起こさないように、ベットでじっとしていた。


俺は、考えていた、俺の作った空間は、間違いなく、完璧だった。


神だからと言って、容易く入れる空間じゃないはずだ。


でも神だから入れるのかな?


話を組み立てていくと、ウルフと対峙した時に、俺はウルフが金縛りを解いたと考えたけど、解いたのは現れたレイチェルなのか?


そのあとで神レイチェルが現れ、俺を刺した。



俺はウルフを殺すことができなければ空間に封印しておこうと考えてもいた。


たぶん、ウルフを封印しておくことは可能だろうと思うけど、あの現れた神レイチェルが力を使えば、空間を破ることは可能だろう。


俺も、まさか神レイチェルが敵に回るとは考えていなかった。


神レイチェルであれば、俺の作った空間に入ることができるのか?


あれほど厳重にしていた空間に、神だからと言って入れるとは考えにくい。


じゃなければ、神レイチェルが、いくら俺が勇者だからと言って頼むのはおかしい。


自分の支配下に置いしてた神獣が暴走したら、自分で対処しているはずだし。


だって自分のコントロール化の神獣だよ、当然だけど、俺に頼むのはおかしい。


ウルフの奴を空間に入れて置けるのか、という問題もあるし、空間が維持できていれば問題ないだろうけど、俺の死後、どれだけの維持ができるか、わからない。


奴の方が長生きだから、いつかは、空間を破って出てくるだろう。


しかも、ウルフを殺せるか、わからない。


以前、奴は自暴自派になり自分から火口に入って死んだと言っていた。


その場合だけ、神獣は命をたつことができると。


しかし、死んでいられるのは、数年から数百年か、数千年の間。


つまり魂から滅却しない限りは、繰り返し生き返る。


あつ、そうか、魂の滅却ができれば、神獣を滅ぼすことができるのか?


でも、そんなことが魔法で可能なのか?



以前、ジャネットが言っていたけど、神獣を殺すことは、今まではなかったので、わからないと言っていた。


つまり不死のウルフを殺すこと俺ができるのか?


問題は、どこだ


不死の奴と戦うというのは、簡単なことじゃない。


俺が神レイチェルに違和感を抱いたのは、前は俺が貸した上着を着て姿を見せていたことだ。


でも、現れた神レイチェルは上着を着ていなかった。


エロ神に戻っていた。


ということは、熱くて着ていなかったのか??


いや、季節は、そんなに変わっていない、逆に冷えてきているくらいだ。


そういえば神レイチェルは女性だ。たぶん‥‥‥


俺を殺した神レイチェルの声は男だった。


神レイチェルが男ような声を出す必要もない。


誰かの変装か??


しかし神レイチェルの手刀で俺は、殺されたけど、あの時の黒いモヤみたいなものは、俺の体に毒のようなものを残している。


このままじゃ、ヤバイな。



まだ、体内に黒いモヤを感じるので、俺は聖魔法を使って、黒いモヤを減らすことができるか、やってみる。


たぶん、この黒いモヤは、俺の体内に残っていると、俺の体を蝕んでいくと思う。


俺は最高レベルの聖魔法を行使してみた。


そうすると今まで感じていた、黒いモヤが完全に俺の体からなくなってきた。


俺の体をサーチしてみると、完全に黒いモヤは無くなっている。


これで体が楽になってきた。


と思ったところで、アデルが目を覚ました。


「あっ、ご主人さま」


俺は、声を出そうとしたが、声が出ない


「ご主人さま、 しゃべれなければ念話でお願い」


”俺は、どうして、ここにいる?”


「うん、私が隠密にすぐれているのは、知っているでしょ」


”うん”


「ご主人さまが空間を利用することは、なんとなくわかっていたの」


「だから、前、一緒に入った時に、出なかったんだ」


”えっ、そうなの?”


「‥‥‥ご主人さま、今は、話よりも体を休めて」


アデルが涙を流し始めた。


”うん、わかった”


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