第110話 ネックレス

戦争を起こそうとしていた帝都を見学して、大丈夫そうだと言うのを確認してから、俺は帝都のお土産を買って自宅に戻ってきた。


お土産と言うのは、買ってきてあげる方は喜んでくれるだろうなぁと思って買うんだけど、実際にもらってきた人はそうでもない場合はあり得る。


渡してから、どんな顔するかで、本当にプレゼントしてよかったものかと言うことがわかる。

もらってから喜んでいても、気に入らないものは使わないから。

本当に人と言うのは気に入ったものしか身に付けない。


普段からも、つけていると言う事は、とても気に入っていると言う事。

プレゼントをもらった人といる時だけ、その人がいるから、つけているだけであり仕方なく。



パーティーメンバーの女の子4人は、このプレゼントでどういう表情をするだろう。


喜んでくれるといいな‥、

もらってくれるといいな‥、

と思って内心ドキドキして帰ってきた。


全員で同じ場で渡すと、他人が喜ぶところを見て、自分もそういう顔をする場合もあるので、それぞれの部屋に行って渡そうと思う。


もちろん特別と思われると勘違いされるので、全員に買ってきたと言ってから渡そうと思う。


勘違いされると困るから!

俺は瞬間転移で自分の部屋にちゃんと帰ってきたよ。


そして、まずは目上のソフィアから渡すことにする。

ソフィアの部屋の前にいて、コンコンとドアをノックする。


ソフィアが出てきてドアを開けてくれる、


そして顔だけ出して、「アルベルトが来るなんて珍しい」と言われたが、そういえば考えてみたら、初めてのような気がした。


ソフィアは、ドアを大きく開けてくれて、「まぁ、どうぞ」と言ってくれた。


俺は女性の部屋に長居する事はしたくないので、扉の内側まで入って、「女性たち全員にお土産を買ってきたんで、プレゼント」


と言って青いサファイヤのネックレスが入った箱を渡した。


「気に入ってくれるといいんだけどな」と言うと


ソフィアが箱を開けて、「うわーぁ」と言って早速、自分の首にネックレスをはめていた。


あまりネックレスなんかしたところ見たとこがなかったんだけど、なんだかネックレスを、はめにくそうにしていたので、俺が後ろに回ってつけてあげた。


「鏡で見てごらん、とても似合うよ」と俺は言って鏡のソフィアを前に進めた。


鏡の前でネックレスをはめた自分を見て、ソフィアは顔を赤らめていた。


「気に入った?」と一応聞いてみると、「アルベルト、本当にありがと」と言ってくれた。


女性の部屋にあまり長居をすると、良いことはないので、次の部屋に行くと告げて出る。


本当にプレゼントと言うことを強調しておきたいからね。


次に行くのはコリンの部屋

コリンの部屋の前にいて俺はドアをノックする。

ドアをノックするとドアが大きく開いた、「あ、なんだアルベルトなんだ」


コリンの部屋に来るのも初めてだった。

「様子を見に帝都まで行ってきたんだ、そのお土産。」


全員に買ってきたから遠慮なくもらって欲しいんだけど、と言ってネックレスが入った箱を差し出した。


コリンは箱を開けて中の青いエメラルドのネックレスを見ている。一瞬で表情がわかるくらい嬉しそうだ。

なのでコリンも買ってきて良かったと思った。


コリンもネックレス、はめたことがなかったので、首の後ろでネックレスをはめようとしたけど、できなかったので俺が後ろに回ってネックレスをはめてあげた。


「コリンに買ってきたネックレスも、宝石をコリンに似合う色にしたんだよ。」ネックレスをはめた自分の姿を鏡に映して見ていた。


コリンにも喜ばれたみたいだ。


じゃぁ俺はイザベラのところにも行くねと言って部屋から出た。

問題はイザベラだ。

俺はイザベラの部屋のドアをノックした。

そうすると、すぐにドアを開けてイザベラが顔を出した。


「あっなんだ、アルベルトなんだ。私の部屋で来るなんて初めてじゃない?」と言われたので「うん…」と言っておいた。


あまり多く言うと怖いから。


でイザベラにも帝都で買ってきた赤いルビーのネックレスを全員にプレゼントしているところだと告げて、ネックレスが入った箱を受け取ってもらった。


何も言われないうちに、さっさと部屋から出てきた。




そして最後の最後に、アリシアの部屋に行った。


アリシアの部屋をコンコンとドアを叩くと、なぜかすぐに出てこない。

あれ、いないのかな?

と思っていると後ろから、「クリス.どうしたのと声をかけられた」


濡れた髪を拭きながらきたので、お風呂に行っていたみたいだ。


先にアリシアが部屋の扉を開けて中に入って「クリス、どうぞ」と言ってくれた。

「帝都に様子を見に行ったんだけど、その時にお土産を買ってきたんだ」

俺はネックレスが入った箱を差し出した。


アリシアが何が入っているんだろうと言う感じで箱を受け取って開いてみた。

箱を開いてみると、きれいなネックレスがありキラキラ輝くダイヤモンドが輝いていた。


箱を開けダイヤモンドが輝いたネックレスを見て、「クリス、ありがとう」と言って首に抱きついてきた。


その時にアリシアからお風呂上がりの石鹸のいい匂いがした。

最高だねと心の中で思った。

本当にお風呂上がりの髪の匂いと体から漂う石鹸の匂いはいいね。


アリシアは、ネックレスを入った箱を大事そうにテーブルの上に置いて、ネックレスだけを取り出してはめようとする。


そうすると、なかなかうまくはめることができない。


なのでイザベラ以外の女の子3人にしたように後ろに回ってネックレスをはめてあげる。


お風呂上がりで髪を少し持ち上げてネックレスをはめてもらおうとするアリシアが可愛く見える。


そして、自分の胸元に輝くダイヤモンドの光を鏡に映している。


鏡に向かってネックレスをした自分を見ているが、そこで後ろから近づいて髪飾りをはめてあげた。

「私ネックレスをしたことなんて初めてなの」


あとは髪飾りも差し出してみる

「髪飾り、気に入ってくれた?」と俺は聞いてみた。

「うん、とっても、かわいいもの、これもクリスが選んだの?」

「うん、どうだよ、アリシアには、かわいいのが似合うなと思って選んだんだよ」


「クリス、本当にありがとう」と言って鏡を見ている。

本当にうれしそうでよかった。

まだ鏡を見ているアリシアを、見ながら俺は部屋を出て行った。

……

そして自分の部屋に帰った途端、バタンッと大きな音を立てて扉が開いた。

立っていたのはアリシアだった。

「もう、クリスったら帰るの早いよ、本当にネックレスと髪飾りをもらっていいの?」


「うん、アリシアのために買ってきたんだよ、気に入って使ってくれればいいなと思って」


「もちろん、気に入ったわよ、クリスから、もらった初めてのプレゼントだもの」と言われた、


あれ初めてだっけ?

そういえば、そんな気もするな?


今までは、木の下に落ちている、どんぐりだったり、その辺に咲いている花だったり、川に落ちている綺麗な石だったりは、送った?ことがあると思ったんだけど。


子供だったし、田舎だったし、お金もなかったし。

そういうのはプレゼントとは言わないのかな?

俺はプレゼントのつもりだったんだけど!


アリシアはネックレスと髪飾りをはめて、浮かれながて、鼻歌を歌いながら俺の部屋から出て行って、自分の部屋に戻っていったドアの音が響いた。

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