第102話 帰還 2

帝国から帰ってきて、アリシアの部屋に転移してしまってアリシアから臭いと言われたのがショックで俺は気を失った。

アリシアに臭いと言われたのはショックだけど、本当は疲労で倒れたんだけど。


三日間、目が覚めなかった。

三日目にやっと目が覚めたら天井を見て、ここはどこだ?


俺の部屋でもない!

寝ていたところから起きようとした途端、扉が開いてアリシアが入ってきた。


俺が寝ていた部屋はアリシアの部屋だった。

思い出してみるとアリシアの部屋で意識がなくなったんだった。


俺は三日間、混沌とした睡眠を取ったが、まだ寝たりない感じがあった。

あまりにも多くの転移を繰り返し、精神魔法を使ったせいだと思う。


だから、あんまり熟睡感がない。

アリシアが部屋に入ってくると「あっ、やっと起きたね」と言って俺に近づいてきた。


俺が気を失って倒れた時にアリシアの部屋にいたので、俺の部屋に寝かせることを考えたそうだが、自分の部屋に寝かせることにしたそうだ。


悪臭がする俺を自分の部屋に置いてくれていたんだと思うと、ちょっと感動。


「クリス気分はどう」


「うん、だいぶ良くなった」


「お腹、減っているでしょう、すぐに持ってくるね」


慌ててアリシアは食堂に走っていった。


食堂に走っていくアリシアを見送りながら、しばらくぼーっとしているとソフィアとコリンとイザベラが中に入ってきた。


「あっ、起きてる、起きてる」とイザベラが言った。


「もう、大変だったんだからね」と、さらにイザベラが告げた。


ソフィアが「アリシアが、私のところに急に来て、『クリスが倒れたって』、言い出したのよ。」


「アルベルトなら、まだ帰ってないでしょ?」って言ったんだけど。


「ううん、帰ってきているの、急いで来てよ」て言うんだもの。 そして強引に私の手をとって、自分の部屋に連れていかれたの。そしたらアルベルトが床で倒れているんじゃない!

もうびっくりしたわよ。

しかも、すごい匂いがするし」


ソフィアは、ことの顛末を話してくれる。


このまま床に寝かせておくのも、なんだから、どうするってアリシアに聞いたら、ここに寝かせてって、自分のベットを指したのよ。こんな悪臭がする人を自分のベッドに寝かせるなんてと、一瞬、思ったんだけどね。それからずっとアリシアが看病してるのよ、あの子に感謝してよね。


「もう、アルベルトったら、無理ばかりするんだから。」ソフィアが俺の、ほっぺたをつねって言った。


そこに食堂からアリシアが戻ってきて、「クリス起きれる?」と言ったので俺は起きてみるけど、体に力が入らない。


起きようとしたけど、起きられなかったので、それを見たアリシアが、俺が寝ているベッドにお盆を置いてくれた。


お盆を膝の上に置き換えて、さいわい手は動かすことができたので、俺は自分で、ゆっくり食べ始める。

あまり急いで食べれないけど、少しずつでも食べなければ。


そんな俺を、ニヤニヤした目で見ていたソフィアとコリンとイザベラは、お大事にと言って出て行った。

3人がいなくなると「クリス、もし食べづらかったら、私がやってあげようか」

俺は本当に手を動かすのも、やっとだったので、アリシアに甘えることにした。


アリシアが食べ物が乗ったスプーンを持って、「あ〜ん」と、俺の口の前までスプーンを持ってきた。

恥ずかしかったけど口を開いて食べさせてもらった。


食事が終わったけど、シーツも毛布も汚れてしまったので、今度新しいの買ってくるからといって、もう少し寝かせてもらうことになった。


俺はもう2日、寝込んでしまった。


そして目が覚めたら元気になっていた。


元気になったら、アリシアがお風呂に入って、と言ったのでお風呂に入ってきれいになってきた。


その間、アリシアは、窓を開けて自分の部屋をきれいにしていた。

汚れた毛布とシーツは洗濯する。

俺は申し訳ないので、執事のセバスチャンを呼んで、新しいシーツと毛布を買ってきてもらった。



俺は体が元気になってきたので、説明をしなければいけないと思った。


帝国から、いつの間にか帰ってきてアリシアの部屋にいるし、こんなんじゃ怪しまれるから、いっそのこと全員に、『絶対に話さないで、秘密だから』と言って話そうかと思う。


俺は全員に話す前に、最初にアリシアだけに話したほうがいいような感じがしたので、アリシアに地下2階に来てもらった。


自分が、この1カ月間に何をしてきたのかだ…。

地下2階の部屋に来て、アリシアが持ってきてくれた、ポットから紅茶が注がれたカップを2つ作った。


アリシアに話し始める。


帝国との戦争が近づいていると言うのは知っているよね。


アリシアは、うん とうなずいた。


・・・・俺は、戦争を止めてきた!


アリシアは驚いた顔をしている・・・。


当然だろうなと俺は思っている。


それだけのことを やらかした。


そして、さらに話し始める。


帝国軍の軍勢は、総勢33,500人ぐらいだったんだ。


そして前衛部隊が500人で、違うところにも3000人いて、本隊は30,000人以上いたと思う。


3カ所に分かれた軍隊を無力化しなければいけない。


そこで俺は考えたんだ、どうやって無力化することができるか、どうやって帝国へ帰すことができるか。


そして自分が持っていたパンを食べようとしていて気がついたんだ、食料がなくなれば帝国へ帰ってくれるんじゃないかと。


そう思って俺は動き出したんだけど、途中で弾薬も奪えばいいと思ったんだ。

そしてアリシアは、俺が転移魔法を使えることを知っているよね。


アリシアが首を縦に振る。

そして空間魔法で異空間収納を持っているのも知っているよね。


そこでもアリシアは首を縦に振る。


だから奪った食料と弾薬を収納してしまえばいいと思ったんだ。

そうすると大砲なんて撃てないから。


さらに、腹ぺこで戦わなきゃいけない意味は、誰だって知っているでしょ。


これは多分、知らないと思うけど、俺は透明化の魔法も使えるんだ。

だから透明化の魔法で自分が消えて目に見えないようにして、食料や弾薬が入ったテントに忍び込んで異空間収納に物資を入れていったんだ。


他の離れた部隊が気づかないうちに急いで食料や弾薬を奪ったんだ。


時間が経てば経つほど、知らせが行き、警戒が厳しくなるからね。

すべての部隊を回り終えたのが、1時間くらいだったと思うけど。


アリシアは横で真剣な顔をして聞いている。


弾薬や食料を奪ったから、戦争ができない状態になったと思うけど確認するためにも、しばらく戦場に留まらなければいけなかったんだ。


そこまで話して、俺は紅茶を1口飲んだ。


そしてアリシアの顔を見る。


アリシアの顔を見ると、俺が帝国で、大変なことをしていたと言うことがわかったようだ。


アリシアに、「だから、たぶん、戦争は起きないと思う。このオーリス王国は戦争になることはないと思う」


しばらくアリシアは黙っていた。


俺はアリシアが何を思っているのか、わからなかったので心臓が早鐘を打つようにドキドキした。


沈黙の時間ほど 長く感じるものはない。


… … …


「今度も、クリスに助けてもらったんだね。私だけじゃなく、この街全ての人、そしてシャーロット姫も…」


「うん、そうだね」


多分、帝国では誰にも見つかっていないし、知られる事は無いと思うんだ、でも急に屋敷に帰ってきたわけでもないのに、アリシアの部屋にいたでしょ、だからみんな不思議がっていると思うんだよね、それで全員に話そうかと思うんだ。


「ごめんね、アリシア」


「あまりにも君の笑顔が見たくて、強く願ったらアリシアの部屋に転移してしまった」

アリシアは、俺の方を、すごい勢いで振り向いた。

「ううん、クリス、私、うれしい」とアリシアは目に涙をいっぱいためて言った。

アリシアは俺の手を握ってきた。

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