第92話 朝の三谷くん

 理科室2は、とっても入りにくくなってしまったので、始業前に三谷くんと写真部がある美術室で落ち合うことになっていた。そして幸太朗と一緒に現れた三谷くんは大体事情を知らされたらしく、怒っていた。


「誰が、誰が、俺が盗撮したって言ったんですか!!」


写真部の机と決めているらしい暗室横の机にドカッと座ると。悲劇的に頭を抱えながらそう言った。


「その誰が分からんのだがな。」


と答えつつ、例の脅迫状の写真を見せたりして三谷くんの質問に答える形で補足説明をした。


「この脅迫状からしても盗撮犯が幸太朗や三谷くんでは無いと犯人は知っているのではないかと。」


「確かに。俺たちが盗撮犯なら、そう言って脅しにくれば良いよな。」


「しかし、いかんせん、時間が無いのだ。幸太朗は濡れ衣を着たく無いと言うし、三谷くんはどうしたい?」


「チア部と話したいです。」


「チア部は可愛い子達だから気持ちは分かる。」


思わず同意すると、顔を真っ赤にさせて三谷くんが、


「チア部なら目撃情報があるかと思ってだ。ギリギリ期限まで粘ってからどうするか考えたいんだ。でも、濡れ衣は着るつもりはないよ。科学部が大変なのは分かるけど。」


可愛いさが目当てでは無いと言外ににじませる努力が伝わる。うんうんよくわかる。


「よしよし。手配してあげよう。」


うなづきながらスマホを取り出すととりあえず、細田に連絡をとばした。


『チア部手配』


『ラジャー』


「放課後、うーん。犯人に動きがバレたくないから、幸太朗のうちで良いかの?」


「へっ?」


三谷くんは幸太朗を見上げた。幸太朗はちょっと嫌そうな顔をしたけど、


「母さんに連絡する。何時?」


「四時半かの。チア部は私が引率していこう。男子は幸太朗頼む。」


「ん。」


話はまとまった。久しぶりに幸太朗のうちで美味しいお茶でも頂くとするか。


「手土産。幸太朗のお母様はまだ、お団子が好きかの?」


「永遠に好きだろ。」


「オッケー。科学部の会計から出ないかな〜。」






 

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飼い犬はサイコパス 柴チョコ雅 @sibachoko8

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