第52話:戴冠・マリア視点
「余はここで祖先の霊に対して誓う。
祖霊に恥ずかしくない王となる事を。
アウレリウス・ヴェネツィア王家の初代当主としてこの国を導いていく事を」
父上様が多くの家臣を前に王位に就く事を宣言されました。
フランク王国に遠征している貴族以外は、全貴族が当主と後継者を連れて、この宣言の場に同席しています。
これで父上様は、ウフィディウス・ロマリオ王家が支配していた領地だけでなく、エドアルドお義兄様が攻め取られた、半ば独立していた国内有力貴族家の領地とドイル連合王国から奪われた領地までの広大な土地を支配されます。
そのため、今までの公都ではなくヴェネツィアを王都するのです。
「わたくしは祖先の霊に対して誓います。
祖霊に恥ずかしくない王妃である事を。
夫であるフェデリコ国王陛下の治世を手助けする事を。
娘であるマリア王太女殿下に恙なく王位を継がせる事を」
母上も多くの家臣を前に王妃としての役割を宣言されました。
自分の地位は夫であるフェデリコ国王陛下を手助けするだけの立場である事を。
王位継承権の第二位は、王妃である母上ではなく、王太女である私である事を。
同族から嫁いできたとはいえ、本家の出身ではなく母上の王位継承権は低いと言う事を、はっきりと宣言されたのです。
次はわたくしの番です。
「わたくしは祖先の霊に対して誓います。
祖霊に恥ずかしくない王太女である事を。
父であるフェデリコ国王陛下の治世を手助ける事を。
フェデリコ国王陛下の次代を担う立派な女王になる事を。
新たにアウレリウス・ジェノバ公王となったエドアルドを王配に迎え、次代を継ぐべき子を儲ける事を」
赤くなる事も、言葉を詰まらせる事もなく、一気に言い切る事ができました。
ですが、なかなか心臓が静まってくれません。
自分からエドアルドお義兄様にプロポーズするのですから、顔が赤くなるのも心臓が高鳴るのも当然です。
ですが、これは、わたくしが望んでいたプロポーズではありません。
わたくしがずっと夢見ていたのは、エドアルドお義兄様にプロポーズをして頂く事でしたのに、とても哀しいです。
エドアルドお義兄様が素直に父上の提案を受け入れてくださり、自ら切り取られて全ての領地の占有と軍功を誇って王位についてくださっていたら、公太女であったわたくしは、エドアルドお義兄様にプロポーズして頂けたのです。
父上様やわたくしを常に立ててくださるエドアルドお義兄様が、主家を押しのけるような事や、蔑ろにするような事を絶対になされない事は、重々承知しているのですが、乙女心は寂しく思ってしまいます。
「私は祖霊とフェデリコ国王陛下とマリア王太女殿下に誓います。
フェデリコ国王陛下とマリア王太女殿下に恥ずかしくない公王である事を。
フェデリコ国王陛下とマリア王太女殿下の家臣としての分を弁える事を。
フェデリコ国王陛下とマリア王太女殿下の治世を手助けする事を。
アウレリウス・ジェノバ公王としてフェデリコ国王陛下に恥ずかしくない治世を行う事を。
マリア王太女殿下の婿として、次代を継ぐべき立派な後継者を育てる事を」
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