第14話:戦略会議
「わたくし、国王陛下とは結婚したくありません」
お嬢様が珍しくキッパリと自分の気持ちを口にされた。
公爵令嬢として、王太子の婚約者として、政治的な配慮から断言する事を極力控えられていたのに、今回だけはどうしても嫌なのだろう。
普通に考えたら、同年代の婚約者から理不尽な婚約破棄を衆人環視のなかで言われた後に、婚約者の父親からプロポーズされて受けられるはずがない。
それが例え一国の命運をかけた政略結婚であろうとだ。
「分かっているよ、マリア、私も最初から結婚させる気はない。
だが、公王として政治的に検討しなければいけないのだ。
私の気持ちとは別に、公王として考えなければいけない。
公王として結婚させた方がよい場合でも、父として反対ならば、公国の不利益をできるだけ少なくする、代わりの策を用意しなければいけないからね」
「分かっております、公王陛下。
私も公爵令嬢や王太子の婚約者として、マリア個人としては嫌な事でも、政治的に受け入れてきましたから、父上の気持ちは分かっております。
ですが、それでも、今回の国王との結婚だけは絶対に嫌です」
「分かっている、マリアの本心は痛いほどわかっている。
その本心を抑えて、嫌々王太子の婚約者になってくれた事、心から感謝しているし、申し訳なかったとも思っている。
公王となった以上、もうあのような思いをさせる気はない。
ただ、マリアの想いを叶えられるかどうかは、エドアルド次第だが」
公爵閣下、いえ、公王陛下、そんな意味深な事を口にしないでください。
俺だって朴念仁ではないので、お嬢様の気持ちくらい分かっています。
自分が漢としてとても魅力的だと言うのも分かっています。
これまでも、ベッドに誘われた令嬢や夫人の数は百や二百ではすみません。
情報収集のために応じた事も数限りなくあります。
王侯貴族が政略結婚とは別に、真実の愛を愛人に求める事も、情報収集のために愛人を選ぶ事も知っていますし、実行してきました。
ですが公王陛下、それは塵芥のような令嬢や夫人の話です。
お嬢様のような気高い方に、そんな事は絶対にさせられません。
お嬢様の評判に僅かでも汚れた所があってはいけないのです。
家臣として、義理とはいえ兄として、絶対に認められないのです。
その代わりとはとうてい言えませんが、お嬢様の嫌う事は絶対にさせません。
「お嬢様の名誉と評判を汚すような事はさせられません。
元婚約者の父親と結婚などさせられません。
ちょうどいい事に、国王と王太子が対立しています。
国王に対しては、お嬢様と公王家に恥をかかせた王太子をわざと逃がしたと正式な使者を送り、王自ら王太子を討伐しなければ開戦すると伝えさせます。
王太子に対しては、お嬢様と公王家に恥をかかせた事を理由に、宣戦布告の使者を送ろうと思っています」
「私はそのような事を言いたいのではないのだが、分かっていてはぐらかしているのだろうから、もうこれ以上は何も言うまい。
その代わり、エドアルドにも政略結婚に加わってもらうからな。
各国の王女や旧力貴族の令嬢と、婚約を前提に会ってもらうからな」
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