第33話 ポートモレスビー炎上
最初の1発はポートモレスビーの陸軍飛行場のど真ん中に命中した。
命中した瞬間、滑走路に張り巡らされていた鉄板が引き裂かれ、その下の土が盛大に盛り上がり、大地が大きく隆起した。巨弾の直撃によって抉られた大地は圧巻そのものであり、南太平洋にグランドキャニオンのミニチュア版が出現したかのようだった。
約10秒後、海岸線に再び発射炎が閃き6発の巨弾が飛翔してくる。まだ砲撃が始まって間もないということもあって射撃精度は良好なものではなかったが、それでも1発が飛行場側の弾火薬庫に直撃した。
弾火薬庫がとてつもない光量の光を発し、周りを照らし出し、巨弾を放っている2隻の戦艦の姿をもおぼろげに映し出す。
巨弾が立て続けに飛んできている中、滑走路では飛行場要員の手によって健全な機体が次々に掩体壕・防空壕に運ばれていたが、その努力も虚しいものに終わった。
このタイミングで射撃を開始した駆逐艦による5インチ程度と思われる砲弾が、ハボック1機の燃料タンクを刺し貫き、そこから怒濤の勢いで延焼、誘爆が始まった。瞬く間に拡大した火災は機体・飛行場設備・人間などを一切区別することなく全てを貪欲に飲み込んでいき、飛行場は混乱の境地に叩き込まれようとしていた。
ポートモレスビーの海岸線から反撃の砲声が轟く。
万が一の時のために設置されていた砲台が次々に火を噴いたのだ。
「やれ! やっちまえ!!!」
「何とかしてくれ! 頼んだぞ!!」
「1秒でも早く敵艦隊を退けてくれ!」
その光景を見ていた者が銘々の声で叫んだが、その声援が絶望に取って変わられるまでに対した時を必要としなかった。
敵戦艦2隻の射撃目標が飛行場から沿岸砲台に切り替わり、1基、また1基と砲台が順繰りに叩き潰され始めたのだ。
沿岸砲台はものの5分で全てが沈黙し、飛行場向けて砲塔が旋回し、これまでのものとは比較にならないような轟音が大気を震わせた。
先程までの射撃で諸元を得て、砲塔毎の射撃から斉射に移行したのだ。
今度は陸軍飛行場の敷地内に5発がいちどきに命中し、さっき命中した場所とほとんど同じ場所に命中した砲弾は深さ20メートル、幅40メートルもの大穴を作り出す。米軍の設営隊はブルドーザーなどの設備の導入によって作業効率を高めてはいたが、その設営隊を持ってしてもこの穴を塞ぐには2週間以上かかると思われた。
ラバウルの飛行場から長距離爆撃を仕掛けてくる
「取りあえず飛行場要員は健全な機体を安全な場所に移動することに全力を挙げろ! 手隙要員は砲撃終了次第、消火活動開始だ!」
「ハワイの太平洋艦隊司令部に今の状況を報告せよ! 『敵戦艦2隻を伴う水上砲戦部隊がポートモレスビーを砲撃中』とな!」
ポートモレスビーの陸軍飛行場の指揮官に任ぜられているジェレマイア陸軍中将は何やら必死に各方面に命令を飛ばしていたが、ジェレマイアの命の灯が消えたのはその直後であった。
司令部が設けられている建物の3階部分に砲弾の1発が命中し、ジェレマイアを始めとする司令部要員を全て押しつぶしたのだ。
これでポートモレスビーの陸軍飛行場は完全に人事不省の状態に陥ってしまい、急拡大している被害も相まって混乱の収拾がもはや不可能になった。
陸軍飛行場を粗方破壊し終えた事を確認した戦艦2隻は今度は海軍飛行場がある方向に砲門を向け始めた。
ポートモレスビーには海軍飛行場が2カ所存在していたが、日本軍はそのどちらをも叩き潰そうとしているのだろう。
陸軍飛行場が海軍飛行場の一時的な盾になった感じとなり、そのおかげで飛行機の避難はある程度完了していたが、残された滑走路と付帯設備は敵戦艦の巨弾による破壊の嵐を免れる事はできなかった。
一部の米軍機によって決死の夜間攻撃が行われたが、元々が夜間訓練用の機体ではない上に夜間訓練を殆どしていないかったため、戦果を挙げることはできなかった。
30分後には海軍飛行場もボコボコの荒れ地と化した陸軍飛行場の後を追うこととなり、米軍はポートモレスビーの上空及び南太平洋の制空権を完全に失ったのだった。
ポートモレスビーからは何十条もの火災煙が高度数千メートルの高さまで立ち昇っており、火災が昼間のような明るさで周囲の海面を照らしていた。
重油・ガソリンタンクから垂れ流された大量の油は一部が火災によって燃え上がっていたが、そのほとんどが海面に垂れ流し状態となり、南太平洋の流水を大いに犯していた。
ポートモレスビーの米軍が大打撃を受け、その復旧に数ヶ月単位の時間がかかることは誰の目から見ても明らかであった。
そして、敵戦艦1番艦から1本の電文がGF司令部に向けて送られた。
「我ポートモレスビーの米軍飛行場の完全破壊に成功せり。作戦目標を達成」と・・・
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第4章終了です。
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霊凰より
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