第61話 特殊な好み

 とても頭が痛かった。


 ナグジョダ星の人間たちは、好戦的すぎたのだ。

 手の施しようがなかったので、仕方なく最終手段を使った。


 今は新しい人間たちが、男女仲良く幸せそうに暮らしている。


 めでたし、めでたし、おしまい。


 見事なまでのハッピーエンドで、素晴らしいということにしておきましょう。



 その後、また管理する星を変更することになったのよ。


 今度は、ミミモケという星を管理するのことになったのよ。

 コーンカツ星とよく似ている星で、人間も住んでいるわ。

 文明レベルは、かなり高いみたいよ。


 他の詳しい情報は、天使たちが調査中よ。


 さて、今度はどんな星なのでしょうね。



「神様ー!」


 マイケルが来たようね。


「神様!変態ッスよ!」


 変態!?


 誰が!?


 私は変態ではないわよ!?


「いきなり何を言っているの!?」


「この星の人間たちのことッス!変な好みをしていますよ!」


「変な好み?どんなものなの?」


「動物の耳や尻尾を生やしていたり、皮膚の色が青とか紫が良いとか言い出したり、角が生えていると良いとか言ってます!」


「そ、そうなの。変わった人間たちね」


 ちなみに、この星には普通の容姿の人間しかいないのよ。


「そんな好みをしているせいで少子化になっています!絶滅の危機ッスよ!」


「な、なんだってーーー!!!」


 変態で少子化で絶滅の危機!?

 字面がひどすぎる!?


「今の人間たちは、自分の好みの人間を作り出すための研究に打ち込んでいます」


「そのせいで恋愛も結婚せずに、少子化になっているわけね」


「そうッスよ。詳しくは報告書を読んでください」


「分かったわ。ありがとう」


 この星も面倒なことになっているわね。

 頭が痛くなってきたわ。


 とりあえず、報告書を読みましょうか。


 この星の人間たちは、特殊な部分のある人間を好んでいる。


 原因は、そのような姿の人間が描かれたイラストが流行ったこと。

 そのせいで普通の人間では満足できなくなった。


 そのイラストが報告書にも載っているわね。


 人間に猫の耳と尻尾が付いている人間。

 手が鳥の羽のようになっていて、足が鳥の足のようになっている人間。

 人間の上半身に蛇の下半身がくっ付いている人間。

 全身が水色の人間。


 などが描かれている。


 なるほど。

 人間たちは、こういうのを求めているのね。

 続きを読みましょう。


 この星には、人間たちが望むような人間はいない。


 そのため、自らが作り出そうと思い研究を始めた。

 ただ失敗続きで、完成の目途は立っていない。


 人間たちの生活に必要なものは、すべて機械化されている。

 よって、研究に集中できる。


 というより、研究に集中するために用意した。

 この事から、景気が悪くなるようなことはない。


 人間たちの、ものすごい執念を感じるわ。


 男女の仲が悪いわけではない。

 恋愛の対象にはならないというだけである。


 ミミモケ破壊爆弾は存在してない。

 技術力から考えると作り出すことは可能。


 少子化以外の目立った社会問題はない。


 なるほどね。

 問題は人間たちの、あの趣味だけか。



 次は、人間の世界も見てみましょうか。


 報告通り、みんな研究に打ち込んでいるようね。


 うっ!


 これはひどい。

 というか、すごい。


 みんな狂気をはらんだ目をしてるわね。

 情熱があふれすぎていて、恐ろしさを感じるわ。


 マイケルに変態呼ばわりされるわけね。

 研究内容がアレだし。


 でも、それだけ真剣なのでしょうね。

 研究内容はアレだけど。



 さて、今回の問題をどのように解決しましょうか?


 私の神の力で、人間たちの好みの人間を作り出してみましょうか?

 でも、人間たちはみんな一生懸命に研究しているし、邪魔をするのも、どうなのかなとも思ってしまう。


 ここは神(見習い)として、人間を信じて見守るべきなの?


 それとも、なんとか好みを変えさせるべき?

 でも、あんな目をしている人間たちが、そう簡単に変わるとは思えない。

 神の力を使って、強引に変えようとしたら、抵抗されて体が爆発しそうね。

 これはちょっと止めた方が、良いかもしれないわね。


 変態どもは、さっさと最終手段で処分しちゃおうか?

 流石に、それはちょっとひどいかな?



 というわけで、私が好みの人間を作るか、信じて見守るの二択になったわね。

 どちらにしましょうか?


 私としては絶滅を回避できれば、どちらでも良いのだけど、どうしましょう?


 うーん。

 迷うわね。


 もう少し様子を見て、決めましょうか。



 次の日。

 人間たちは鬼気迫る表情で研究をしている。


 ものすごい執念ね。

 やっていることはアレだけど。


 決めたわ。

 ここは人間を見守ることにしましょう。


 こんなに真剣な人間たちを、神の都合で邪魔するのは良くない気がするわ。

 どんな結果になるのか分からないけど、信じて見守りましょう。


 最悪な事態になっても、人間たちに後悔はないでしょうからね。

 その場合は、神の力で生まれ変わらせて上げましょう。



 次の瞬間。

 人間は全滅した。


 突然、大爆発が起こったからである。



「信じて見守っていたら、爆発が起こった!?」


 どういうことなの!?

 なんで爆発したの!?


「神様!爆発の原因が分かりました!!」


「なんなの!?」


「実験中の事故ッスね」


「じ、事故!?」


 私が信じて見守っていた結果がコレなの!?


 爆発オチなの!?


 おのれ!人間どもめ!!


 こうなったら、自棄酒よ!!

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