第59話 激しい争いの後

 頭が痛い。

 また上司にぶん殴られて、研修期間が延長になってしまった。


 ヨーゲン星は上司の神の力で元通りになった。


 スーパー恐怖の超大魔王美少女・キョフラホーちゃんについては、上司も把握していないらしい。

 神でも分からないとか、いったい何者なの?

 謎すぎるわね。


 そして、また管理する星を変更することになったのよ。


 今度は、ナグジョダという星を管理するのことになったのよ。

 コーンカツ星とよく似ている星で、人間も住んでいるわ。

 文明レベルも同じくらいよ。


 他の詳しい情報は、天使たちが調査中よ。


 さて、ここはどんなことが起こるのやら。



「神様ー!」


 マイケルがやって来たみたいね。


「神様!報告します!!」


「ええ」


「人間が少子化で絶滅しそうッス!!」


「な、なんだってーーー!!!」


 久しぶりの少子化問題なの!?


「それで原因は何!?」


「少し前に人間の世界の景気が悪い時期がありました。その時に、みんなストレスがたまって、恋人とケンカになってしまいました」


「ケンカに?それで?」


「その時に恋人同士で、激しい殴り合いと罵り合いになって、双方ともに恋愛にトラウマができてしまったみたいッス」


「ええー!?」


 恋人同士で殴り合いと罵り合いって……


 ちょっと野蛮すぎない!?


「しかも、恋人がいなかった人間たちも、それを見てトラウマになってしまいました」


「そ、そんなバカな!?」


 そんなに怖かったの!?


 天使たちを近付かせないようにしないと。

 またストライキになってしまうわ。


「それが尾を引いていて、少子化になってきているわけッス」


「なるほどね」


「これが報告書になります」


「ありがとう」


 なんというか、とんでもない状況ね。


 とりあえず、報告書を読みましょうか。


 男女の仲が最悪ということ以外は普通の星ね。


 後はナグジョダ破壊爆弾はないようね。

 そこまでの軍事技術はないみたい。


 今の景気は少し回復して、良くも悪くもないくらいか。

 ただ、このまま少子化が続けば、どんどん悪くなると思う。


 今のうちに手を打たないといけないようね。


 さて、どうしましょうか?


 うーん。

 何も思い付かないわね。


 こういう時は調べてみましょうか。


 恋愛のトラウマを治す方法は、と……


 え?


 時間の経過が癒してくれる!?

 放っておくのが良い!?


 そうなの!?


 なんだ意外と簡単なのね。


 では、放っておきましょう。


 いや、待てよ。

 放っておくというのは、何だか冷たい気がする。


 もっと良い言い方があるような気がする。


 ええーと……


 人間たちを信じて見守ることにしましょう。


 これね!


 うん、実に神っぽいわ!!

 素晴らしい表現よ!


 神(見習い)である、私にふさわしいわ!


 では、さっそく実行しましょう!



 約百年後。

 人間は絶滅することになる。


 トラウマは、いずれは治ることになる。


 だが、それは数十年後のことである。

 当然ながら、人間たちは子供を生めない年齢になっている。


 人間たちのトラウマは、それほど根深いものだったのだ。


 何もしなくても、どうにかなるほど、この世は甘くはなかった。



「といっても、何もやることがないのだけどね」


 のんびりと人間たちの観察をしましょうか。


 それにしても暇ね。

 すぐに結果が出るようなものではないからね。


 今日はもう終わりにして、飲みに行っちゃおうかな?



 むむ!?

 こ、これは殺気!?


 ということは、失敗なの!?


 なんで!?


 資料に書いてあった事を実行しただけなのに!?


 ま、まさか、これはウソなの!?

 だまされたの!?


 そんなことを考えていると、いつの間にか私のそばに、いつもの鬼がいた。


 あぁ、神(上司)よ。

 今回は資料のミスのようなので、減刑をお願いします。


 殴られるのは、もうトラウマになっているので勘弁してください。

 お願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る