第二〇話「TDLを満喫したけど、いつもの二人だった」
楽しい時間は過ぎるのが早い。辺りが暗くなってくると、周りは愛を語り合うカップルばかりになっていた。
「真央、疲れてない? 大丈夫?」
「ちょっと疲れた・・・」
ワールドバザールの前のベンチに並んで座る。
「何か食べる?」
「う〜ん。いらない・・・」
「なんか、あっという間だったね」
「うん。いっぱい話せて楽しかった」
ひらめは、周りでしっぽりとするカップルを観察する。夢の国では現実世界では恥ずかしくて、できないことを平気でしている。見ているこっちが照れる。しばらく、観察を続けていたが、どのカップルも常識の範囲内でしか、愛を語りあっていない。
「じゃ行くか」
「・・・」
ひらめがベンチを立ち、歩き出す。その手を後ろから真央が握る。
「どうした?」
「ねえ、ひらめ。ちょっとだけお願いがあるんだけど・・・いい?」
「何?」
「最後にギュッとして・・・」
ひらめが真央の方に目線を向けると上目づかいで見上げている。
(かわいい・・・)
「お願い・・・」
「うん」
「・・・」
「・・・」
ひらめが真央をハグする。
周りの目を気にしないで、抱き合えるのもディズニーランドが夢の国だからだ。
しばらくすると真央が、ハグしているひらめを突き飛ばした。
「ありがと。よし。お土産、買って帰ろう」
「あれ、真央さん?」
さっきまでの真央ではなく、会社仕様の真央になっている。
(今日だけは、恋人同士じゃなかった?)
「真央さん、今日は恋人ということで、僕の中心が熱く硬く大きくなってしまったので処・・・」
「変態っ! 行くよ」
つまらないと思っていた社会人生活も悪くない。こんな小さな幸せの積み重ねで灰色の人生が彩られていくんだと思う。
夢の国から現実の社会に戻る。また明日から仕事が待っている。
(真央を振り向かせたい・・・)
ひらめは、ガラにもなく、真央に惚れてしまったのかもしれない。今まで知り合った娘たちとは違った感情を抱き始めている。
前を歩く真央が振り返って、ひらめの方を見る。
「ねえ。早く帰ろう」
「うん」
前を歩く小さな背中に勇気づけられてる気がする。
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