第一〇話「はじめての飲み会の理由を語る」

「だから、初めてのとき、真央をあの店に連れて行ったのか・・・」


真央が思い出したようにつぶやく。


「この娘は遊び慣れていないな。真面目な話をされたら嫌だな。って思ってた。案の定、重かったし・・・」

「・・・」


「どうせ飲みに行くならあの店はベストな選択なんだよ。俺のホームだし、友達の友達は、みな友達みたいなお店だから、真央さんと会話をしなくても、どうにかなる計算があった。真央さんの態度も観察できたし、ママやチーママにも報告が出来たし・・・」

「・・・思い通りだったってこと?」


「でも、楽しかったでしょ? 想定してなかったから、ちょっと雑だったけど・・・」

「うん、楽しかった」


「そこが重要。こちらの思い通りに行動してもらっているんだから、不快な思いをさせない。それが『ひらめの美学』なんてね」


「なんか、ムカつく・・・」

「ここだけの話だからね。こんなこと考えているなんて思われたらカッコ悪いでしょ? さりげなく、気づかれないようにやらないとね」


「本当に計算高くてズルいよね」

「・・・」


ひらめは、これまでの人生で多くの失敗を重ね、同じ失敗をしないように吟味し、改善、行動することでしか、成功する確率は上げられないと知った。結局、『人生は運次第』で効率よく成功するための確率を上げるのが努力。そして、そのためには計算ずくで行動するのが当たり前だと思っている。


だから、欲望や感情、本音を見せず、建前の自分を作っている。そこに気づかれると照れる。


「話は変わるんだけど、今週末にクルマ来るんだ。どっか行こうよ」

「本当に買ったんだ・・・。ひらめくんには計画性ってものがないのかね?」


「行こう。ドライブ。箱根とか、富士五湖だって日帰りできるよ。もうすぐ夏だし、湘南で海水浴とかもいいかも。真央さんのビキニ姿・・・」

「真央はビキニなんて着ません。変な妄想しないでくれる?」


「真央さん、スタイル良さそうだから似合うと思うんだけどなぁ。もったいない」


ひらめは、マジマジと真央の身体を観察する。


「エロい目で見るなっ!」


「はははは。わりとスタイルいいよね。着痩せするタイプ?」

「変態っ!」


(照れる真央さんは、本当にかわいい・・・)


「それはそうと、真央さんとは夜の街でしか会ってないでしょ? 太陽の下で健全なデートしようよ。最初からお泊まりは無理として、ドライブなら問題ないでしょ? 真央さんとなら会話に困ることもないし、楽しい気がする」

「うん・・・」


「行こうよ」

「うん、行こう。どこ行く?」


「真央さん、ディズニーランドとか好き?」

「好きだよ。でも・・・」


「じゃ、ディズニーランドにしよう!」


「ディズニーランドかあ。最近、行ってないから行きたいなあ」

「じゃ、ちょうどいいじゃん。行こうよ」


「ディズニーランドは行きたいけど、ひらめとか・・・」

「行こうよ」


「ひらめとか・・・。ちょっと考えさせて・・・」

「・・・うん」


「よし。帰ろう」

「うん」

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