241日目 遥かなる大砂海(3)

 まずは目に付いた採集ポイントを虱潰しに回っていく。


 一番手に入りやすいのは、何と言っても【砂】だね。最近は採取可能なものが見つかりやすいよう視界に採集ポイントのアイコンを表示してるんだけど、ここから入手できるアイテムの内九割は砂である。


 ガラスを作るのに必要な素材のようで【工芸家】や【大工】にとっては結構要りようなのかな。大量に採取できる大袋系アイテムを使って、沢山集めていく人も見受けられる。

 でも私は今のところそんなに使う予定ないんだよな。採集作業をしているとインベントリが砂でぱんぱんになってしまって、結局捨てるしかなくなってしまう。


 ディルカちゃんが喜びそうな食べ物系素材は、【スズシロサボテン】っていう白いサボテンに、【アロエ】、【ククミス】っていうとげとげのメロンみたいな果物が見つかったよ。


 ディルカは器具や設備がなくても簡単な調理ができる【野外調理】スキルを持ってるんだけど、これらの素材を用いて【砂漠のサラダ】っていう料理を作ってくれた。

 この料理アイテム、一定時間フィールドギミック[日射]と[酷暑]を無効化してくれるので結構助かってる。

 日射は長い時間該当する場所――――大砂海では日向に当たるみたい――――にいると[無気力]状態になってしまうギミックで、酷暑は日射の[火傷]状態バージョンってかんじ。


 ここ大砂海では他にもフィールドギミックが[砂嵐]、[砂地]とてんこ盛りで、なかなか面倒臭かった。

 特に砂地は走るコマンドが使えないという効果で、あまりのかったるさに途中で装備買いに戻っちゃったよ。

 多分私のようなものぐさ冒険者がそこそこいるんだろう。スタート地点のセーフティエリアにて、フィールドに役立つアイテムを売ってるプレイヤーが必ずと言っていいほどいるものなんだ。


 ついでにギミック予防の料理アイテムも纏めて買っておこう。NPパーティメンバーは特装アイテムを変更することができないから、料理アイテムで対応してくしかないんだよね。

 因みにどんなアイテムにしても、こういうところでの買い物はお値段がとっても割高である。そうと知っていても買っちゃう、私のような無精者がいつの世にもいるからなんだろう。


 さらに言うと普通にショップで買うにしても、料理系アイテムって生産コストに対して高額だったりする。需要が大きいだけに足元見られがちってことらしい。

 今回みたいなNPパーティのバフ掛けを始め、キャラクターの好感度上げ、ディルカちゃん含む【超吸収ハイ・アブゾプション】持ちの食糧と、使う人にとってはめっちゃ使うアイテムだからね、食べ物系は。


 ゆえにきまくら。では金持ち度で言ったら【料理人】がカーストトップなんだとか。「金策するなら【料理】スキル取っとけ」って言われているほどである。


 料理アイテムであるという時点で既に吹っ掛けられているというのに、野外フィールドでの商売ということでさらに吹っ掛けられ、まったくこんな馬鹿高い商品買う人なんてどこにいるのかねえ。

 ええ、ここにいるんです、まあお金あるし別にいっかあって言い値で買っちゃうお馬鹿さんが。

 稼ぎがあっても貯金のないタイプの人の思考回路を学べる、きまくら。は社会勉強に適したゲームでもあるのですね、はい。


 敵対幻獣への対応は今のところは問題ない。

 炎属性と地属性持ち、それと甲殻系の[耐久]が固いのが多いかな。ディルカちゃんに食べ物投げて水若しくは氷属性のスキル放ってもらう、且つコナー氏の【猪突盲進】でごりごりいくのが定石化しつつある。


 猪突盲進は、対象の防御系バフを無効化してダメージを与えるスキルである。

 サソリの幻獣【スコッピノ】とか二足歩行のカニっぽい幻獣【サバクガニ】とか、防御強化のめんどくさい技使ってくるからねえ。丁度いいのだ。


 でももう一人のいつメンことミコト君は、今回あんまり活躍させてあげられていない。

 彼も対幻獣においてはコナーと同じゴリ押し脳筋タイプなんだけど、このエリアの敵対モブは通常ダメージが入りにくいものが多いのだ。

 且つフィールドが障害物のあまりない見晴らしのよい場所なので、彼お得意の身軽で素早い動きもあまり刺さらず。横のみならず縦の空間も広く使える密林みたいな場所だと、彼めっちゃ強いんだけどねー。


 まあハンタータイプのミコト君がいるから、幻獣のドロップアイテムをより多く入手できるっていうのはある。

 にしても次回は別のハンターキャラにお願いするのが吉かな。弓を使えるアンゼローラお姉様とか。

 あとオアシスがあるので、ヴィティちゃん連れて来て水中探索してもらうのもいいね~。


 そうこうしている内に、他にもこんなアイテムが集まったよ。



【ルーナピエーナリーリエ】

月の光に反応して咲く花。食べると[耐久]が回復する。[月見酒]の主原料として珍重されている。

代表的な使用法:調薬


【レクスの砂】

キャメレオンのねぐらに生成される砂。ガラスの強度を上げるのに利用できそうだ。

代表的な使用法:工芸


【エレファンスピラ】

ネジマキゾウの牙。薬から工芸品、アクセサリーまで、幅広い用途で利用できそうだ。“再生”の象徴。

代表的な使用法:工芸


【シカミダチョウの卵殻】

細かくカットして加工すれば、アクセサリービーズとして使えそうだ。“俊足”の象徴。

代表的な使用法:細工



 レクスの砂とエレファンスピラは、それぞれキャメレオンとネジマキゾウに【おねだり】アタックすることにより貰えたよ。

 アイテム説明が『利用できそうだ』、『使えそうだ』などと曖昧な表記のものが多いのは、ここが未開拓地域であることに由縁しているみたい。つまりここで採れる素材も、まだまだ未知なるものが多いってこと。

 こういったアイテムは各国の職業クランや研究機関が欲しており、納品クエストが多く出されている。ギルドでも買い取り強化が行われてるんだって。


 よしよし、インベントリも砂以外のものがちゃんと充実してきたし、採集仕事はこの辺にしておくかな。

 あともう一つこのエリアにおいて気になっているのは、廃墟に紛れつつ存在している生活感ある建物。

 いや、厳密に言えば建物だけではない。時には申し訳程度に簡素なテントが張られていたり、あるいは忘れ物が放置されているかのごとく荷物や収納用のチェストが纏めて置き去りにされていたり。

 そういうところに近付こうとすると、得てしてこんなダイアログが表示されるのだ。



【[XXXX]の占有拠点】

この区画は[XXXX]さんにより占有されているため、中に入ることができないようです。

→・入場許可を申請する

 ・何もしない



 『[]』の中に入るのはプレイヤーネームだったり、時にはクランネームだったり。そしてメッセージに示されている通り、この表示が出るとそれ以上先には進めなくなる。

 そう、ご想像の通り、ここ秘境エリアは遠征フィールドにも拘わらず、プレイヤーが自分専用の拠点ホームを持つことが可能なのだ。そして占有した区画は他プレイヤーが入れないようにもできる。



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