第46話 浅野昴、初(セカンド)チューに滾る
「あの、これ、メリークリスマスです」
電気をつけて昴がテーブルに戻ってくると、沙綾はテーブルの下からゴソゴソと赤い包装紙に緑のリボンのかかった箱を取り出した。
「ありがとう、開けていい? ……キーケースだ! 大切にするよ。これは俺から、メリークリスマス」
箱の中身は皮の手触りの良いキーケースで、ブランド物ではないが質の良い物のようだった。今までプレゼントは嫌ってほど貰ってきたが、どんなに高いプレゼントよりも嬉しかった。
沙綾にも喜んで欲しいという気持ちで、沙綾の為に悩んで選んだプレゼントを沙綾に渡した。
シルバーの花のついたネックレスは、実は約束した値段を少しオーバーしてしまったのだが、そのことは沙綾には内緒だ。
沙綾はプレゼントを開けると、うっとりとネックレスを見つめた。どうやら気に入って貰えたようだ。
「……可愛い」
「俺がつけたい。いい? 」
沙綾が頷くと、昴は沙綾の真横に移動した。沙綾が昴に背中を向けるようにすると、髪の毛を束ねられ持ってるように言い、束ね損ねた髪の毛を避けるように首筋を撫でた。白い首筋に思わず唇を寄せたくなったが、グッと我慢して沙綾の首にネックレスをつける。ネックレスが冷たかったのか、沙綾の肩がビクリと震え、その華奢な肩に欲情する気持ちを抑え込む。
「……はい、可愛い。石のついたの贈りたかったんだけど、金額が上限超えちゃうから無理だった」
「私はこれがいいです。ありが……」
沙綾が振り向き、思ったよりも昴の顔が近くにあったからか、顔を真っ赤にさせた。そして、その真っ赤な顔のままエイヤッと目をギュッと閉じた。胸の前でギュッと組まれた手が震えている。
何、これ?
無理してるのが丸わかり過ぎて、可愛過ぎるんだけど。
昴は安心させるように、さっきトナカイの鼻がついていた鼻の頭にキスをした。
「さっきはトナカイの鼻に邪魔されたからね」
沙綾は胸の前で握っていた手を解くと、眼鏡を外してテーブルに置き、膝立ちになり昴の肩に手を置いた。
エッ? 何? 何するんだ?
想像するに、眼鏡外して肩に手を置かれるとか、これはキスする前段階のように思われるが、大丈夫か? ちゃんと出来るんだろうか?
昴から行くと怖がられる気がして、昴はドキドキしながら沙綾のすることを凝視する。沙綾も目を見開いたままゆっくり昴に顔を寄せてきて……。
ムニッとした感触がして、沙綾の唇が昴の唇にくっついた。そのあまりの柔らかさに、唇を食んで舌を突っ込みたくなる衝動に抗いながら、沙綾の表情を一つも見落とさないように目を見開く。お互いに目を見開いた状態のキスは少し変かもしれないが、沙綾の表情に怯えがないことに安堵する。
「目……つぶらないものですか? 」
「つぶるなんてもったいない。五感で全部記憶しておきたいから」
正直な昴の感想であったが、沙綾が小さく微笑んで目をつぶったので、今度は昴から唇を寄せた。そのまま何度も触れて離れてとキスが繰り返す。最後に我慢できずに唇を食んでキスをし、名残惜しいようにリップ音をさせて昴は離れた。そして沙綾の肩に顔を埋めるようにしてハグする。
キスがこんなに温かくて気持ちいいなんて知らなかった。気持ちが溢れて涙が出そうになった。
「ヤバイ……滅茶苦茶幸せ」
沙綾も昴の背中に手を回してきてギュッとしてきた。
沙綾も幸せだと返されたようで、昴はもっとキスしたくなり肩から顔を上げた。
「……顔、真っ赤ですね」
「沙綾も。ってか、その顔反則」
「エッ? 変な顔になってます?!」
頬を引きつらせる沙綾の頬を撫で、力を抜かせる。トロンと昴を見上げる沙綾の表情は、今まで見たことがないくらい女の顔をしていた。
「色っぽ過ぎ。目が潤んで、ほっぺた赤くて、唇がしっとりしてて……、何度でもキスしたくなる。他の男の前で絶対にそんな顔しないで」
「しませんよ? まず、視線合わせられませんし。……ケーキ、切ってこないとです」
「あぁ、うん。そうだよね。でも……もう一回」
もう一回と言いつつ、昴は「可愛くて辛い」とつぶやきながら何度もキスをした。
どれくらいキスをしていたか、まだ舌は入れていないが、唇を食むキスには慣れたようで、沙綾もハムハムと返してくれるようになった。
もう、これが昴のスバル君に直撃する衝撃で、たかがキスだけで痛いくらい完全フル勃起とか、「童貞男子中学生かよ?!」 と、自分で自分に突っ込みを入れてしまう。いや、まぁ、抱きしめただけで反応するくらいだから、キスでこうなってしまうのはしょうがないのかもしれない。
というか、パンツが汚れる前に抜いてこないとマジ辛いかも。
「あー……ケーキ食べよっか」
「……うん……もう……少し」
異常に色っぽい!!!
もう、別人にしか見えないくらいの色気を纏った沙綾は、多分十人中六人くらいは美人だと言うかもしれない。
これって、心配しかないんだけど。
他の男が沙綾に言い寄る姿を想像し、昴はギュッと沙綾を抱き締めた。その際、滾ったスバル君が沙綾の腹に当たってしまっていたが、大好きな彼女との初(セカンド? )チューに反応してしまうのはしょうがないことと開き直る。別にゴリゴリ押し当てている訳じゃないから許して欲しい。
「あの……浅野……さん? 」
勿論沙綾も昴の状態に気がついたようで、モジモジとして身体を離そうとしている。動かれると出ちゃうから、ちょっと大人しくして欲しい。
「沙綾が色っぽいからね、こうなっちゃうのはしょうがないの。自然の摂理ってやつ」
「……ハァ? 」
「ケーキ溶けちゃうから食べよ。俺、ちょっとトイレ」
さっきの沙綾のトナカイ画像と、頭の中のチュー顔の沙綾がいれば即行抜けるだろう。
「えっと……はい」
沙綾はまだ昴の状態が気になるようだったが、昴が腕を緩めるとすぐにケーキを持ってキッチンへ向かい、昴はスマホ片手にトイレにこもった。
最速で欲を吐き出し、リビングに戻った時は料理は全て片付けられて、カットされたケーキだけがテーブルに乗っていた。
「あ、片付け全部やらせちゃってごめんね」
「いいえ。スマホ、持って行ってたんですか? 」
「うん? そう。だって、さっきのトナカイ沙綾が可愛過ぎて」
「私……ですか? 」
「うん、だって沙綾以外じゃ抜けないんだもん」
「抜け……」
「あ、スマホはロックかけてないから別に確認してもいいからね。変な画像なんか入ってないし、コソコソ浮気とかしてるってこともないから」
「それは疑ってません……けど……いいです。なんでもないです。ケーキ食べましょう」
二人並んでケーキを食べ、一緒にテレビを見て過ごした。いつもならさりげなく手を繋いだり、くっついたり、旋毛にキスしたりしていたが、ここは腰を抱き寄せてのキス一択になる。
昴が腰に回した手に少し力を入れて引き寄せるのがキスの合図となり、CMの度に昴は沙綾にキスをねだった。
最初は照れくさそうにしていた沙綾も、寝る前くらいになると、自分から唇を差し出すようになった。
前に初めて手を繋いだ時も思ったが、沙綾は人見知りでどちらかというと男性恐怖症なのかと思っていたが、さりげなさを装ってスキンシップをとると、かなり早い段階で順応するようになった。
多分だが、一般男性には警戒心の強い沙綾だが、一度気を許すとけっこう甘々でベタベタOKなタイプなのかもしれない。
自分だけがこんな沙綾を知っているんだと思うと、誰に自慢する訳じゃないが何やら誇らしい気分になる。
「明日も仕事だし、もう寝たほうがいいね」
「そうですね」
最後に長めのキスをして、昴は沙綾の部屋の前までついて行った。軽く頬にキスをして、「おやすみ」と沙綾を部屋へ入れる。
一緒に寝たい!
でもベッドでキスなんかしたら、確実に止まれない自信がある。
昴は自室に戻り、可愛らしい沙綾のキス顔を思い出して、滾るスバル君を慰めた。
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