詩人の猿


      腐った四肢

   牛食む蝿   針は回る

  肌を被れ     澱んだ息

凪いだ血潮       溢れた血を

  濁る目玉     穴を穿て

   三拍子の   髑髏払え

      胸をえぐる


石の猿よ!

末路告げてくれよ人の

果ては荒野切り拓かれ何も残らず

海の歌も枯れた

いた森に赤いバツを

カメラなどは鏡などは要りもしないわ


包み紙に吐いた地球

神も殺す体系には

代わりになる星があるの

バベルの図書館を抜けて


わたしたち群がる

──文学よ、万歳!

擦り減った歴史は

いつまでも這いまわる傷を膿を手垢を消そうとして消えやしない赤子のように


……Tarat Tara Taran Tara

Darad Dara Daran Rada……


石の猿よ!

わたし君を選んだのよ

花ではなく果実でなく醜い猿を

不老不死のお代

裂けた口は鳥に似てる

カーテンさえ仮面さえも恋しくなるわ


縫い直した今日の神話

竜を詰めた箱庭にも

泣いて笑う人がいるの

砂の嵐町を呑んで


営みを求める

リテラトゥラが見たい

継ぎ接ぎの地球儀

どこまでも追い立てる犬を時を老婆を消そうとして消えやしない責め苦のように


宇宙へと飛び立つ

人類の末裔

記憶を焼べながら

どこまでも逃れていく正義を美を真実を消そうとして消えやしない絵の具のように


      死者を孕む

   涙の慈悲   螺子の暦

  髪を浸せ     首が実る

全ての火は       二重の日を

  靴が踊る     筋を破れ

   円舞の曲   銅を賜え

      腑分けの家

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抒情小曲集 藤田桜 @24ta-sakura

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