第23話 甘い告白と花火

 特性パフェを目の前にすること数分。杏璃ちゃんは一瞬迷ったような表情を見せたが、すぐに笑顔に戻った。


「じゃあ、一緒に食べよ?」


 まじか!杏璃ちゃんそれは俺の心臓が持たない気がするんだけどっ。


 けど、言い出した杏璃ちゃんは自分のスプーンを手に取り、パフェに近づけた。けれども、その動きはわずかに止まり、彼女は少し恥ずかしそうにこちらを見た。


「ねえ、最初の一口……あーん、してもいい?」


「い゛!!」


 思わず変な声が出た。けど、してもらいたい!俺は自分の顔が赤くなっていることを自覚しながらも、その誘惑に抗えずこくんと頷いてしまった。


 杏璃ちゃんは嬉しそうに微笑んで、スプーンにたっぷりとパフェをすくい取り、それを俺の口元に差し出してくる。


「はい、あーんして!」


 俺は目を瞑りながらも口を開け、杏璃ちゃんがスプーンを運んでくれるのを待った。そうして、口に冷たく甘いはずのパフェが入ってくるが、緊張しすぎて正直味なんてわからなかった。


 けれど、一方の杏璃ちゃんは物凄く嬉しそうな顔で俺を見つめていた。そうして俺もど緊張の中杏璃ちゃんにも同じように一口食べたさせた後、二人で自然と顔を見合わせて笑い合った。


 なんだか、もうこれ以上何がおこっても乗り切れるような気分だった。


 そうしていつの間にか緊張は溶けていき、俺たちはリラックスした雰囲気の中で、パフェを一緒に楽しむようになっていた。


 杏璃ちゃんとの甘い時間が続く中、スイーツショップを出て、再びパーク内を歩いていた。日が暮れ、空がオレンジ色から深い青に変わり始める。パークの中心広場に到着すると、周りの人が何かを待ちわびている様子が見えた。


「どうやら、花火が始まるみたい」


 杏璃ちゃんが少し興奮気味に言った。


 俺は花火がよく見える場所を探し、地面に腰掛ける。空が完全に暗くなり、いよいよ花火が打ち上がり始めた。色とりどりの光が夜空に咲き乱れ、華やかな音が響く中、杏璃ちゃんが少しだけこちらに寄り添ってくるのを感じた。


「綺麗だね……」


 花火を見上げながら、杏璃ちゃんの横顔に目をやる。彼女の瞳は、花火の光を映し出してきらきらと輝いている。その表情は、いつもの明るさに加えて、どこか切なさも感じさせた。


「……今日は、本当に楽しかった」


 杏璃ちゃんが静かに呟く。


「俺も、杏璃ちゃんと一緒にいられてすごく嬉しかった」


 その言葉を聞くと、杏璃ちゃんはゆっくりとこちらを見つめ、少しだけ頬を染めたように見えた。


「ねえ……」


 杏璃ちゃんが小さな声で続ける。


「この花火が終わるまでに、どうしても伝えたいことがあるの」


 驚いて、何かを言おうとするが、彼女の真剣な表情に言葉が詰まってしまう。


「私……本当はずっと、翔ちゃんのことが好きだった。今日、改めてその気持ちが強くなったの……」


 杏璃ちゃんの瞳がこちらに強く注がれる。彼女が言葉を続ける前に、突然、最後の大きな花火が夜空に打ち上がる。色鮮やかな光が広がり、パーク全体を照らし出す中、杏璃ちゃんがそっと手を伸ばし、俺の頬に触れる。


「……ありがとう。私を好きになってくれて」


 そして、彼女はゆっくりと顔を近づけ、唇を重ねてくる。花火の音が消えるのと同時に、周りから歓声が上がる、けど俺にはただ、杏璃ちゃんの温かさと、自分の胸の高鳴りだけが響いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

好きな女の子に告白したら、私女の人が好きなのって振られたんだけど……諦めきれないので女装してみます。 @qooo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ