第230話 閑話─皇子と悪がき達
皇子とラウルの出会いは、7歳の頃。
先の皇帝の突然崩御で政権交代の波が吹き荒れた後、皇宮が落ち着きを取り戻した頃に、宰相ルーカスの手に引かれ皇子宮に(現在の皇太子宮)ラウルがやって来たのが最初である。
周りにいるのは大人達ばかりで、その大人達からは腫れ物を触る様に仕えられていた皇子様は、初めてやって来た同い年の子供にどう接したら良いか分からなかった。
しかし……
名前を紹介されるなりラウルは
「 アル!俺と友達になりたいなら俺の言う事を聞け! 」
……と、言って周りの大人達を慌てさせ、宰相からは頭にゲンコツを食らわされていた。
だけど……
皇子様は何だか嬉しかった。
アルと呼ばれた事も……
ラウルの頬っぺにバンソーコーが貼ってあったのも……
2人は良く遊んだ。
木登りや石蹴り、水遊び……
侍女達はオロオロしていたが、護衛騎士のクラウドは大概の事は黙って見ていてくれていた。
ある日、国防相のデニスと外相のイザークがエドガーとレオナルドを連れてきた。
初めて4人が揃った時だった。
エドガーは父親の陰に隠れる様な人見知りな子で、レオナルドは女の子みたいに髪を伸ばし何時も飄々とした子であった。
追い駆けっこをしたり、庭にあるブランコで立ちこぎをするのも皇子にとっては胸がときめく楽しい遊びだった。
人見知りだったエドガーは慣れて来たら一番荒かった。
従兄弟に教わったと言って、カエルのお尻の穴に藁を突っ込み腹を膨らませたり、トンボの胴体に糸を付けてグルグル回したり……兎に角クラウドに叱られる遊びをするのがエドガーであった。
不思議と気が合い喧嘩する事も無く、4人いればどんな遊びをしても楽しかった。
そんな彼等に
皇子が特別な存在だとはっきり認識する出来事が起きた。
ある日4人で遊んでいる時に賊に襲撃されたのだ。
それは一瞬だった。
賊達は直ぐにクラウドに切り捨てられたが、知らせを聞き駆け付けた親達は真っ先に皇子の側に行って彼を抱き抱えた。
子供である自分たちよりも皇子を抱き抱えたのである。
辺りは血だらけになったが、親達は抱いている皇子の目を手で覆いながら走り去って行った。
まるで自分達の息子がその場に居ないかの様に……
ショックだった……
誰もが立ち竦み震えながらクラウドが賊達を運ぶのを黙って見ていた。
その日の夜、各々が各々の親から、いかにアルが特別な存在であるかのを聞かされた。
アルベルト皇子は、お前達が命を賭してまでも守らねばならないお方である。
だから万一の時はお前達が盾になりなさい……と……
特にエドガーは騎士としての心得を厳しく教えられたのだった。
それからも……
4人は悪さをし、叱られ、勉強や武道を共に切磋琢磨をしながら成長し、今、未来の政治まで語る様な仲になっていた。
これからどんどんと成長していく彼等を、親達は目を細めて見ているのであった。
後にこの時の事を4人で話した時があった。
アルベルトは親達に抱えられ逃げる時に、残されている3人を見て情けなく思ったと言った。
せめて自分の身体は自分で守れる様にならなければと、剣術に本気で取り組む様になったと……
幼馴染みで友達であるのに彼等は主君と臣下なのである。
その微妙な距離を皇子は孤独に感じていた。
アルベルトにとって……
その孤独を埋める存在が、共に横に並んで歩いてくれる皇太子妃であるレティであるのは言うまでもない。
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本日も2話更新予定です。
なんか……書きたいことがワサワサ出て来て困っとります_(^^;)ゞ
暫くお付き合い下さい。
読んで頂き有り難うございます。
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