第157話 隣国からの留学生



レティが留学したのはローランド国である。

2年前に、アルベルトやラウル達の4人が1年近くも留学していた国で、春先から赤のローブの爺達10人が視察に行っている国でもある。


ローランド国は、かつてはシルフィード帝国が統治していた国でもあるので、国の形態もかなり似ているが、言語はシルフィード帝国のシルフィード語では無く、共通語であった。



レティは、赤のローブの爺達と連絡を取り合っていたので、この長期休暇を利用してローランド国に行くつもりでいたが、たまたま見た留学生募集の行き先がローランド国だったので、急遽学園の留学を利用して行く事に決めたのである。


両校の交換留学生は2年生限定で、交換留学の為に長期休暇の時期を、お互いに1ヶ月ずらしてあったから、ローランド国のアントニオ学園は、まだ長期休暇前であったので勿論授業があった。


レティ達留学生は、学園の留学生寮に入る事になる。

これは、レティ達のジラルド学園でも同じで、学園には留学生寮があるのである。






着いて直ぐに、アントニオ学園の学園長から歓迎の挨拶があった。


「 あっそうだ、2年前に、君達の皇子、今は皇太子殿下かな、アルベルト皇子も留学して来られて………」


学園長がアルベルトの話をし出した。


レティを横目で見ながら緊張が走る留学生達。

学園長は、延々とアルベルトの事を話した。

そして………終に………


「 近く、イニエスタ王国の王女と婚約するらしいじゃないか! いや~めでたい事だ、君達も嬉しかろう……」


あんな王女……嬉しか無い……

私の傷をえぐらないで……

早く終わってくれ……

レティを始め全員が、汗がたらたらと流れ出るのであった。




そんな気まずい雰囲気のまま、レティ達は留学生寮に案内され、部屋はバストイレ付きの1人部屋で、ベッドと机とクローゼットがあるだけの簡単な部屋だった。


2年前には、アルベルト達もこの寮に入った。

皇族だからといって特別扱いはしない、いや、寧ろ皇族だからこそ、自分で身の回りの事は自分で出来る様にする為の留学制度だった。


貴族付きの侍女や侍従は認められてはいなかったが……

ただ、皇子の場合は、護衛だけは特別に認められており、部屋もアルベルトの横に用意されていた。


留学する多くの貴族達は、この長期休暇期間中の留学を利用したが、アルベルト達は、特別に1年間の留学をしていたのであった。




女子寮の部屋に入り、窓を開け放ち、持って来ていたトランク1つの荷物はすぐに片付いた。

明日から、新しい学園生活が始まる……

レティは胸が高まるのであった。






翌日、学園の講堂に集められた学生達の前で、レティ達留学生の紹介をされた。

講堂がざわめいた……

学生達はレティの美しさにざわめいたのだった。


そして………令嬢らしくない肩までの髪。

ジラルド学園の制服を着ているレティは、2年生の棒タイの色に合わせて、黄色いヘアバンドをしていた。

快活そうな令嬢だと……レティの魅力をより際立たせていた。



生徒会代表から挨拶を受ける……

会長はこの国の第1王子、ウィリアム・レスタ・セイ・ローランド王子だった。


あら?私達と同じ学年の2年生なのに、もう生徒会の会長をしてるんだわ……



ローランド国のウィリアム王子はレティと同じ年齢であり、5歳下に第2王子がいて、国王である祖父が健在で、父親が王太子である。


因みに、昨年の立太子の礼や建国祭では、ウィリアム王子の父母である王太子殿下夫婦が出席をしていたのであった。





学園長が、スタッフに

「 じゃあ、今から学園内の案内をこの子達にしてくれるかな 」

「 あっ、案内は俺がするよ 」

「 王子…… でも………」


王子がレティを見つめていた。


「 初めまして、俺はこの国の王子、ウィリアム・レスタ・セイ・ローランドだ 」

茶色の柔らかそうな巻き毛で、瞳の色も茶色、

レティの王子の印象は、ぼんやりしてるだった。


それはそうだろう……

兄はレティとよく似た美形で、エドガーはキリリとした眉のハッキリした顔で、レオナルドは中性的な美しさで、アルベルトは金髪碧眼の、誰もが見惚れると言う希に見る美丈夫なのだから………

こんな人達を毎日近くで見ているレティは、誰が来てもへのへのもへじか、ぼんやりと薄い印象しか持てないのも仕方ない。




王子の登場は、皆に緊張が走った。


「 初めまして、1ヶ月間ですがお世話になります 」

レティは堂々と姿勢を正し、制服のスカートの裾を持ち丁寧にお辞儀をした。


「 流石、公爵令嬢だね、リティエラ・ラ・ウォリウォール嬢、宜しく、じゃあ行こうか…… 」

王子はレティにエスコートの手を差し出した。


はぁ?ふざけてるのかこの王子は?

「 いえ、ここは学園ですので、エスコートは結構ですわ 」


王子は一瞬驚いた顔をして……クックッと笑いながら先頭を歩きだした。


嫌だわこの王子………ジロジロ見てきて……

それに……

何で私の名前を知ってるのかしら?



レティは

王女も王子も……皇子も……もうたくさんだと思っていたのだった。







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