第139話 皇子様、苦戦する
レティが王女を気にするもんだから、アルベルトは仕方なく王女の側まで戻った。
だけど………
アルベルトは気が気じゃ無かった。
あれ?
レティが居ない………
さっきまでラウルと居たのに………
まさか………
不埒なオスが何処かへ連れ込んだのか………
「 ちょっと急用が………失礼! 」
王女が何か言っていたが、アルベルトはそれどころでは無かった。
真っ青になってレティを探した。
「 ラウル! レティは? 」
「 あれ? さっきまで居たのに………」
ラウルは、他の貴族達と熱心に話をしていた。
きっと何かをリサーチしてるのだろう………
彼の情報通は、流石未来の宰相だと思わせるものがある。
エドガーとレオナルドは、大人の女性達に囲まれていた。
今から、ダンスを踊るんだろう。
彼等は学園の女生徒とは踊らないが(学園で後々面倒な事になるので)、大人の女性達とは気軽に踊ったりしていた。
ダンスホールには居ない………
くそっ! 離れるんじゃ無かった……
「 レティ 」
「 レティ………何処だ? 」
ああ……居た………
レティは、軽食ルームでシェフと楽しげに笑っていた。
ホッとして、力が抜けた………
「 あっ、殿下 」
レティが俺に気が付くと………
シェフが、頭を下げた。
「 前に、忍び込んだのがバレちゃいました 」
レティが、恥ずかしそうな顔をしていた。
ああ……君はこんなにも可愛い………
「 殿下………あの時のメイドは公爵令嬢だったのですね 」
シェフが嬉しそうに話す。
「 殿下の濡れ衣が晴れましたね 」
「 ?……何の濡れ衣ですか? 」
レティは首を傾げた。
「 何でも無いよ、気にしないで……レティ、何か食べる? 」
アルベルトは、去年の晩餐会でのレティの不法侵入の事を、誰にも話すつもりは無かった。
「 はい 」
「 じゃあ、あーんして 」
「 殿下、自分で食べます 」
「 あーんは? 」
フォークで差した果物を、レティの口に持っていく……
パク………モグモグ……
ああ……可愛い……
アルベルトは
真ん丸い目をして、赤い唇を開け、パクとパクつくレティが可愛いくてたまらないのであった。
「 あっ、殿下、聖剣を使って、どうでしたか? 」
「 見てくれていた? 」
「 はい、弓兵の皆さんと見ておりました……」
アルベルトはせっせとレティの口に食べ物を運ぶ………
「 凄い威力でしたね 」
「 まさか、雷の魔力が聖剣に順応するとは思わなかったよ」
レティは、口元に差し出されるだけパクついて、モグモグしていた。
「 殿下の聖剣………素敵ですわ……」
レティは、ガーゴイルに向かって聖剣を振るうアルベルトを想像し、うっとりとしていた……
モグモグしながら………
レティ……俺はプロポーズをしたよね?
渾身の思いでしたプロポーズなのに
レティには、何ら響いていない様だとアルベルトはガッカリしていた。
遠慮がちだが、確かに皇太子妃になって欲しいと伝えたのに………
この娘の興味は………弓兵と聖剣だなんて……
「 殿下、☆*※×☆*※ 」
気が付くと、レティの口の中がいっぱいになっていた。
真ん丸い目をして、訴えて来るレティ。
ああ……可愛らしい……
このまま……
皇太子宮に連れて帰れたらどんなに良いか………
女性なら、誰もが欲する美丈夫である皇子様なのに、唯一欲っして欲しいレティには苦戦するのであった。
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