第117話 皇子様、狙われる
新学年が始まった。
ジラルド学園はクラス替えが無いので、慌ただしいのは1年生だけである。
そして………
皇子様が居るのだ………
在校生にとっては、皇太子殿下と公爵令嬢の恋は周知の事実だったが、1年生にとっては、皇子様とお近づきになるチャンスで、あわよくば皇子様と恋に落ちるかも知れないと言う妄想が炸裂しているのだった。
「 きゃあぁぁ」
甲高い叫び声と共に、皇子様にぶつかって行った女生徒が倒れていた。
突き飛ばさない限りは、ちょっとぶつかった位で倒れる筈なんか無いのだが………女生徒は倒れていた。
「 失礼、大丈夫だった? 」
皇子様が皇子様スマイルで、女生徒に手を貸し立たせた。
「 有り難うございます。今度、お礼にお茶をご馳走させて下さい 」
頬を赤く染め、上目遣いで手を胸の前で組み、皇子様を見つめる女………
はあぁ?? お礼?
お前が皇子様にぶつかっといて、何でお礼なんだ?
学食にいる皆が、そう突っ込んだ。
「 私は、1年C組のナナ・ラ・アーレンですわ、皇子様に学園を案内して頂けると嬉しく存じます 」
はあぁぁ??
皇子様に案内だと??
こいつは馬鹿か?礼儀を知らんのか?
学食にいる皆が、そう突っ込んだ。
「 学園の案内は、オリエンテーリングである筈だよ、では、失礼する、次は前を見て歩こうね 」
皇子様が皇子様スマイルで言った。
女生徒は、皇子様の優しい言葉に、皇子様も自分に恋をしたと思い込んだ。
「 はい、皇子様、次は………… 」
まだ、この令嬢がウザイ事を言って来そうなので
流石に、エドガーがシッシッと手を振り、間に入った。
ラウル達も、足早に立ち去ろうとしていた。
はっ!!………
リティエラ様は?
学食にいる皆がレティを見た。
レティは………
デザートをがっついていた。
今日の放課後は騎士クラブの訓練だったので、昼食でお腹をパンパンにしておかないと腹がもたないのだった。
モグモグしていると、皆の視線に気付き、周りを見渡して、キョトンとしているリティエラ公爵令嬢。
ああ………
この高貴な美しい令嬢はなんてお可愛らしいの………
………と、皆がほんわかしていると………
「 レティ、お腹がいっぱいになったら生徒会室においで 」
……と、皇子様がクックッと笑いながら、レティの膨らんだホッペを突っつき、ラウル達と学食を後にした。
キャア~~
食堂からピンクの悲鳴が上がる。
「 もう、駄目、キュンキュンしますわ 」
「 ワタクシ………萌え死にしそうですわ 」
この、皇子様と公爵令嬢のイチャイチャを見れたら、ただただ幸せな気分になる生徒達なのであった。
そこへ、あの女生徒がレティの前にやって来た。
「 貴女、一体どう言うおつもりですか? 私と皇子様の邪魔はしないで下さい 」
レティは理由が分からずにモグモグしている。
はあ? 邪魔者はお前だ!
学食にいる皆が突っ込んだ。
女生徒は、何人かの女生徒達に連行されて行った。
「 何をなさるんですか? 」
「 貴女に学園の常識を教育して差し上げます 」
ぎゃあぎゃあ言う声が小さくなって行った。
理由が分からないレティは、まだモグモグしていた。
そして
レティが、慌てて食べ掛けのデザートをハンカチに包んで生徒会室に行くと、生徒会室に女生徒が居た。
「 私にもお手伝いさせて下さい 」
さっきの娘?
いや、似てはいるが、棒タイの色は黄色だからレティと同じ2年生だ。
「 アル様のお手伝いをしたいのです、リティエラ様だけなんてずるいですわ……… 」
アルベルトはこの令嬢に見覚えがあった。
皇后の夕食会で、「 アル様 」と呼び、駆け寄って来た、あの頭コツンのテヘ令嬢だ。
食堂での、ぶつかり令嬢と、この二人は姉妹か………
レティを見ると
レティは自分の机で、持ち込んだデザートをモグモグ食べていた。
まだ、モグモグやってる………
可愛い………
流石に、ラウルが無礼だと追い返した。
「 あら、私、交代してさしあげてもよろしくてよ 」
レティが真面目な顔をして言うと
「 駄目だ! 」
アルベルトとラウルが叫んだ。
「 だから、レティじゃなきゃ駄目なんだよ、うんざりする 」
「 アル目当ての、あんなアホそうな奴等と何が出来るんだよ 」
エドガーとレオナルドが吐き捨てる様に言った。
「 俺達が1年の頃はあんなんばっかりだったよな 」
「 そう言えば、この1年は平和だったかも……」
エドガーとレオナルドがレティを見た。
………こいつか………
皇太子殿下の前でも、平気でデザートをモグモグ食べているレティを見て、納得したエドガーとレオナルドであった。
そう言えば、学食で
「 私と皇子様の邪魔はしないで下さい 」
……と言われたわよ……
レティはアルベルトの方をチラリと見た。
「 俺とレティが彼女等の前で、イチャイチャすれば良いんだよ 」(←ただただ、レティとイチャイチャしたいだけの意見)
アルベルトが尻尾を振りながら、嬉しそうに言った。
「 いや、お前ら何時でも何処でも、そうとうイチャコラしてるぞ 」
レオナルドが呆れた様に言う。
「 だから、誰も寄り付かなくなったんだよ 」
エドガーは、レティは魔除けだと思った。
「 でも、ああいう輩って、言葉が通じないのよね 」
「 お前もそう思うか? 」
ラウルはレティの持ってきたデザートをつまみながら言った。
「 もっと、イチャイチャするんだよ、さあ、レティ、練習してみよう、おいで 」
アルベルトが破顔して両手を広げる。
「 却下 」
他人の前でイチャイチャなんて出来ないわよ!
じゃあ、誰も居ない所ならイチャイチャしてくれるんだ………と、アルベルトがニヤリとする。
レティが真っ赤になって、それは違うでしょ、とプンプン怒っていた。
皇子様に動じない女はレティだけだよな……
アルのあんな顔で口説かれたら、普通の女ならイチコロだよ。
ラウル達は、レティのレティらしさに満足したのだった。
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