第99話 模範試合



「 エドガー来い 」


寒い北風が吹く中

殿下とエドガーの模範試合が始まった。






私達、新人の32名は、まだまだ体力作りに訓練の重きを置くが、他の部員達はたまに部員同士で試合をする。



今日は勝ち抜き戦で、円形になったギャラリーの中で、エドガーに名前が呼ばれた者が次々に試合をしていた。



あっ、初日に私に施設の使い方を案内してくれたエレナさんだ。

結構強い、2人勝ち抜いて負けた。

女子生徒はもう1人いて、彼女は1人勝ち抜いて負けた。

騎士クラブの女子生徒は、私を入れてたったの3人だった。


良いな~私も早く木剣を持って、試合をしてみたい。



最後の一人が勝ち抜き、エドガーとの試合になった。

流石に騎士の一族。

強い強い、

エドガーは、あっと言う間に相手の木剣を叩き落とした。



そして

勝ったエドガーは、殿下と試合をする事になった。



まさか、殿下が試合をするとは…………



私の脳内は久し振りに

皇子様神輿と騎士神輿が担ぎ上げられた。



私の3度目の人生は騎士。

皇太子殿下の試合なんか見たことも無かった。

こんな所で見れるなんて…………


もう、騎士冥利に尽きるとはこの事だ。




「 エドガー来い 」

二人がサークルの真ん中に躍り出てきた。



先ずは肩慣らしの手合わせをする。

カンカンと木剣が合わさる音が鳴る…………


暫くして

二人の間合いが取られる………


辺りはシーンとしているが、私の脳内はワッショイ祭りが太鼓の音で盛り上がっている。

二人共、格好いいよ~




二人が見つめ合う。

緊張感が漂う。



エドガーがアルベルトに打ち込んだ。

アルベルトに軽くかわされ、後ろに下がる。

間髪いれず2度3度打ち込むが、全てアルベルトに弾かれた。


今度はアルベルトが続け様に打ち込んでいく。

早い、エドガーがたまらず後ろに飛んだ。

アルベルトは更に素早く打ち込み、エドガーは防戦一方になった。



そして、最後の一撃………勝負あった。

エドガーはアルベルトに飛ばされ、尻餅を付き、木剣を喉に突き付けられた。



「 参りました 」

アルベルトは手をエドガーに差し出し、起こした。


ワッと歓声と拍手が起こった。



「 また、腕が上がったな 」

「 ああ、心身共に絶好調だ 」

殿下は、私をちらりと見た。

?、?、何?



「 これは恥ずべき事だな、守られるべき者より弱い、守る者だなんて………」

エドガーが肩を落として言った。




「 エドガーは、踏み込みが甘いんだよ 」



低く澄んだ声がした………

声の主は、グレイだった。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る