第94話 閑話─腹が立って仕方ない



レティは腹が立って仕方なかった。



今の自分は15歳なのに、医療行為が出来てしまう事に腹が立った。

禁忌の医療行為をしてしまった自分にも腹が立って仕方なかった。


殿下の権力の行使でお咎めが無かったのにも腹が立った。

そして、それでホッとしてる自分に腹が立った。


天才と言われる事も

皇太子妃の主治医になれと言われた事も

皇太子妃と言う言葉が出てくる度に、殿下がニヤニヤしてるのにも腹が立っていた。


殿下が偉そうに椅子にふんぞり返って座っているのに、白いマフラーを巻いていて、そのマフラーに豚の刺繍があるのにも腹が立っていた。


帰りに、殿下から皇太子専用馬車で送るよと言われた事にも腹が立った。



「 学園長の馬車で帰ります、まだ学園長とお話したい事がありますので 」



「 レティ……… 」

殿下が悲しそうな顔をしたのにも腹が立った。




腹が立ったら何にでも腹が立った。




思い出すと……

薬師のお姉さんや、虎の穴の受付や案内の大人なお姉さん達が、まだ学生の殿下に色目を使うのにも腹が立った。

そう、学園の女学生達の可愛い憧れの目じゃないのだ。


それに、自分が殿下の横にいるのに、ガンガンラブ光線を送ってくるのにも腹が立っていた。


そして、それを知ってるのか知らないのか、普通に受け流している殿下に腹が立っていた。



そう、レティの心は20歳。

同年代の女には手厳しかった。







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