第86話 悲しいカウントダウン
新しい年が明けようとしていた…………
リティエラ・ラ・ウォリウォールは15歳。
彼女は3度もループした人生の中で、己の命のカウントダウンと向き合って生きていた。
もう、死にたくは無い。
ループもしたく無い。
その理由は…………
アルベルト皇太子殿下に愛されてる4度目の……
今の人生を全うしたかったからだ。
未来に………
シルフィード帝国のアルベルト皇太子殿下が、イニエスタ王国のアリアドネ王女と婚約し、結婚したとしてもだ。
殿下との、つかの間の幸せの想い出を抱いて生きて行く。
………生きて行ける。
その為には、何としても生き残らなければならない。
いや、たとえ死んだとしてもループだけはしたくない。
4度目の今の人生以上の人生は、もう無いと思うから………
******
新しい年が明けた。
新年早々、皇宮では新年祝賀行事がある。
皇帝陛下と皇后陛下と皇太子殿下への新年の挨拶を、高位貴族達が次々に行う。
その後に、3人が皇宮バルコニーにお出ましになり、新しい年を迎えた事を国民達と祝うのである。
3人がバルコニーに立つと大歓声が上がる。
自然と笑顔になり、手を振り、国民達を見渡す。
新年を祝う声、シルフィード帝国万歳と叫ぶ声、皇帝陛下万歳、皇后陛下万歳と叫ぶ声………
「皇太子様~」「アルベルト皇子様~」……と、17歳の美丈夫である若き皇太子殿下に向けられる熱い眼差しと、黄色い歓声は特別だった。
皇帝陛下は茶色の髪にブルーの瞳、皇后陛下はハニーブロンドの髪に薄い琥珀色の瞳。
二人の良いところだけを引き継いだのが、アルベルト皇太子殿下である。
皇后陛下似のブロンドの髪は、皇后陛下よりは薄いが輝く様にキラキラしていた。
皇帝陛下似のブルーの瞳は皇帝陛下よりは薄く、綺麗なアイスブルーの瞳だった。
皇帝陛下の背も高かったが
17歳のアルベルトは父よりも高く、実は、身長はまだ伸びているらしい。
正装である白の軍服に赤のサッシュ、真紅のマントを着用したアルベルトは、それはそれは凛々しく尊くもあり、誰もが見惚れる美丈夫だった。
あれ? レティが居ない
バルコニーから民衆に手を振りながら、貴族席を見ると、そこには宰相のルーカスとラウルがいるだけで、レティの姿は無く、母親の姿も無かった。
アルベルトは、新年祝賀会の行事の準備が忙しく、マフラーを貰った時以来、レティの姿は見ていなかった。
建国祭の時は、ハートを贈ったら打ち返されたっけ………
今日はレティと何して遊ぼうかな………とワクワクしていたのだった。
何だか胸騒ぎがした………
式典が終わり、ルーカスに聞くと
レティは昨夜からの高熱で臥せっているとの事だった。
見舞いに行きたいと告げると、まだその高熱が風邪なのか何なのかが判明せず、
「 殿下に移すわけにはいきませんので、まだご遠慮下さい 」と言われた。
ルーカスはこの後、新年宮中晩餐会には出席したが、その後にある舞踏会には欠席をした。
余程の事が無い限り、公務の欠席なんかした事の無い宰相ルーカスが欠席したと言う事は………
それだけレティの体調が悪いのかと不安で眠れない夜を過ごした。
翌日にはレティの症状は風邪や他の流行り病でも無く、疲労の蓄積による体調不良だと診断されたが、未だに熱は高く、意識も混沌としている状態だと告げられた。
アルベルトは、いても立ってもいられず公爵家に駆け付けた。
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