第84話 信じて良いの?



「 僕の気持ち、ちゃんと伝わってる? 」




何だこの質問は???


伝わってないと言ったらどうなる?

気持ちって、何の気持ちって聞いたらどうなる?

伝わってるって言ったらどうなる?


ねえ、どうなるの?

どんな答えを言えば正しいの?

私の頭がパニックになる………






「 僕は君を好きだよ 」

二人の長い沈黙を破り………殿下が言う




「 君は僕の事を好き? 」

ヒイィィィィィィ………






ああ………言っちまったよ………





「 阿呆、 今は私の事を好き好き好き好き言ってるけどな、

あんたは半年後に王女に恋をし、その2年後に婚約をするんだよ! それを知ってる私はどうすりゃ良いのさ、ここで恋人同士になったら、別れの言葉をあんたは言わないとならないんだよ、面倒だろうが!そして別れの言葉を言われる私は可哀想じゃないか 」









ああ、これを言えたらどんなに良いか………








私の長い長い沈黙に耐えかねたのか……

殿下は言う

「 レティ、今、返事は貰えなくても良いよ、だけどあまり長くは待たないよ、僕は今すぐにでもレティとイチャイチャしたいんだからね 」



殿下は尻尾をパタパタと振っている。

私に拒否されると言う選択は無いのね………

流石、皇子様だわ………




殿下が夜会服のジャケットを脱ぎ、私の肩に掛けてくれた。

「 冷えてきたね、戻ろうか 」


殿下の匂いがする………

良い匂い………




殿下と私は手を繋いだまま歩き始める。



私は、殿下をチラリと見上げる。

殿下は私の顔を見ていたのか目が合う。

ん?……と眉を上げ、優しく笑う。

私は目をそらす………




暫く黙って歩いて

また、殿下をチラリと見上げる。

殿下はやはり私の顔をみていて………目が合う。

なあに?とばかりに私の顔を覗き込む………



この人はどんだけ私の事を好きなんだろう。

こんなに私を好きなのに

こんなに私を好きなのに………


貴方は王女を好きになるのか…………




それとも………

何かが変わってる?




一度めの人生は、殿下に選んで欲しくて、お洒落を頑張った。

二度めの人生は、殿下の頭脳に並びたくて勉強を頑張った。

三度めの人生は、次は体育会系で行こうと騎士になった。

騎士になったら殿下をお守りする事に命を掛けた。


だけどどの人生も、殿下とはお近付きにもならなかった。



4度めの今は、お近付きどころか………好きになって貰えてる………



殿下を信じても良いの?



だけど………

殿下と王女の婚約が発表された時の、悲しい気持ちが今も私の心を傷付けている。





講堂に戻っても

殿下が私の手を離すことは無かった。





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