第73話 白の魔女と青の錬金術師
赤の10人の爺さんナイト達は、殿下と私の昼食にも同席した。
2人前の料理をばくばく食べていく殿下に目を細めながら
「霊長類のオスと言うものは………」
「人間は何時でも何処でも発情し………」
「食欲と性欲は…………」
赤の10人の爺さんナイト達が口々に論ずる。
「 止めなさい 」
殿下が少し蒸せながら呆れた様に制する。
今度は私の身体をじろじろみながら
「 妃様、いかん、いかん、その細腰では……… 」
「 子孫繁栄の為には妃様が……… 」
「 妃様は5人位は産んで頂かないと………… 」
赤の10人の爺さんナイト達は、私を皇太子妃だと思い込んでいて、私を『 妃様 』と呼んだ。
殿下は否定せず、ニコニコして機嫌良くしていた。
「 私、皇太子妃じゃありません、ただのリティエラですわ 」
赤の10人の爺さんナイト達は耳が聞こえないのか、私を無視して妃呼びを止めない。
「 この、もうろくジジイ 」…と小さな小さな声で呟くと
「 妃様、お口が悪うございますぞ 」
直ぐ様窘められた。
「 聞こえてるんじゃないの! 殿下、何とか言って下さい 」
殿下はクックッと笑いながら
「 じゃあ、午後からは執務に戻るよ 」
………と、上機嫌で帰って行った。
「 じゃあ、私も行きます、………何度も言いますが、私は皇太子妃ではありませんし、皇太子妃にはなりませんからね 」
「 なんと、殿下はまだお手をつけておられぬのか? 」
「 殿下は晩生でいらっしゃるのか? 」
「 是非ともワシの手管を殿下に……… 」
ジジイ達は論ずるのを止めない。
疲れる………
でも、殿下が居なくなって丁度良かったわ…………
私は弓矢の強度について、錬金術師と話したかったのだ。
殿下がいては秘密の話が出来ない。
今度は、青のローブ達のいる錬金術の部屋に入る。
大きなテーブルと椅子とソファしかない物理学の部屋とは違って………
そう言えば奥にはベッドが10台位あった。
あの爺さん達はあそこで何をしてるんだか………
錬金術の部屋は魔道具の道具が至る所にあり、実験中なのか燻る匂いがしたりして、ワクワクする。
錬金術師達は青のローブを着ている。
暫く見学していると
「 お待ちしておりました、ウォリウォール嬢 」
「ご機嫌よう、あっ、リティエラと呼んでください 」
「では、リティエラ嬢、弓矢の件ですが………」
彼の名はシエル、前に相談を持ち掛けていた人だ。
「 調べました所、遠くに飛ばすには……… 」
仕事の早い人は好きだ。
私は尻尾をパタパタと振る。
シエルは笑いながら
「 風の魔力を融合させれば、飛距離を伸ばせるかも知れません 」 と言う。
「 風の魔力………では、殺傷能力はどうなります? 」
「 やはり、魔力の中で一番の攻撃力のある雷を融合させれば……… 」
雷は殿下の魔力よね…………
「ただ、2つの魔力の融合はまだ、未知なるものでして……更なる研究が必要になります 」
……とシエルが言う。
「 有り難うございます、ちょっと希望が出てきました、私も色々と調べてみます 」
「 少しお聞きして宜しいでしょうか? 」
「 はい、何なりと……」
「 リティエラ嬢が、弓矢の強度を高める依頼をするのは何の為ですか? 」
やっぱり、気になりますよね。
「 詳しくは言えませんが………私が生き残る為ですわ 」
そう、全ては私が生き残る為に…………
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