第52話 君は僕のお嫁さん




レティは明らかにおかしかった。


何故俺に、あの場所で騎士の最敬礼をする?

全く意味が分からない。


いやいや、彼女は何時も斜め上を行く女性で

釣り師になっていたり、悪役令嬢にもなっていたし、今日はたまたま騎士だったと言う事だ………




そんな想像も出来ない事をやってのける規格外の彼女が、たまらなく好きなのだ……………




いやいや、問題はそこではない



グレイだ、

グレイの名を出したとたんに彼女は動揺し、あからさまにおかしくなったではないか…………



グレイはエドの従兄弟なんだから接点があってもおかしくない。



アルベルトは毎朝、皇宮騎士団の早朝練習に参加していた。

グレイは皇宮騎士団1の剣士だったので、よく手合わせをしていたのである。



これは………

ちょっと調べてみる必要がある。





アルベルトは、魔力に差ほど興味も無く

ルーピンに雷を落としまくってスッキリした事もあり

午後からは執務室に戻り、公務をする事にした。




公務が終わり

皇立図書館を覗いたら、レティは居なかった。

何処に行ったのかと探したら、彼女は錬金術研究室にいた。




この国の錬金術とは

魔力と融合した物を作る、即ち魔道具を作る研究をする事である。

決して等価交換などでは無い。


因みに

物理学研究所とは自然科学や地質学、生物学を淘汰した事で

天体や気象、自然災害などの研究をする所である。





錬金術研究室にいたレティは、錬金術師達と熱心に話をしていた。

彼女の物怖じをしない、好奇心旺盛の行動には感心する。

高位貴族の令嬢なのにである。


まるで、何かに追われている様な気さえしてくる。



よって、彼女は無防備である。

自分の美しさをあまり自覚していないのが厄介である。

ほら、言わんこっちゃない、不埒なオス共が鼻の下を伸ばしている。




アルベルトがノックして部屋に入る。

皆が挨拶をしようとするのを手を上げて制する。

「そのまま話を続けて」



「だからね、弓矢をもっと改良出来ないものかしら?」


「軽くて、より遠くまで飛ばし、一撃で仕留める様な殺傷力が欲しいのよ」



ギョッとした。

こんな可愛い口から出る言葉ではない。

彼女は一体何をしたいのか?



「レティ、軍事に関わる事は国防相の許可がいるよ」

「そうなのね………」




********




─そんなもんあんたが何とかできるでしょ?王子様なんだから─

レティはアルベルトをチラリと見た………


「 レティ、僕でも無理だよ 」


─えっ?! こいつやっぱり心が読めるのか?─




「 それより、理由を聞こうか? この話は一旦無かった事にする、さあ、レティ、おいで 」

殿下はドアを開け、早く来いと私を促す。



私は、全然無かった事にするつもりは無かったので、錬金術師達に手で口を隠すようにして………

後でね………と、口パクで言ってニコっと笑ったら、錬金術師達が固まっていた。



「 レティ! 」

「………はい………」



応接室に通された、アルベルトは部屋に入る前にスタッフに何かを指示していた。


部屋に入り、ソファーに座る様に促され、暫くして、お茶とお菓子が運ばれて来た。



「…………で?」


アルベルトが長い足を組み、紅茶カップを持ちながらレティを見ている。



「私………騎士になりたいんです」




「?!」

あまりにも突拍子も無い言葉に、アルベルトはゴホゴホと噎せた。



この娘は一体何を言いだすんだ?



……………君は僕のお嫁さんになるんだよ?




アルベルトは

彼女を見つめ

思わず声に出して言いそうになった………















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