ハレマ・ハレオは、ハーレまない!~億り人になった俺に美少女達が寄ってくる?だが俺は絶対にハーレムなんて作らない~

長月 鳥

第1話 幼馴染は気が付かない

 晴間晴雄(ハレマ・ハレオ) 15歳 身長169㎝ 体重60㎏。


 容姿、成績、交友関係、全てにおいてド平均の、どこにでもいる高校1年生。


 ただ1つ変わったことがあったならば、父親が日本有数の大富豪だったということ。

 そう、大富豪“だった”。


 父親である晴間舘雄(ハレマ・ダテオ)は、ハレオが小学校に入るまでは、ごくごく普通のサラリーマンだったが、たまたま運用していた株が爆上がりして、一気に億り人と成った。

 

 大金を得た父親の煩悩は爆発し、それまで眠っていた女癖の悪さが覚醒。有り余る財力を駆使し、至る地域、至る場所に愛人を持ち、僅か1年でハーレム状態を作り上げる。

 

 口癖は「日本にも一夫多妻制度があればいいのになぁ」だ。


 そんな親父に、母親は愛想を尽かして出て行った。

 財力のある親父に引き取られたハレオは、恨み憎み涙を飲んだ。

 家の中では、毎日見知らぬ美女が我が物顔で闊歩し、酒池肉林の夜が繰り返される。

 何度も家出を試みたが所詮は小学生、自分の力だけでは何も出来ない事を理解し、必至に耐えた。

 そんなハレオを哀れに思ったのか、それとも邪魔になったのか、父親は中学入学と同時に適当なアパートを宛がい「自由に生きろ」と半ば一人暮らしを強要する。


 地獄からの解放だった。


 今まで、父親の愛人達が、家事全般を受け持ち、一人息子のハレオに気に入られようと全力でお世話をしてくれていた、それはもう手取り足取りに、だが、ハレオには苦痛でしかなかった。母親の場所を奪い、父親の愛情を奪った愛人達からの奉仕など苦痛以外の何物でもなかった。


 だから、ハレオは、水を得た魚の様に、一人暮らしを満喫した。掃除、洗濯、買い物、料理、全てが楽しかった。楽しい事は身になるのも早く、中学を出る頃には、家事代行業者も真っ青の腕前となっていた。

 父親の仕送りに頼るしかなかった生活費だけが心残りだったが、甘んじて受けた。まずは勉学に集中し、しっかりと学び、ちゃんとした職に就く事、それは母親からの最後の言葉でもあった。

 だから、独りで生活する以外、何不自由なく暮らして行けた。

 その日が来るまでは……。

 

 その日、高校入学と同時に、親父の急逝の知らせが届く。


 死因は【腹上死】だった。

 むろん腹上死なんて恥は公にはされていないが、愛人達の口から直ぐに広まった。

 ハレオは、最後まで恥を晒しやがってと恨んだ。しかし、残してくれているであろう財産を考えると、感謝の気持ちも少なからず芽生える。これからは母親と幸せに暮らしてけるかも……。


 だが、そんな安易な考えは直ぐに吹き飛ぶこととなる。


 借金こそ無いものの、親父の資産はほぼゼロ。

 囲いに囲った愛人100名以上。その女達(男も居た)に全てを注ぎ込み、果てたのだ。

 令和の伊達男と呼ぶ人も居たらしいが、ハレオにとってはそんな冗談、笑えるはずもなく、絶望の淵に立たされる。


 毎月貰っていた仕送りを使わずに貯金していたけど、雀の涙。

 「働かななければ生きていけない」

 相談できる相手がすぐに見つからなかったハレオは、渋々アルバイトを探しに街に出た。


 そして、ふと立ち止まる宝くじ売り場。


 【歴史的キャリーオーバー中、史上最高額、賞金51億円‼】の文字が目に入る。


 アルバイトを始めたら、勉強する時間も家事をする時間も減るだろう、それだけは避けたい。せめて高校を卒業するまでは……。

 少しでも生活の足しになれば……そんな思いで1口だけ買った宝くじは当たっていた。


 日本円にして51億、途方もない金額だった。


 振り込まれた金に現実味は無かったが、徐々に様々な欲がハレオの全感覚に襲い掛かる。


 だが、ハレオは誓う。

 「俺は、この金を使わない」

 「金は人をダメにする」

 「そして金に群がる女は男をダメにする」

 「親父がそうだった様に……」

 「だから俺は、金の力を信用しない、金を目当てに近付く女、男でも信用しない」

 「ハーレムなんて作らない、俺は絶対ハーレまないっ」

 最後の言葉の意味は分からないが、ハレオは、賞金のことは誰にも話さず、少しづつ切り崩しながら、ひっそりと生きて行くと決めたのだった。

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