其ノ十二 柊真ぁ!

葉月と美沙さんが消えた後、明が俺に駆け寄ってきた。

「柊真!」

「うぅ…。」

切られたところがめっちゃ痛い。意識が飛びそうになる。

「柊真…柊真…。」

明の涙が俺のほおに落ちる。

「柊真…逝かないでよ、柊真ぁ!」

「逝かねぇよ!勝手に殺すな!」

「あ、そうなの。」

怪我人にツッコミさせるな!

「てか、早く止血してくれ。本当に死ぬぞ。」

「マジ⁉︎」

はあ…。ったく、こいつは。

「大丈夫か、柊真君。」

博士が俺の肩に包帯を巻く。

「ありがとうございます。」

「傷は深くなさそうじゃが、しばらく右手は使わないほうがいいじゃろう。」

マジか。右手使わないと、戦えないんだけど。

「てか博士、さっき気絶してましたよね⁉︎起きるの、早くないですか⁉︎」

「あれは気絶したフリじゃ。孫に倒されるほど、わしはやわじゃない。」

すげー。

「それにしても、一体何があったんじゃ?」

俺は、これまでの顛末を説明する。

「そうか…。」

「逃れ者、って…。」

明が聞く。

「わしらは、確かにあの一族で、計画に加担していた…前まではな。」

前までは…。

「美沙が小学校6年の時、わしらは逃げ出した。タイムマシンを作るためにいろいろな文献を読んでいて気づいたんじゃよ…過去は、変えてはいけない。それに…。」

「それに?」

「美沙が…美沙が、英才教育を受けているのが、辛かったんじゃ。頭に、電磁波を流すとか。」

俺は息を呑む。

「そんな……」

明は半泣きだ。

「電磁波は冗談じゃ。」

冗談かい。

「でも、毎日の訓練に、美沙が辛そうにしていたのは事実じゃ。」

「だから、逃げ出した…。」

「そうじゃ。」

部屋に沈黙が流れる。

「このタイムマシンは、今回のような…あいつらが計画を始めたときにそれを止められるように、密かに作ったものじゃ。」

葉月が持っていたタイムマシンは2つ。あと2つ、残っている。

「これは、君たちが使うものじゃ。どうか、計画を止めて…美沙を、助けて欲しい。」

「…分かってます。ね、柊真?」

「…ああ。」

「ありがとう。」


俺らは、タイムマシンに乗り込んだ。

「勝つぞ、明。」

「よっしゃ!いっちょやってやりますか!」

博士がボタンを押して、辺りがが眩く光る。

細めた目の隙間から、クスッと笑う博士が見えた。

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