第33話
(出石眞さんのことだ。那内さん達にも伝えてあるはず。すでに出石眞さんが戦闘しているかかもしれない。僕が足手まといになるかもしれないが、能力者同士の戦いなら人数は多い方がきっと有利なはず!)
※
雨狩が到着していた頃には時刻は夜になっていた。
物流センターの奥の倉庫に大きな穴が開いている。
穴の周りには焦げた匂いがする。
出石眞の能力・魔炎スカルフレイムの使用した後だと雨狩は推測する。
人が入れるサイズの穴に入り、出石眞の背中を視界に見つける。
「出石眞さん! 那内さんは?」
「あら? 他にも能力者がいたの? 動くとこのガキを操作して殺すわよ?」
出石眞の奥にいる写真で見たアッシュ系の女性。
山上だった。
犯人の山上華也は、物流センターで井田を首を右手で掴んでそう言う。
「井田君!? 何故?」
「わりい、雨狩、俺だけ喫茶店でトイレの近くで、話聞いててさ。何とかしようかと思ってこのざまだぜ」
「そんな……どうすれば……」
人質を取られているのか、出石眞は能力を使えないで立ち尽くす。
(落ち着こう。人質は一万田君のこともある。ケースが違うが取り返すことは出来る)
「……あなたが山上華也さんですね。梅貫さんを殺した犯人。能力者マリオネット・フォビアを借りた女性ですね」
「ふぅん。そこの女から聞いたんだ。ってことは坊やもこの炎を出す女と同じ能力者ってことね? 戦いの中で人質が見つかって良かったわ。おかげで苦戦していたこちらの立場が逆転できたんだから……フフフッ……」
山上はそう言って人質の声が出ずに震える女子の手に力を入れて、不敵に笑う。
「少しでも動けば、マリオネット・フォビアでこのクソガキを操り盾にするわよ? そうすれば貴方達が能力で操った相手にぶつけて、警察の話で立派な殺人罪になるわねぇ? あっはっはっはっ!」
「……あなただって捕まりますよ? 殺人もしているのだから」
雨狩は一歩も動かずに口だけを動かす。
デスバインドで拘束させる為の隙を探すために時間を稼ぐ。
「ああ、知ってるんだ。 そこの火を使う女から聞いたけど、こっちだって能力の被害者なのよ? 異形ってのに狙われてたし、まあ、あの沢城とか言う警官に助けられて無事に能力借りれたけどね」
「やはり沢城が異形から助けた女性は貴方でしたか」
「あら? あいつ知ってんだ。あんたが生きているってことは死んだのか、あいつ」
「借りられる能力が異形相手に殺せる能力ばかりではないということも分かりましたよ。ありがとうございます」
「ムカつくガキね、まぁ助けられてエクソシストを殺すことには協力したけどね」
「何故ですか?」
「こんな能力を異形から狙われないために承諾するしかない。だったらさぁ……殺されるなら関係ないですって人達を殺した方が割に合わない?」
「歪ですね。今まで殺したことも認めますか……自首してください」
「今までね、想像力が豊かね。その通り。結構エクソシスト殺しててね。どいつもこいつも曲者だから不意打ちでね。そしたらリストに載っているのだもの。これからは殺す数が減るわね」
「許せないわね、自首しなさい」
出石眞が怒る。
「自首しようにも私が今まで殺したという包丁などの指紋もないわよ。このクソガキも火の女の能力で焼き殺されたら能力なんて警察は信じないから私自体は殺してないわね。暴行罪にもなるけど逃げきれば良いだけの事……」
「山上、あなたの目的は何なの? これだけのエクソシストと一般人を殺して何を得るつもり?」
「耳も頭もイカレてるの? 昔、沢城に頼まれたとはいえ、あたしもエクソシストハンターだからさ。沢城に頼まれててね。そっちの方が殺す相手が増えて、趣味の動画もメインの殺しも捗るわぁ!」
「ただの快楽殺人犯か……救うすべはないわね」
「あら、残念。驚くと思ったのに……ま、別の方法で驚かしましょうか? 殺人ショーでねぇ!」
「あ、雨狩。助けてくれ! 死にたくない!」
「もう少しだけ、待ってくれませんか!」
「あら時間稼ぎ? まあ、どのみちそっちが能力を出すのはしない限りは見逃してあげるわ」
「異形から守るのが遅くなったことは申し訳ないけど、だからといってこの行為はどうかしている」
出石眞はその言葉を言って、髑髏の小手を解除し炎を出さなくなる。
「目的? ただの殺人趣味と言う最高の娯楽とお小遣い稼ぎの殺人配信動画作りね。意外と金になるのよね~。おっさんの声でも加工して編集でもすればもっと再生数伸びて稼げたかしら? まぁ、口座にかなりお小遣い入ってたけどね~♪ でもねメインは殺しよ。人を殺す瞬間がたまらないわ!」
「貴方はそんな酷いことの為に人を殺したんですか!? 人の命を奪うどころか商売にして、個人の意志にもないのに自殺を強要させて! 許されることではありません!?」
雨狩が強く声を荒げてそう叫ぶ。
沢城の時と同じ感情が生まれる。
自分と同じ能力者で、これほど能力を悪用されているという事実。
そしてその人間のろくでもなさに、イラついている。
雨狩の目には怒りと悲しみのせいか、強い眼差しを愉快そうに饒舌に話す山上に向ける。
「ああ、ちなみにここの倉庫はね。私のパパが経営している会社の物よ。この時間は従業員は休みなのよ。叫んでも無駄よ。こんな無人の状態の倉庫に人なんて来るはずないじゃない」
「道理で関係者の人がいないはずだわ。ネットカフェにいた所を尾行したらここに追い詰めたわね」
出石眞は雨狩とは対比して冷静に話す。
左手を背中に向けて、骸の小手を具現化していた。
「分かったら、そこを退いてもらえないかしら? 人質のこのガキは離してあげる。さもなければ、マリオネット・フォビアを使ってガキごと殺すわよ?」
「あなたにマリオネット・フォビアは使えません。使っても梅貫さんの自宅かここに戻るだけで動けないでしょう」
雨狩は眼鏡を中指で整えてそう言う。
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