勇者を超える力なんて必要なかったのに、人類最強なんて荷が重い。
地球上にダンジョンが現れてから十年程。冒険者という職業も割と一般的になり、大活躍する者もたくさんいた。
そんな中、俺、豊穣継弥は、バイト感覚で冒険者をやる高校二年生だ。
恵まれた天職を手に入れた者は、冒険者としての道を歩んで大成することもある。だが、俺の天職は剣士という下級職で、冒険者としての大成は望めない。
ただ、剣士であればダンジョンで小銭を稼ぐくらいは十分できる。俺は同じく下級職を持つパーティメンバーと共に、バイト冒険者として過ごしていた。月の稼ぎは一人五万ほど。高校生からすれば十分な稼ぎだ。
そんな凡庸な日々を過ごして満足していた、ある日。
俺は、ダンジョンの浅い層で、そこにいるはずのない強力な何かに出会う。
それは、とびきりの美女の姿をした鬼だった。
威圧感が強く、これは死ぬと思った。しかし、死にたくなかった俺は、とっさにその鬼に懇願した。
配下になってなんでもするから、殺さないでくれ、と。
そして、鬼は俺たち四人を配下にした。
特別な契約を結ぶと、途端に俺たちは下級職ではあり得ない力を得ることとなった。
その鬼の目的は、精霊王なる存在を殺すことだという。そのために、力を貸せと命じてきた。
交流を深めるうち、その鬼は存外恐ろしいだけの存在ではないことがわかったのだけれど、安心してはいられなかった。
また、俺はその四人の中でも少し変わった特殊スキル『小さな英雄』を得たために、特別に目を付けられて鍛えられることに……。
そして、気づけば俺は、人類最強とも呼べる存在になってしまっていた。
この状況は相当に荷が重い。だが、精霊王を倒すまでのこと。俺は、鬼と共に精霊王退治を志す。