その時、と同じ時。星の裏側にて
南
ここゴイアスが建設されたのは1727年のこと。名の由来はこの地に住んでいた先住種族のいち
18世紀前半に金鉱脈が見つかりこの地こそ伝説の
そして突如金の採掘が中断されたことにより街の賑わいは急速に失せ、世界から忘れられてしまう。が、2001年に
なお、登録の理由として以下に挙げる世界遺産登録基準の一部を満たしたからである。
(2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
(6)顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの(他の基準と組み合わせて用いるのが望ましい)
簡潔に言えば当時の街並みが残っていた、ということである。
時が流れ、現在の日付時刻は……2298年 10月31日 AM05:05。
今やこの都市だけでなく南
だが本日は違うようだ。
知的かつ野蛮な、野太い声が響き渡る。
「強き暴力こそ正義なりッ!」
響く名状し難き断末魔!
赤を中心とした
「ぬわっはっはっはっは……弱き暴力こそ悪義なりッ!」
大声で笑う男。上半身は裸、皮膚の色は紫、その体躯は3メートル。左目の上より生える一本の脈打つ角といい、まごうごとなき異形である……と言いたいのだが。彼の粗野な朱き瞳には我々でも理解できる知性の光があった。
「
「全て片付けました、主様」
得物である大鎌を振るい返り血を全て落としながらそう答える
こんな見た目なのでどこに知性の光があるか全くわからないが、その口から出る文字列は確かに我々と同じものだ。
意外ときれい好きなのか、着ている和服についている汚れを
彼ら
「よいことだ。時に
「……主様、こやつは
「やはりかッ!
「
「ほう! やはり
「お褒めの言葉、ありがたき幸せ」
何が気に入ったのか、ガハハと豪快に笑う
と、彼らの元に一匹の雲が舞い降りてくる。その背には沢山の荷物と共に乗客が1人。
「
雲から一枚の布がひらりと舞い、くるると渦巻きながら人型となった。その姿は僅かに覗く紫髪と朱き瞳以外の部位を全て白き布で覆われた、気味悪き異形である。……見た目とは裏腹に、その物腰は存外に穏やかであった。
彼、
要は潜入や探索に向いている、ということ。
もっとも彼の専門は『調教妖鬼』と、この様な任務とは全く違う方向なのだが。
「まずは異形共を引き付けてくださり感謝の意を。おかげで問題なくヴェルメリョ金鉱山最深部の探索を進めることが出来ました」
「うむッ、付き人ということ関係なしに部下のことを守るは
「申し訳ありません」
「む、そうか……探索してみてどう感じたか?」
「2つの可能性が。1つ、元々外れであった。1つ、他勢力に先を越されたか」
うむむ、と野生じみた唸りをあげる
「卑劣な
「主様、彼の組織の名はディアドコイ──」
「ぬう! そうであったわ! 本当に覚えにくい名よなッ」
わりと不条理な理由で荒ぶる
「ふうぅ……やはり短期間とはいえ、この星に降り注いだガンマ線は旨い」
まるで薬物を摂取したかのように恍惚とした状態となった。そんな彼の付き人2人は特に表情を変えない。先の一時の激情も含めもう見慣れたものだからだ。
「それで主様、次はいずこへ行きましょうか」
暫しの間地図と睨めっこした後、顔を上げる
「よしッ、次の目標はコロンビア共和国の首都ボゴタの北東約45キロの地点にあるグアタビタ湖だッ!
「先住民チャブチャ人と彼らに崇められた
「その通りだッ」
「さァそうと決まれば急いで出立の時ッ! この任務を終えれば我らが
彼ら3人は
果たして
その時、と同じ時。星の裏側にて END
~おまけSS~
「時に、
「なんでしょうか、主様」
「どうしてこんな沢山の金を持ち出したのだ?」
「さぁ? 当ててみてください、主様」
「むむむ……わからぬ、わからぬぞッ!」
「では主様の代わりに私めが。電子機器……回路基板の表面処理用ですね?
「流石は
「何かと怯えられてしまう我が種族の評判もよくなるというわけですね?」
「その通り。まさに一石二鳥なのですよ」
「なるほどッ!
「「お褒めの言葉、誠にありがたき幸せ」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます