カウントダウン・スタート

見ているぞ。




 最強の生物が、必勝とは限らない。

 矛盾するようだが、これが成立するのが世の常である。




日本列島 某所より上空3万メートルの地点



「各々の動きを報告せよ」

「はっ。イィスの介入により、ティマドクネスとウヴォ=szhqlaの分断に成功」

「はっ。翠玉国に潜入中の同志より南沙人工岛天空/海军基地への侵入に成功。これよりデータの奪取を開始」

「はっ。ソロモン海に潜伏中の『ハイドラ』乗務員、CaCO3より『マゼンタの鍵』をオーステン山にて発掘」

「はっ。茶臼山上空の『スピリット・オブ・テキサス』より混沌ケイオス混剛骨人キメラボーンNouddxenzsノーデンスが原住国を蹂躙しつつ名古屋から伊吹山に向け進行中」


 機内に座る男は、それらの報告に満足そうに頷く。


「よろしい。これより私が指揮を継承する! ……ハイドラに伝達。CaCO3およびマゼンタの鍵を回収後直ちに伊豆諸島へ進出せよ。スピリット・オブ・テキサスは引き続きNouddxenzsノーデンスの動きを追跡、逐一報告せよ。そして神国に潜伏中の同志辻中佐に連絡。『予定された時刻通りに事をなせ。他に悟られぬようにな』と』


 その指令に「了解」を返事するクルー。彼らは全員三白眼の持ち主であった。


 彼の名は上将じょうしょうである。

 かつて世界の中心中華の人民に愛される英雄は、今や後継者とならんべく己の知性を存分に振るっていた。


 上将じょうしょうは懐よりストップウォッチを取り出し、スイッチを押す。

 表示は、170:00.00となっていた。


 その時まで、あと、170分。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る