第29話 エルフとの遭遇
アイザックの「松茸が食べたい」は嘘ではなかった。
昼食を済ませた後、軽装に着替えた騎士を五人連れて森へと向かう。
どうせ現地に来ているのだ。
自分で取った物を食べたい。
現地の猟師二人の先導で数km離れた山の中へと入る。
(そういえば、前世では子供の頃に家族でタケノコ狩りに行ったっけ。今世では家族でそういうのに出かけたことがないな。狩りは狩りでも、シカ狩りとか動物を狩るようになるのかな?)
勢い込んで来たは良いが、子供の足で森の中を歩くのは辛い。
騎士の一人に背負われながら、アイザックはそんな事を考えていた。
しばらく歩いたところで、猟師が足を止める。
「んー、この辺りにありそうだな。あった、あったぞ。坊主、これが松茸だ」
猟師が木の根元を指差す。
彼の言葉遣いを咎める者はいない。
言葉に侮蔑の色が含まれなければ、平民の言葉遣いなど誰も気にしない。
敬語を使えるのは教育を受けた者か、日常的に目上の者と接する者くらいだからだ。
――猟師相手に教養を求める方がおかしい。
というのが、この世界での一般常識らしかった。
この事はアイザックも知識として知っていたので気にしていない。
「おぉっ、こんなにいっぱい……」
アイザックは騎士に降ろしてもらい、かがみこんで松茸を見下ろす。
5cmから10cm程度の大きさの松茸が10本程度群生している。
「もっと奥に行きゃあ、もっと生えているところがあるぞ。貴族の坊主を連れて深いところには行きたくねぇから、この辺で我慢してくれや」
猟師は話しながら近くの木の根元を見て回る。
しかし、アイザックはこれ以上を望んでいない。
(うぉぉぉ、松茸。しかも
アイザックは松茸を一本抜くと匂いを嗅ぐ。
(うぉぉぉ、インスタントのお吸い物の匂いに似てる! いや、ここはテンション上げるとこじゃないな……)
前世では、インスタントのお吸い物や炊き込みご飯の素でしか嗅いだことのない香り。
匂いを嗅いでテンションが上がるが、すぐに前世では食べた事がないという事に気付かされ、テンションが下がってしまう。
「どうする? 一応、網は持ってきたけど焼いて食うか? 持って帰るか?」
「ここで食べる!」
せっかく新鮮な松茸をゲットしたのだ。
どうせなら、森独特の空気の中で味わってみたい。
昼食を食べた後だが、アイザックはここで食べる事を選んだ。
「じゃあ、俺は土台作るわ」
猟師の一人が木と木の間、少し開けた場所で土を盛り始める。
『C』のような形の土山を作り、その上に網を載せた。
簡易のかまどのようなものなのだろう。
もう一人の猟師が枯れ枝を拾う。
それを見て、騎士二人がアイザックの護衛に残り、他の三人は枝拾いを手伝う。
彼らも野外演習などで薪拾いくらいは経験している。
それに、松茸に興味のない彼らは早く済ませたいと思っていた。
アイザックに松茸を食べさせて、満足してもらいさっさと帰りたかった。
だから、率先して手伝っている。
猟師達の手際は良かった。
ある程度、燃料となる枯れ枝が集まるとかまどに入る大きさに折り、腰に下げた小袋の中からおがくずのような物を取り出した。
着火剤として使うのだろう。
火打ち石でおがくずのような物に火を付けていく姿を見て、アイザックは感心する。
(ライターで火を付けるよりも早いかもしれないな)
前世で友達とキャンプに行った時「炭とライターがあれば大丈夫」という感覚で行って、火を付けるのに苦労した覚えがある。
あの時はキャンプ好きの渡辺がキレながらも、現地で拾った物でなんとかしてくれた。
苦労した分、バーベキューが一際美味しかったような気がする。
(あいつなら、異世界で農民に生まれ変わっても上手く生きていけそうな気がする。やっぱ、一芸って大事だよな)
薄切りにされて焼かれる松茸を見ながら、アイザックはそんな事を考えていた。
だが、その考えはすぐに中断させられる。
焼かれた松茸がその香りを一際強く放ちだしたからだ。
「松茸の香り……。うん、美味しそうな匂いだ」
「えっ」
「えっ?」
アイザックのセリフに驚いた騎士。
驚かれた事に驚いたアイザック。
二人の視線が交錯する。
「この匂い苦手なの?」
「あー、それはですね。……普段嗅いでいるので」
騎士は言い辛そうだ。
「どこで嗅いでいるの?」
騎士は他の騎士と視線を交わす。
だが、最初に驚いた騎士に“お前が言え”というような視線が集まっている。
「蒸れた下着の匂いです……」
これからアイザックが食べるので、かなり言い辛そうだった。
しかし、答えを求められては答えるしかない。
猟師が騎士の答えを聞いて、追撃を行なう。
「臭いは強いし、味もイマイチ。酒のつまみで癖のある物を食いたいって奴しか食わねぇよ。あとは森の中で小腹が空いて、何も食い物がない時に食うくらいだな」
「そうなんだ……」
アイザックは改めてカルチャーショックを受ける。
周囲にこう言われては、あれだけウキウキで楽しみにしていた松茸も、どこか価値が無い物に思えてくる。
「ま、まぁ食べてみないとわからないし」
「そりゃそうだ。そろそろいけると思うぞ」
猟師は焼けたと思われる松茸を串に刺してアイザックに差し出す。
アイザックが受け取ろうとすると、横から騎士の一人が先に受け取った。
「キノコ関係は毒だと危ないので、先に毒見致します」
「えっ、あぁ。そうか。ならお願い」
自分でも忘れてしまっていたが、アイザックは侯爵家の後継者。
毒見もせずに、森に生えていたキノコを食べるわけにはいかない。
お預けを食らってしまったが、ここは我慢だ。
騎士が少し躊躇していたが、思い切って松茸を一齧りする。
「グホッ」
「おい、大丈夫か?」
何度か咀嚼したところで、松茸を吐き出した。
その姿を見て、他の騎士が水筒を差し出す。
水で何度か口をゆすいだ騎士が苦しそうな顔でアイザックに報告する。
「アイザック様。多分毒ではありませんが、これはやめた方がいいかと……」
「そんなに美味しくなかった?」
「はい。噛む度に臭いが強くなり、鼻を突き抜ける香りがなんとも不快で……。真夏の行軍演習後の靴下を口に含んでいるようでした」
「…………」
ここまで言われては、アイザックも不安になる。
今も焼かれている松茸からは良い香りがする。
だが、この国の人間にはたまらなく臭いらしい。
今の身体はこの国の人間の物だ。
食べたらガッカリするかもしれない。
「いや、ここまで来たんだ。食べてみる」
アイザックは騎士が手に持っている松茸に手を伸ばす。
本人が食べると言っているのだ。
毒が無い以上、騎士も止める手立てはない。
アイザックに串を手渡す。
(匂いは良いのになぁ)
顔に松茸を近づけて、何度か匂いを嗅ぐ。
こちらの世界の味付けに慣れてしまっているので、口に入れてしまえばどう感じるのか不安だ。
いっそ、このまま松茸に良いイメージを持ったまま食べない方が良いのではないかと思ってしまう。
「あら、良い匂い。私もご一緒してもいいかしら?」
意外と近くから女の声がする。
アイザックが松茸と睨み合い、その様子を見守っていた騎士達は反応が遅れた。
声が聞こえた方を見ると、縄文人のような麻の服を着た少女がいた。
金髪の髪をポニーテールにしており、年は人間の十五歳前後だろうか。
特徴があるとすれば、耳が長いという事だ。
弓を背負い、矢筒を腰に下げている。
「エルフだっ!」
騎士の一人が悲痛な叫び声をあげる。
その声に反応して、皆が剣を抜き、アイザックとエルフの少女との間に立つ。
「えっ、ちょっと」
エルフの少女がうろたえる。
いきなり剣を向けられたのだ。
戸惑うのも仕方がない。
すぐに逃げようとする。
「待って! ストップ! 剣を収めて!」
アイザックが騎士を止める。
命令が出たので襲いかかりはしないが、剣を収める気配がない。
「エルフは危険です! 先に逃げてください」
「みんながやってる事の方が危険だよ。戦争を引き起こすきっかけになってもいいの! 剣を収めろ!」
今度は強い口調で命令する。
――戦争を引き起こすきっかけになる。
その一言で渋々剣を収める。
だが、納得はしていない。
「エルフとは二百年もの間交流がありません。殺し、殺される間柄ですよ。危険ですのでお下がりください」
騎士はアイザックに逃げる事を進言する。
これは彼としては当然の進言である。
しかし、アイザックは受け入れなかった。
「大丈夫だよ。それにはちゃんと理由がある」
アイザックはエルフの少女を指差す。
「彼女は弓矢を持っていますし、エルフは強力な魔法を使えると聞いています。襲うつもりなら、遠くから射かけているでしょう」
次に松茸を指差す。
「ご一緒してもいいかな、と声をかけてきました。松茸を一緒に食べるつもりだったのでしょう。彼女に敵意はありません」
そして、最後に猟師を指差す。
「何よりも、彼らは彼女を警戒する素振りを見せませんでした。つまり、地元の人間。少なくとも猟師にとってはエルフとの接触は珍しいものではないという事。それは“出会ったからといって、殺し合う間柄ではない”という事を証明しています」
騎士達はアイザックの説明に息を呑む。
自分達が恐れ、戦おうとしかしなかったのに対し、アイザックは冷静に状況を判断していたからだ。
ある意味、その知謀と胆力を持つアイザックの方が恐ろしい存在なのかもしれないとすら考えていた。
だが、アイザックにとってエルフとの接触は驚くようなものではない。
ゲームや漫画、アニメといったものでは大体人間の味方になってくれる。
恐ろしい存在というよりも「おっ、珍しいのに会えた。ラッキー」程度にしか思っていない。
だから冷静でいられたのだ。
「その坊主の言う通りだ。俺達はたまにエルフと森で会ってる」
「塩と獲物を交換したりもしている」
アイザックの言葉を、猟師達が正しいと保証した。
少しだけ騎士達の警戒が緩む。
その様子を見て、アイザックはホッと胸を撫で下ろす。
「いいですか。ここで彼女に危害を加えれば、エルフの報復を招く事になります。そうなれば、一番被害を受けるのは領民です。落ち着いてください」
「この状況で落ち着いていられる方が不思議なくらいですが……」
騎士の一人がアイザックに言った。
子供で世間を知らないとはいえ、アイザックの落ち着きは異常にしか思えなかった。
「相手の事を知らないから恐れるんですよ。少なくとも、友好的に声をかけてきてくれているんです。まずは対話から始めましょう。お姉さん、驚かせてしまって申し訳ございませんでした。こちらで一緒に松茸を食べながら、少しお話をしませんか?」
アイザックは少し離れた木の陰に隠れながら、弓をこちらに向けている少女に声をかける。
「何なのよ、あなた達は」
弓矢を手に持ったまま、ゆっくりと木の陰から少女が出てきた。
いきなり剣を向けられたのだ。
警戒するのも仕方が無い。
「僕はウェルロッド侯爵家、ランドルフの息子アイザックです。大雑把に言えば、この付近を治める人間のボスの孫です。だから、彼らも初めて会う存在に驚いてしまい、僕を守ろうと剣を向けてしまいました。代表して謝ります。本当に申し訳ありませんでした」
アイザックが深々と頭を下げる。
角度は九十度。
悲しい事に、前世でお客様に下げ慣れた角度である。
アイザックにだけ謝らせるわけにはいかない。
騎士達も口々に謝罪し、頭を下げた。
その姿を見て、警戒が薄れたようだ。
「私も知らない人達が居たのに、いきなり声をかけたのが悪かったわ。ごめんなさい。私はブリジットよ」
ブリジットも矢を弓から離した。
「普段から人間と接触したりしているんですか?」
アイザックはブリジットに質問する。
そうでもなければ、いきなり気楽に声をかけたりはしないはずだ。
「たまにね。自分で火を起こすのが面倒な時は、火を借りたりするのよ」
(ズボラな奴だな……)
ブリジットの返答を、そのように感じてしまった。
二百年前に人間はエルフやドワーフを相手取って戦争をしていた。
戦争が終わり、休戦協定を結んで以来、疎遠になっているはずである。
他のエルフも人間と接触しているのかもしれない。
だが、火を起こすのが面倒という理由で接触するのはいかがなものかとアイザックは思った。
ひとまず、彼らは焼け焦げてしまった松茸を諦め、新しい松茸を焼きながら話す事にした。
「エルフだったら魔法で焼けばいいんじゃないですか?」
人間の魔法使いは、教会で治療活動を行なう者がメイン。
健康体のアイザックは見る機会が無かった。
アイザックはせっかくの機会なので、魔法を見せてもらおうとした。
そのきっかけとして、この話題を振ったのだ。
「焼け焦げた炭にするのは簡単だけど、弱火でじっくりっていうのは難しいのよ」
「エルフでも魔法は難しいんだね」
アイザックの言葉に、プライドを刺激されたのだろうか。
ブリジットは少し言い訳染みた事を言いだした。
「人によって得意分野が違うだけ。私は水と土が得意だけど、火が苦手ってだけよ」
「へー。なんでもできるってわけじゃないんだ。魔法が使えるっていうだけでも……」
そこでアイザックは一つ思いついた。
(魔法が使える。普通ではできない事ができるって事だよな)
「どうしたの?」
ブリジットが話している最中に黙ってしまったアイザックを不思議そうに見ている。
「ねぇ、ブリジットさん。土を石に変えたりできる?」
「そりゃできるわよ。家の壁を土で作って、魔法で石に変えるなんて普通にやるもの」
ブリジットの答えはアイザックを震わせる。
恐怖でも、寒さでもない。
歓喜による震えだ。
「そ、それじゃあ、このくらいの石を作ってみせてよ。とりあえず厚さは1cmくらいで、できるだけ平らにして」
アイザックは地面に10cm四方の四角を描いた。
「別にいいけど……」
ブリジットは不思議そうにしながらも、手を重ね合わせる。
「オン・カカカビ・サンマ・エイ・ソワカ」
ブリジットが言葉を発すると、瞬く間に土を押し固めたような四角い板が出来上がった。
アイザックは板を手に持ち、軽く叩いてみる。
土で作られた割には、かなり堅そうだ。
「ブリジットさん。今の魔法って何?」
「今のは大地に働き掛ける呪文よ。どう、それで満足?」
アイザックの驚き具合を見て、ブリジットは控えめな胸を張っている。
だが、アイザックは魔法とその結果に驚いているのではない。
呪文の方に驚いていた。
(あれって神主か坊さんが唱えてたような……。自信ないけど)
なんとなくテレビで聞いたような呪文に、アイザックは驚いていた。
もっと「ファイア」だとか「アースクエイク」のように、横文字の魔法を使うと思っていたからだ。
(ファンタジーのイメージぶち壊しじゃねぇか)
ゲームで設定されていたのか。
それとも設定されていないから、適当な設定でこうなってしまったのかはわからない。
ただ、ほんの少し不満に思ってしまった。
「ねぇ、これ割れるか試してみてくれない?」
気を取り直して、アイザックは騎士の一人に板を手渡す。
「お任せを」
騎士は板を地面に置くと、かかとで思いっきり踏みつけた。
しかし、割れない。
仕方が無いのでナイフで削ってみようとするが、それでようやく少し削れる程度。
簡単に割れそうにはなかった。
「ブリジットさん。深さ1m、幅10m。これくらいの幅と深さで、どの程度の距離まであの板みたいにできますか?」
「うーん、100歩くらいかな」
「ほう、100歩。それは毎日できる範囲ですか?」
「そうだよ」
ブリジットの答えは満足のいくものだった。
(100mとしても、エルフが十人いれば1km。100日で100km。これはデカいんじゃないか)
アイザックは“ブリジットが可愛い”だとか“初めてのエルフとの接触”だという事が頭から飛んでいってしまっている。
今は“NEXCO ウェルロッド”の事で頭が一杯だ。
味方にはなってくれずとも、出稼ぎ労働者として道路整備を行ってもらえば、それが大きな力を呼び込むきっかけになる。
「猟師の方達と塩を交換しているそうですが、エルフの方々は他に何か欲する物はありますか?」
一方的な協力要請など敵意を生むだけだ。
まずは相手の望む物を与える。
そのための情報収集だ。
「鍋とかかなぁ。塩もドワーフと取引してたけど、遠いからって百年くらい前から人間と交換するようになったし。やっぱり近くの人と交換できる方が楽だよねー」
「なるほど、なるほど」
今の情報から多くの事が読み取れる。
その中でも、百年前から現地の人間と物々交換していたというのは大収穫だ。
二百年前の戦争時に生きていた人間とは取引できない。
だが、直接争った人間でなければ、妥協して取引を行なっても良いという意思が見える。
つまり、アイザックにも交渉の余地があるという事だ。
どの程度の報酬が必要かはわからないが、多少の金は持っている。
給料を支払う事は可能だ。
インフラ整備によって貴族を味方に付けるという構想が現実味を帯びる。
(そうなると、来年……。は、ダメだな)
年が明けてから交渉をしようと思ったが、来年には祖父が王都に外務大臣として居座る事になる。
異種族との交易という大事であれば、領主代理の父よりも、正式な領主である祖父に足を運んでもらう必要があるだろう。
(……大丈夫かな?)
アイザックは不安になる。
ティリーヒル行きは許してもらえても、エルフをインフラ整備に雇って、物を売るという事を許してもらえるかどうか。
しかし、アイザックは不安を振り払った。
何事もやってみなければわからない。
それに、進めてみて初めて結果がわかるのだから。
「ブリジットさん。エルフの代表の方に十日から二週間後に、人間との交流の再開を話し合ってもらえるか伝えてもらえませんか?」
「えぇ、良いけど……。なんか怒られそうでやだなぁ……」
こうやって人間と接触するのは暗黙の了解のようなものなのだろうか。
ブリジットは嫌そうな顔をする。
「僕も怒られる事を覚悟しています。ダメだった場合も、中止になったと使者を森まで送ります。お願いします」
本心からアイザックは頼み込む。
エルフの協力があるのと、無いのとでは大違いだ。
自分の人生が掛かっているので必死。
その思いがブリジットにも伝わった。
「わかったわよ。でも、ダメで元々だからね」
「はい、ありがとうございます」
笑顔を浮かべるアイザックに、ブリジットは手を差し伸べる。
アイザックはその手を握り返した。
「違うわよ。松茸に振りかける塩を頂戴ってことよ」
「えぇ、そっち!」
いつの間にか松茸は良い感じに焼けているようだ。
アイザックも松茸の刺さった串を渡されると、そちらに気が行ってしまう。
さっきの串は地面に落としてしまったので、これが松茸の初体験だ。
息を吹きかけ、少し冷ましてかぶりつく。
「なんか、フツー……」
香りの割に、味は普通のキノコだった。
期待が大きかった分、ガッカリする。
「香り松茸、味シメジって言葉があるくらいだしね」
ブリジットは香りを楽しみながら、塩を振りかけて食べている。
アイザックも真似をして塩を振りかけたが、イマイチ感は拭えない。
(誰か、醤油をくれ)
まだインスタントのお吸い物の方が美味く感じる。
松茸はガッカリだった。
その分、せめてエルフとの交流は上手くいってくれと、アイザックは願うしかなかった。
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