目を覚ました後 ②
「ねぇねぇ、博人、そういえばね。博人を傷つけた連中は全部とっちめたからね!」
「……ありがとう」
乃愛に襲われた後、乃愛がそんなことを言い出したのでとりあえずお礼だけ言っておく。
それにしてもどれだけやらかしたのだろうかという不安は少しあるけれど。
ジト目で乃愛を見ると、「やりすぎてはないよ?」と笑われた。
ちなみに僕の部屋でベッドに二人で腰かけて話している。
「あとね、博人。もう異世界とのつながりは切らせるからね? お姉ちゃんにも勇者にも認めさせたから。だから、もう異世界の連中がこちらにくることはないからね。全員、私が突き返したから。勇者だけは終業式までは居たいっていうからいてもらっているけど」
「そうなの?」
「うん。博人がね、また死にかけたら困るもん。勝手に好き勝手やるのはどうでもいいけれど、私の博人を傷つけるのは駄目に決まってるもん。異世界の関連のものがあったら博人は弱いから傷ついたり死んだりしそうで嫌だから」
「そっか。……杉山たちが終業式まで居たいっていってるっていうのは?」
「ふふ、あの勇者たちに日本と異世界どっちを選ぶかって聞いたの。そしたら異世界に行くって。私にすっかり怯えてたよ!」
「ああ、そういうことか。結局あの悪魔っぽい人達何していたの?」
「この世界を支配したかったみたい。まぁ、勇者たちをどういかすれば魔法も使えない人達相手だとすぐに支配出来ちゃうもん。博人の世界を自由にされたら困るし。博人は異世界に染まるのやでしょ?」
「うん」
乃愛は嬉しそうににこにこしながら、そんな報告をする。
……本当に乃愛、どれだけ暴れたんだろうか? 悪魔っぽい人達のことも異世界で大人しくするようにどうにかしたらしい。
これ、異世界側からしてみたらどんなふうに乃愛が暴れたの見えているんだろうか?
杉山たちが怯えていたって……それだけのことを起こしたってことなのだろうか。
あとこれだけ笑っているのはさっき僕に襲い掛かったからかもしれない。
杉山たちも終業式の後は異世界に戻って、そのまま向こうで生活をするらしい。
……寧ろ一年しか戻ってこなかったのならば、時間を戻してまでの常識改変って行ったんだろうかって僕は思ってしまう。
「お姉ちゃんがね、勇者たちを異世界に戻すのならばまた一年戻そうかとか言ってた」
「え、やだよ。三回目の二年生とか」
「分かっているよ。博人がそう言うと思ったからお姉ちゃんには一年戻したりしないでって言っておいたよ。私が久しぶりに暴れたからか、お姉ちゃんもびっくりしてた。頷かせたから大丈夫だよ。三年生に上がったら勇者はもういないからね」
……僕的には乃愛って結構僕に会うまでにいつも暴れてたイメージだったけれど、乃愛からしてみれば久しぶりに暴れていたっていう認識らしい。
女神様のことも脅したんだろうか?
「乃愛は?」
「私? 私だけはかえんないよ! 博人の隣にいるもん。博人がねー、人間として死んだら一緒に異世界に帰る予定だから。お姉ちゃんにもちゃんと言ったし大丈夫だよ! でもまぁ、完全に世界同士の繋がりを絶つために、私も異世界にはあんまり帰らないようにするんだー」
「……乃愛は多分繋がり絶ったまま帰れるよね? 凄い嬉しそうに報告しているけれど」
「うん。でも博人の隣に居る方が大事だもん。お姉ちゃんとかがどうにかするっていってたし、私は博人の傍に居たいからいいの! あ、でも博人の身体はちゃーんと向こうでも作っているから。一応分体はいるしね」
「そっか」
「うん! 博人の身体も完璧に仕上げるからね!!」
……それにしても身体ってどうやって作るんだろうか?
僕には想像もつかない。
とりあえず聞いても分からないだろうから、一旦その話は深く聞かないことにする。
「でも一年だけだっていうならそもそもずっと異世界に居ればよかったのに」
「まぁ、そうだね。でも勇者がこっちこなかったら、私、わざわざこっち来なかったと思う。そしたら博人には会えなかったし、それは感謝かなって感じ!」
乃愛の言葉に、確かにその通りだよなと思う。
乃愛が今、此処にいるのは勇者である杉山が日本に帰ってきたから。
退屈していた乃愛は、日本に興味を抱いてこっちにやってきた。
だから、僕は乃愛に出会ったんだよなぁと思う。
「僕もその点は杉山に感謝しないと」
「ふふ、博人、私に出会えて嬉しい?」
「私も嬉しい! これからもずっとそばに居るからね。ちゃんと博人が老いるのと一緒に老いるように見た目もいじるからねー。大学卒業したら結婚ね!!」
乃愛はそれが当たり前だとでもいうようにそう言って笑っていた。
……母さんたちに乃愛と恋人になったことを報告したら、「あら、やっと?」とか言われた。
ちなみにホワイトデーのお返しはつぶれてしまったので、買いなおして乃愛に渡すことになった。
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